紫の花(2021.10月+α)

文字数 318文字

秋雨に
紫の花が
濡れている

庭の草花は
妻が植えるので
聞けば
直ぐに
アメジストセージと
教えてくれた

私は雑草取り
専任なので
草花には疎い

雨に濡れる
紫の花
と言えば
季節は違うが
京都御所東
紫式部邸宅跡に建つ
蘆山寺源氏庭の
桔梗を思い出す

激しい雨に
散策人も少なく
私と
もう一組だけで
雨に濡れる
枯山水庭園を眺めた

雨宿りのつもりが
桔梗の可憐さに
見惚れて
座敷を移動しながら
あらゆる角度から
拝観時間が終わるまで
最後は一人
静かに対峙し続けた

名残惜しく
また来ます
と辞した時は
再訪が難しい世になるとは
思いもしなかった

桔梗は
私が知る
数少ない花だ

再訪への願掛けで
何度も
挫折している
紫式部の描いた物語を
読み始めることにする

妻が植えた
アメジストセージを
眺めながら
谷崎源氏の巻二を開く
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み