第6話  融と樹

文字数 394文字

 融は電話を終えて、樹に何と言うか考えた。

 奥の院は常にそこにある。それは小夜子が管理しているが、何か事が起きたら自分も否応なしに関わらなくてはならない。異界は自分を取り囲んで離さない。逃れようが無い。
それは自分の宿命なのだ。
樹をそこに巻き込みたくはない。
相反する事柄をスムーズにやりこなす。
それは中々に難しいミッションだと思った。
でも自分ならそれも可能だ。融には自信があった。

「樹。今週末に珠衣に行くぞ。樹の担当は神社の掃除な」
融は樹に声を掛けた。
「何で?急に?今週は一緒に横浜の中華街に行くって言っていたじゃない」
「客が来るらしい。重要な客らしい。・・・俺と小夜子と史有とお爺は奥の院の点検。樹とお婆は神社の掃除」
「何で私は奥の院へ入れてもらえないの?」
「あの場所は危険だから。樹にはまだ早い。修行をしてからだな」
融は言った。
「何の修行?」
「蛇を素手で触る修行」
融は真顔でそう言った。
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