第42話

文字数 1,896文字

「ふふふ……レッド・アサシン、久し振りだな」
「クラスタ……いや、今日ハンター本部で初めて会ったんだが?」
「気にするな。今から死に逝く者なのだ、そんな事を気にしても仕方が無いだろう」
「ちっ、面倒臭いやつだな」

「一度、本気になったクラスタの力を見てみると良いわ。また生きていたら会いましょう。じゃあね」
「ブルー、お前はダーク・アサシンの事は知っていたのか?」
「偉そうに語れるほどは知らないわ」
「少しは知っているって事なの?」


 ブルーは不敵な笑みを浮かべて階段から去って行った。


「さて、次は本気の俺を見せると言ったな。覚悟して貰おう」
「……お前はダーク・アサシンを知っているか?」
「はん、聞いた事も無いわ」
「そうか。じゃあお前はもう用済みだな。片付けてやろう」



 クラスタは後ろへ飛び退いた。


「何のつもりだ?」
「俺は元々、後ろや死角から襲い掛かるタイプだ。単純な斬り合いではレッド・アサシンには勝てんよ」
「魔法タイプなのか」
「そういう事だ。食らえ、火遁の術!」


 クラスタの手から炎の弾が発射される。思いの外早いスピードだが、剣で切り払う。


「魔法タイプ……ってか忍術タイプ?」
「この時代、魔法も忍術も大して違いはあるまい。水遁の術!」
「な、真逆の属性攻撃が出来るのか」
「これが魔法とは違う点だな」


 水の弾を避けてクラスタへ走り出す。


「甘いな、鎌鼬の術!」
「な、何だ!?」


 地面から小さな竜巻の様な物が出現し、レシアの動きを留める。そっちに気を取られている間に、クラスタの火遁の術がレシアに直撃した。


「うわあっ!」
「レシア、後ろ!」
「えっ?」


 いつの間にかクラスタがレシアの背後を取っていた。刀を突いて来るクラスタにバランスを崩しながら斬り掛かる。クラスタは攻撃を止めて、後ろへ下がった。


「ふむ、上手く後ろを取ったつもりだったが、邪魔者が居るな」
「かと言って、ナーダを狙う隙は与えない」
「それならば忍術でとことん痛めつけるだけよ」


 クラスタは何かを唱え始めた。


「させない、ライト!」


 ライトの魔法が直撃するが、やはり威力が弱い。それでも意識をナーダにもっていく事には成功した。


「小娘、良い気になるな」
「シャドウ!」
「ぬっ!?」


 今度はレシアのシャドウがクラスタに当たる。クラスタはよろけて後ずさりする。


「魔法とは卑怯者め」
「卑怯なのが得意なお前が言うな!」
「ぬかせ、雷遁の術!」


 刀から雷が迸り、レシアに向かって行った。レシアは何とか剣で受け止める。結構な威力に手が痺れる。


「色んな技を使いやがる。流石はクラスタだ。でもバダグとは比べ物にならないぜ」
「ヤツの名前を出すな!」


 怒りに震えるクラスタは刀で斬り掛かってきた。怒りで仕掛けてきた攻撃は力が入り剣速が鈍る。レシアはクラスタの攻撃が入るより前にクラスタを斬り付けた。


「怒りは剣を鈍らせるし、思考も鈍らせる。俺に接近戦を挑んでしまったお前の負けだ!」
「ぐおおっ!」


 刀で攻撃を反らせられたが、レシアの1撃はクラスタに命中。クラスタは屋上の柵まで吹っ飛び、柵に身体を打ち付けた。そのままレシアは気弾を撃ち込む。気弾は直撃し、クラスタは完全に隙を作ってしまった。


「シヴァの仇、取らせて貰おう!」


 レシアはシャドウの魔力を剣に込めてクラスタを斬り裂いた。衝撃で柵が壊れて、クラスタは胸から血を噴き出しながらビルから落ちて行った。




「……ふう、何とか勝ったな」
「レシア、大丈夫?」
「ああ、大したダメージは無い。単純に疲れはしたがな」

「でもどうしよう。ブラックさんには逃げられちゃったし」
「そうだな……手掛かりが無くなってしまった。困ったな」
「取り敢えず帰る?」
「う~ん……いや、1つだけきになる事があるな」

「気になる事?」
「バダグだ。ハンター支部にバダグ達が奇襲を掛けた時の事を覚えているか?」
「え……ごめん、覚えてない」
「まあ良い。あの時にバダグは俺を囲おうとした。その時にシヴァが【騙されるな、コイツは…】って言ったんだ。あれはバダグが村の仇探しを請け負えるって話の時だった」

「つまり……どういう事?」
「可能性に過ぎないが、シヴァはバダグが村の犯人を捜す気が無いと思ったんだと思う。つまり、バダグもダーク・アサシンを庇っているって事だ」
「バダグさんもダーク・アサシンを知っているって事?」
「可能性の話だな。でもバダグはアサシンのトップの人間だ。知っていてもおかしくは無い」


 仮にそうだとするならば、ずっと騙されていたのも同じ。騙されていたも黙られていたも同じ。


「アサシンを辞めたのは正解だったのかもしれないな」
「じゃあ……」
「ああ、アサシン本部に侵入する」





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登場人物紹介

【レッド】

腕利きのアサシン。

とある目的の為にアサシンとなった彼は、その手を血に染めていく。

序盤はダガーを使用し、闇属性の魔法も使用可能。

【ブルー】

レッドの相棒であるアサシン。

金が好きで基本的に冷めた性格である。

どういった経緯でアサシンになったかは不明。

ダガーを使用し、風属性と水属性の魔法も使用可能。

【バダグ】

アサシン本部の部長。

普段はラフな喋り方だが、実力はアサシンでも最強クラス。

セスタスを装着し、格闘術を得意とする。

【ナーダ】

レッドの幼馴染。

とある場所で再会する。

杖を装備しており、光属性と回復の魔法が使用可能。

【シヴァ】

ハンター本部の部長。

エルフであり、魔力が高い。

長剣を使用し、無属性の魔法を使用可能。

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