第26話  魔の連休 異界 樹と由瑞 2

文字数 635文字

「赤津には何も聞いていないの?」
由瑞は言った。
樹は頷いた。
由瑞は池に目をやる。
何をどう伝えていいか分からなかった。

 赤津は言えなかったのだ。俺と同じように。赤津が言わなかった事を俺が言う訳にも行かない。由瑞には融の気持ちが手に取る様に分かった。

「由瑞さん。一体、どういう事なのでしょう?・・・・異界って何ですか?私達、池で溺れてタイムスリップしちゃったって事ですか?」
樹は言った。
「漫画みたいに?」
「いや、俺にも詳しい事は分からない。だから、早く赤津を探して本人によく聞く事だな。俺も史有にちょっと聞いただけだから」
由瑞はそう言うと寺を指し示した。
「あの寺に行ってみよう」
「歩ける?」
由瑞は聞いた。
樹は頷いた。


樹は恐る恐る歩き出す。足首に付いた手が邪魔で困る。足を取られて転ぶ。つい、蟹股になる。その歩き方を見て由瑞は笑いを堪える。
「ちょっと、笑わないでくれる?これでも必死で歩いているのに」
そう言ってまた転んだ。
由瑞は倒れた樹に手を貸す。
「これは背負って歩いた方がいいな」
由瑞がそう言って屈んだ時、樹は唐突に「由瑞さん、あれは何?」と言った。
南側の森を指を指す。
「えっ?」
由瑞は立ち上がって樹の指差す方を見る。

「あれは・・向こうから来る・・もしかしたら熊かしら?」
のそりのそりとやって来る。後ろから、とことこと子熊がやって来る。

「ねえ・・私の目が悪いのかしら。それとも悪い夢を見ているの?」
樹は熊から目を離さない。
「あの熊、目が3つあるよね?」
樹は固まった様に言った。

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