横話E 脱出

文字数 1,800文字

※この横話Eは「46話」終了時点の状態でのお話です。46話まで読んでいない方は、先にそちらまで本編を読んで頂く事を強くお勧めします。







横話E

脱出







 バダグが死に、あれからアサシンもハンターも断裂状態となっていた。レシアがブルーやバダグを討ってから1年の時間が経った頃の話。


「今日は天気が悪いな……」


 レシアはナーダと共にルーン村へ戻った。最低限必要な場所を確保し、狩りや田等で生活していた。今日は狩りの後に村の近くにある高台に来ていた。ここで海を眺めるのが好きなのだ。


「最近モンスターが増えて来た様な気がする。バダグの影響があるんだろうか?」


 残った意志ある者がこの状況を打破すべく動いていた。しかし、反乱する者やモンスターの所為で成果を上げられずにいた。

 更に、新たな組織も出現した。アサシンやハンターの生き残り、その他の有志で結成された【WWW(トリプルダブル)】という組織だ。ただし、この組織は厄介なものだった。


「……あっ、何者かが村に向かって来ている!? 急いで戻らないと」


 何者かが村へ向かっているのが見えた。レシアは急いで村へ戻り、家へ入る。


「あ、おかえり。獲物取れた?」
「取れたが、それどころでは無いかもしれない。ナーダ、逃げるぞ」
「えっ?」
「何者かの軍団がこっちへ向かって来ている」



 取り敢えず最低限の荷物だけ持って、2人で山の方へ走り出す。緊急避難用の持ち物だが、これがあれば暫くは隠れていられる。


「はあはあ……ここら辺まで来れば大丈夫かな?」
「ううう……久し振りに走ったよ」
「運動不足なんだよ」


 村の方を見ると微かに火の影が見えた。やっとここまで拡大してきたのに……


「くそ、何なんだアイツらは。こんな所にまで攻めて来やがって」
「モンスターも増えてきて、人間で争っている場合じゃないのに……」
「貯め込んでた食料も奪われるだろうな」
「もしかしてアレが噂のWWWなのかな?」

「そうかもしれない……World With Warriors(ワールド・ウィズ・ウォーリアーズ)……略してWWWか。センスの無い名前しやがって」
「World With Warriors……戦士のいる世界? 戦士と共にある世界? どういう意味なの?」
「それは作った奴に聞くんだな。さあ、この先の小さな町へ向かおう」




 山を越えた先に小さな町があった……のだが、辿り着くと町は崩壊していた。


「ひどいな……一体何があったって言うんだ?」
「そんな。この前まで活気のある町だったのに」


 横の方から気配がした。これは!?


「危ない!」
「えっ?」


 何者かの攻撃を受け止める。視線の先には1匹の魔物が居た。

「ほう? あの攻撃をかわすとはやるじゃないか」
「魔物だと? お前が町をこんなんにしたのか?」
「まさか。こんな小さな町を破壊するなんて事をすると思うか?」
「違うのか?」
「やったのは私ではない。部下にやらせたのだ」
「!?」


 魔物が雄叫びを上げると、周りに沢山の魔物が出現した。


「え、転移魔法?」
「く……こう囲まれては」


 ゴーレムが拳を振り下ろしてくる。レシアとナーダは左右に分かれて避けた。その間に違う魔物がレシアを襲う。攻撃をまともに食らってレシアは吹っ飛んだ。離れた所でルーンクラッシュの光が見える。


「数の暴力ってこう言う事だよな」


 目の前に来た魔物を斬り付ける。ダメージはあるが倒せていない。魔物の反撃をかわすが、違う魔物の攻撃を食らってまた吹っ飛ぶ。遠くを見るがナーダの姿はもう見えなかった。


「くそっ、こんなんどうしようも無いじゃないか。生き残れる確率0%だな」
「ティアマット様がこの世界に降臨なされて、半年が経った。これからどんどん人間を滅ぼしてやろう」
「ティアマットだと?」


 久し振りに聞いた名前だ。バダグを利用してこの世界に来ようとしていたのか? バダグを倒しても避けられなかった事なのか? それとも全く別のルートから来ているのだろうか?

 それ以上考える時間は無さそうだった。魔物がレシアを囲む。レシアはもう足が動かないでいた。さっきの攻撃で足が折れてしまったらしい。緊張状態だからか痛みは無いが……痛みはこれから沢山やって来そうだった。






 魔物が襲い掛かると同時に横話の間が閉じて行く。

 時間の路に戻るのが先か、殺されるのが先か……



 取り敢えず、モンスターが増えたのはティアマットの影響か。割とどうしようも無い……よな?





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登場人物紹介

【レッド】

腕利きのアサシン。

とある目的の為にアサシンとなった彼は、その手を血に染めていく。

序盤はダガーを使用し、闇属性の魔法も使用可能。

【ブルー】

レッドの相棒であるアサシン。

金が好きで基本的に冷めた性格である。

どういった経緯でアサシンになったかは不明。

ダガーを使用し、風属性と水属性の魔法も使用可能。

【バダグ】

アサシン本部の部長。

普段はラフな喋り方だが、実力はアサシンでも最強クラス。

セスタスを装着し、格闘術を得意とする。

【ナーダ】

レッドの幼馴染。

とある場所で再会する。

杖を装備しており、光属性と回復の魔法が使用可能。

【シヴァ】

ハンター本部の部長。

エルフであり、魔力が高い。

長剣を使用し、無属性の魔法を使用可能。

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