第36話  異界 樹と由瑞 7

文字数 328文字

 由瑞は森の中の石段を急いだ。
樹の姿は見当たらなかった。由瑞は焦った。
一旦立ち止まり、辺りを見渡す。
道はこの道だけだったと思う。
いない。どこにもいない。
不安で一杯になる。

「ああ・・。何で俺はあんな事を」
由瑞は深く後悔した。樹とここで離れてしまったら・・・由瑞はぞっとした。
「何ですぐに追わなかったのか」
自分を張り倒したかった。

この道を戻ると、黒い鳥居があって、川があって、赤い神橋があって、そこを渡ると神社に戻れたのだ。
由瑞は滑る石段を駆け降りた。
向こうに黒い鳥居が見えた。
鳥居を抜けて・・・由瑞は茫然と立ち竦んだ。


川はまるで湖の様に広い。
たっぷりとした水が流れていた。
その向こうに浮島の様に神社が見えていた。
赤い神橋が見えた。
神橋は川の途中で切れていた。
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