第13話

文字数 1,898文字

「……なんだこれは?」



 森を抜けた先には洋館が建っていた。綺麗では無いが、そこまで年月も経っていない感じだ。


「いつの間にか村が洋館になってる」
「ここに間違いは無いのね?」
「自分の村の場所を間違えたりするかよ」
「それもそうだ。見た感じそんなに古さも感じない。クラスタが建てたとみて間違い無いだろう」


 入口のドアは鍵が掛かっていたが、チャードは構わずに魔法銃で破壊した。出来れば静かに侵入したかったが、チャードの気持ちも分からなくは無い。



 1つ1つ部屋を開けて回る。時々、侵入者用だろうか?罠があり、天井が降りた来たり針が飛んできたりもした。



「なんて面倒な屋敷なんだ」
「クラスタは何処に居るんだろう?」
「さあ。でもこういう屋敷って奥の方に主人の部屋みたいなのがあるものじゃ無いの?」
「可能性はあるが……」




 奥の部屋に隠してあったボタンを押すと、部屋の真ん中に階段がせり上がって来た。どうしてわざわざ、こんな面倒な仕掛けを行うのだろうか。


「上の部屋に行けそうだな」
「この先にクラスタが居そうね」


 階段の先には、小さな小部屋があった。その部屋のドアを開けると短い廊下。その先には大きなフロアがあった。奥に人の姿が見える。


「あれが……クラスタなのか?」
「恐らくそうね。だって1人しか居ないんだし」
「いよいよ決戦だな」


 3人は奥へ進む。後ろを向いていた人物は、ゆっくりと振り返る。見た事の無い顔ではあったが、とてつもない圧力を感じる。


「来たか。ほう、お前がレッド・アサシンか」
「俺を知っているだと?」
「俺はクラスタ。俺の空けた穴を上手く埋めてくれていたんだろう」
「……もう話は良いでしょう。さっさとロックするわよ」

「くっくっく。1対3とは分が悪い。これではいかなる手練れとて、生き残る事は叶わぬだろうな」
「こいつ、何でこんなに?」


 レッドは剣を構えて1歩前へ出る。続いてチャードとブルーも前へ出る。……出て行く。



「え……出すぎじゃないのか?」


 その呟きを無視するかの様に、2人はどんどん前へ出て行った。そしてクラスタの目の前まで行く。



「終わりだな」
「そういう事だな」
「さあ、覚悟しなさい」


 チャードとブルーがこっちを振り向く。


「……な、何が起こっている? どういう事だ?」



 チャードはニヤニヤしている。ブルーは無表情だ。


「1対3の1、レッドだがな」
「今から裏切り者のロックを開始する」
「くっくっく。どうだね、レッド・アサシン。突然の裏切りに会い、絶望の淵に立たされた気分は?」


 意味が分からなかった。分かるのは、3人がこっちを向いて武器を構えた事。




 チャードが魔法銃を発射する。茫然としていたレッドはそれをまともに食らってしまう。


「うわっ!?」
「まだよ」


 ブルーが斬り掛かってきた。それを剣で受け止めると、後ろへ回り込んできたクラスタがレッドの背中を斬る。


「く……何で?」
「戦いの最中に私語はいかんな」


 3人は一斉に攻撃を仕掛けてきた。





 レッドは全身に傷を負い、血塗れになりながら倒れる。流石に分が悪すぎたのだ。


「終わったな」
「はあはあ……な、何でだ?」
「悪いわね。でもアサシンはこれ以上、アンタを信用する事は出来ないの」
「だから俺達3人は、バダグの依頼によりお前を殺す事になったんだ」

「俺は……ただ、村の……」
「馬鹿ね。その所為でアンタは死ぬ事になったのよ」
「……な……なん……」


 最早、喋る力も残っていない様だった。段々と薄れゆく意識の中、3人の声が聞こえて来る。



「しかし、高純度のルーンがある村か。1度は行ってみたいものだ。」
「私が連れてってあげましょうか? 3年前にも行った村ですし」
「え、何? ルーンの村を襲ったのはお前なの?」
「さあ、どうかしらね」


 クラスタはルーンを襲ってすらいなかったのか……そしてブルー、お前が村の……?



「……」


 まともに前も見えなくなってきているレッドに、怒りの感情がこもる。そうなっても指一本動かせない。


「…………」


 ナーダの死はなんだったんだ……俺は良い様にやられていただけだったんだ……許せない……許したく……ない…………





 その時、不思議な事が起こった。



 レッドの首に下がっていた紅い宝石が眩く光り輝く。フッと身体が楽になり、レッドは訳も分からないまま光に包まれていった。


「眩しい……一体何が起こっているって言うんだ!?」


 身体が急降下する感覚がレッドを襲う。景色の全てが白く染まり、ブルー達の姿も完全に見えなくなった。





 光が収まった後には、見た事の無い場所に倒れていた。傷は見当たらず、痛みも何もない。レッドはゆっくりと起き上がる。


「ここは……ここは何処なんだ?」





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登場人物紹介

【レッド】

腕利きのアサシン。

とある目的の為にアサシンとなった彼は、その手を血に染めていく。

序盤はダガーを使用し、闇属性の魔法も使用可能。

【ブルー】

レッドの相棒であるアサシン。

金が好きで基本的に冷めた性格である。

どういった経緯でアサシンになったかは不明。

ダガーを使用し、風属性と水属性の魔法も使用可能。

【バダグ】

アサシン本部の部長。

普段はラフな喋り方だが、実力はアサシンでも最強クラス。

セスタスを装着し、格闘術を得意とする。

【ナーダ】

レッドの幼馴染。

とある場所で再会する。

杖を装備しており、光属性と回復の魔法が使用可能。

【シヴァ】

ハンター本部の部長。

エルフであり、魔力が高い。

長剣を使用し、無属性の魔法を使用可能。

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