第20話 魔の連休 融と由瑞
文字数 1,514文字
由瑞は視線を融に向ける。
融も視線を逸らさない。
「ご無沙汰しております。佐伯さん。今回は赤津の家の為にご苦労をお掛けします。申し訳がない」
融はそう言って頭を下げた。
「いや。元々はこちらが切っ掛けなのだから。予想もしなかった事だが・・・。済まなかった」
由瑞も返した。
二人が顔を合わせるのは由瑞のマンションで喧嘩別れをして以来。
由瑞は冷静な表情で尋ねる。
「彼女は何をこそこそとあなたに話していたのですか?」
由瑞は尋ねた。
「午後の3時に水晶玉を返しにここへ来るそうだ。俺に取りに来いと言った。君は連れて来るなともね」
「ふん。どうでもいい。あなたは取りに来る積りですか?罠かも知れない」
「返してくれると言うのだから返して貰おう。高価な物なのだろうから。史有に一緒に来てもらうよ」
融は言った。
「随分、仲良さげに話をしていたが・・・。蘇芳は、あなたの事も探しているみたいだと言っていた。大丈夫なのですか?」
「知っている人にすごく似ていると言っていたよ。それだけだ。それよりもあの女は動物を操る事ができる」
融は言った。
由瑞は驚く。
「何だって?」
「動物を操る」
融は繰り返した。
「さっき俺の前でやって見せた。リスを森から呼び寄せた。寄って来たんだ。それが彼女の体を二周回って森に消えて行った。俺が驚いていると、『自分の中には龍がいるから』と言った。
動物を操る。即ち『動物の主』だから『龍』だとね。東藤家には百年とか何十年単位で動物を操る娘が生まれるらしい」
由瑞は猪がガラス戸に突っ込んだ訳をようやく理解した。
「でも、あの場所には生き物なんかいない。何の役にも立たない能力だ」
融は言った。
「東藤家は奥の院を見てどうしたいのですか?」
由瑞は尋ねた。
融はため息を付いた。
「龍がいる筈だから、それに会いたいそうだ。そしてこの場所を『東藤家の支配下に置きたい』そうだよ。『赤津は東藤家の下でここを管理する』とね。馬鹿な話だ。何を言っているんだか・・・・」
「龍に会えるのですか?」
由瑞は驚いた。
融は由瑞を見る。
「蘇芳さんは凄いな。龍に会うという事は怜に会うという事だ。怜は龍と一緒にいるのだから。怜は小夜子に二度と会えないと言った。でも、蘇芳さんは、怜の居場所は夜刀が知っているかも知れない。と言ったんだ。それで小夜子は夜刀を問い質した。小夜子は『じっくりと問い質した。最後の最後に夜刀は吐いた』と言っていた。夜刀は随分怖い思いをしただろうな」
融は笑った。
「怜に絶対に言うなと釘を刺されていたらしい。勿論それは小夜子の幸せの為だと小夜子も分かっている。だから会えないことはない。まあ命の保証は無いがな。それについては小夜子と東藤家の明日の会合で決まるだろう」
「千年以上も間があった。なのに何で今頃、と思ったが・・・・考えてみればずっと龍は眠っていたのだからな。それを8年前に怜とうちのお袋が叩き起こした。そして龍は小夜子を抱えて大人しくしていたが、小夜子がこちらへ来て、怜が向こうに残った。龍も意識が活性化したのかも知れないな」
「あの家の娘たちは長い間、龍を探していたのだろうよ。・・・生まれては探し、そして死に、また生まれては探し・・・本当に長い間・・・それであの理沙という人が水晶玉を使って探し当てた。ビンゴ!全く凄い。・・・って訳だよ。流石、蘇芳さんの水晶玉だ」
由瑞は黙って融を見ている。
「龍など現実にはいない。現実に存在しないモノをわざわざ異界からこちらに呼び出したくはない。折角大人しく異界にいるのだから。こっちに来たら何が起きるか分からないから。迷惑極まりない。・・・さて、家に行こうか。小夜子に東藤家の話を伝えないと」
融はそう言うと箒を片付けた。
融も視線を逸らさない。
「ご無沙汰しております。佐伯さん。今回は赤津の家の為にご苦労をお掛けします。申し訳がない」
融はそう言って頭を下げた。
「いや。元々はこちらが切っ掛けなのだから。予想もしなかった事だが・・・。済まなかった」
由瑞も返した。
二人が顔を合わせるのは由瑞のマンションで喧嘩別れをして以来。
由瑞は冷静な表情で尋ねる。
「彼女は何をこそこそとあなたに話していたのですか?」
由瑞は尋ねた。
「午後の3時に水晶玉を返しにここへ来るそうだ。俺に取りに来いと言った。君は連れて来るなともね」
「ふん。どうでもいい。あなたは取りに来る積りですか?罠かも知れない」
「返してくれると言うのだから返して貰おう。高価な物なのだろうから。史有に一緒に来てもらうよ」
融は言った。
「随分、仲良さげに話をしていたが・・・。蘇芳は、あなたの事も探しているみたいだと言っていた。大丈夫なのですか?」
「知っている人にすごく似ていると言っていたよ。それだけだ。それよりもあの女は動物を操る事ができる」
融は言った。
由瑞は驚く。
「何だって?」
「動物を操る」
融は繰り返した。
「さっき俺の前でやって見せた。リスを森から呼び寄せた。寄って来たんだ。それが彼女の体を二周回って森に消えて行った。俺が驚いていると、『自分の中には龍がいるから』と言った。
動物を操る。即ち『動物の主』だから『龍』だとね。東藤家には百年とか何十年単位で動物を操る娘が生まれるらしい」
由瑞は猪がガラス戸に突っ込んだ訳をようやく理解した。
「でも、あの場所には生き物なんかいない。何の役にも立たない能力だ」
融は言った。
「東藤家は奥の院を見てどうしたいのですか?」
由瑞は尋ねた。
融はため息を付いた。
「龍がいる筈だから、それに会いたいそうだ。そしてこの場所を『東藤家の支配下に置きたい』そうだよ。『赤津は東藤家の下でここを管理する』とね。馬鹿な話だ。何を言っているんだか・・・・」
「龍に会えるのですか?」
由瑞は驚いた。
融は由瑞を見る。
「蘇芳さんは凄いな。龍に会うという事は怜に会うという事だ。怜は龍と一緒にいるのだから。怜は小夜子に二度と会えないと言った。でも、蘇芳さんは、怜の居場所は夜刀が知っているかも知れない。と言ったんだ。それで小夜子は夜刀を問い質した。小夜子は『じっくりと問い質した。最後の最後に夜刀は吐いた』と言っていた。夜刀は随分怖い思いをしただろうな」
融は笑った。
「怜に絶対に言うなと釘を刺されていたらしい。勿論それは小夜子の幸せの為だと小夜子も分かっている。だから会えないことはない。まあ命の保証は無いがな。それについては小夜子と東藤家の明日の会合で決まるだろう」
「千年以上も間があった。なのに何で今頃、と思ったが・・・・考えてみればずっと龍は眠っていたのだからな。それを8年前に怜とうちのお袋が叩き起こした。そして龍は小夜子を抱えて大人しくしていたが、小夜子がこちらへ来て、怜が向こうに残った。龍も意識が活性化したのかも知れないな」
「あの家の娘たちは長い間、龍を探していたのだろうよ。・・・生まれては探し、そして死に、また生まれては探し・・・本当に長い間・・・それであの理沙という人が水晶玉を使って探し当てた。ビンゴ!全く凄い。・・・って訳だよ。流石、蘇芳さんの水晶玉だ」
由瑞は黙って融を見ている。
「龍など現実にはいない。現実に存在しないモノをわざわざ異界からこちらに呼び出したくはない。折角大人しく異界にいるのだから。こっちに来たら何が起きるか分からないから。迷惑極まりない。・・・さて、家に行こうか。小夜子に東藤家の話を伝えないと」
融はそう言うと箒を片付けた。