第16話  魔の連休 由瑞

文字数 854文字

その頃、由瑞と里村は神社で東藤家の男達と乱闘の最中だった。

お婆に頼まれて里村と注連縄を張り直していた。
「儂は赤津の家から離れる事は出来んから、あんたらでやってくれ」
お婆はそう言って注連縄を押し付けた。
いい機会だから由瑞達をうんと使ってやろうと思っている。

そこへ男達がやって来たのだ。
「お嬢がそっちへ行ったきり、帰って来ないって、どういう事だ」
男は神橋の向こうに顎をしゃくる。
「だからこの先の奥の院にいる」
由瑞は返す。
「いつ帰って来るんだ?」
「知らない。大体、あんた達がろくでも無い事をするから、こんな事になったんだ」
注連縄を持ったまま由瑞は返す。
茶髪の男が顔を顰める。
「くそっ。こんなに掛かるとは思わなかった。・・・いいか?午前中一杯待った。もう待てない。そこに行かせろ!」
「だから、駄目だと言っている!」
お互いに譲らない。
その内、一人が橋に走り出して、それを追い掛けて捕まえ、乱闘に発展した。
2対4。
東藤家側は武道の師範達である。


史有は石段を駆け上がった。
鳥居を抜けて唖然とした。
4人の男が地面に倒れて呻いていた。
由瑞は口の端を切って、血が流れていた。里村は埃だらけの服を払っていた。二人とも衣服が酷く乱れていた。

史有は男達を避けながら歩いた。
「兄さん。大変だ。兄さん。樹さんが来て。ついさっき。一人で奥の院に。止めたのだけれど」
「えっ?樹さんが?・・・・どうして?」
「融さんを探して。融さん。ちゃんと言っていないから・・・もう!何なの?あの夫婦!めっちゃ迷惑!」
史有は早口で言う。
「ここ、俺がいるから。早く、奥の院へ行って」
「阿子はどうする」
「もうすぐ、すお姉が来る。そうしたら替わってもらう」

由瑞は里村に電話と注連縄を押し付けると走って川を飛び越えた。高さ2m以上もある柵を軽々と乗り越え、鳥居の向こうに姿を消した。
男達はそれを見てあんぐりと口を開けた。
阿子を抱えたまま史有は言った。
「もうすぐ、すげえ女が来るから。あんなもんじゃないぜ。あんたら死にたくなかったら大人しくホテルで待っていた方がいいぞ」

ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み