第14話  魔の連休 樹

文字数 692文字

連休初日4月27日(土

最寄りの駅まで行って、そこからタクシーに乗った。
移動時間は7時間近く。
珠衣に着いたのは13時辺り。電車の中ではむしゃむしゃと物を食べ、パワーを付けた。
食欲は無かったが、食べる事で気持ちを切り替える。
ぐずぐずと落ち込むよりも、怒りの方がマシだ。
食べれば眠くなる。一睡もしていなかったから酷く眠い。
樹はぐうぐう眠る。
眠ってパワーを温存する。


神社の前でタクシーを降りる。
鳥居の前に黒いワゴン車が一台停まっていた。
神社の入り口にはチェーンが張られ、『崖崩れのため、立ち入り禁止』とある。
赤津の庭にも数台の車が停まっていた。
樹は門を抜けると「こんにちは」と言ってがらりと玄関の引き戸を引いた。


「はい」と言って史有が出て来た。阿子を抱いている。
樹を見て驚く。
「樹さん。どうしたの」
「史有君。こんにちは。阿子ちゃん。こんにちは」
樹は荷物を玄関先に置くと阿子の頭を撫でた。
阿子はまん丸い目で樹を見詰める。
「史有君。神社、立ち入り禁止になっているのだけれど・・・崖崩れがあったの?」
「いや、そう言う訳ではないけれど・・ちょっと道は通れない事にしてある」
「お客さんは見えたの?女の人だよね。奥の院にいるの?」
樹は家の中を覗く。


史有は樹を見たまま、考えを巡らす。
「樹さん。後一時間もすれば姉さんが来るから、そうしたら、俺、阿子を預けて一緒に行けるから、それまでちょっと待っていてくれる?」
「大丈夫。道は知っている。一人でも行けるから」
樹はそう言うと玄関から飛び出した。
史有は慌てた。
「あっ!ちょっと樹さん。待って!一人じゃ危ない!・・・くそっ!何でこんなにイレギュラーな事ばっかり!」

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