第48話

文字数 2,065文字

 隠し通路を通り抜け、暖炉の奥にあるフロアへ行く。奥に居たバダグとレシアとナーダ、ブルーは対面した。色々と言葉を交わすが、バダグは既に心を決めている様で止まる事は無かった。



「ブルー、まさかお前が裏切るとはな」
「別にアンタを裏切った訳じゃないわ」



「邪竜ティアマットだぞ。邪竜なんだぞ。どう考えても、良い様に使われて最終的に捨てられるだけだぞ」
「ふん、そう簡単にくたばる様な俺じゃ無いさ」
「ったく、世話が焼けるヤツだな。それと、お前は知っているな? ダーク・アサシンの事を」
「ルーン村の仇か……だいぶ調べている様だな」

「調べても殆どの事は分かっていないがな」
「良い機会だ。ダーク・アサシンの正体を教えてやろう」
「ほ、本当か!?」
「今更出し惜しみする事も無いだろう」

「バダグ、アンタ……」
「何も言うな。俺はただレッドと雌雄を決するだけだ」
「良いのかい? 今のアンタでは勝ち目は無いかもしれないわよ?」
「ブルー、最早語る事は何も無いだろう」

「バカ! こんなん続けてたらたとえ私達に勝ったとしても、すぐに死んじゃうよ。もう止めたらどう?」
「心配してくれるのはありがたいが、な」
「ブルーが許したとしても俺は許さない。お前は村の仇なんだ」
「レッド、分かっている」

「だが、もしお前が謝罪しこんなバカげた事を辞めるというのであれば、今ここで命を絶つ事だけは止めておいてやっても良い」
「ふっ、レシアとして生きる様になってから本当に甘い男になったな」
「何だと?」
「言っただろう。もう語る事は無いと。さあ来い」


 バダグはセスタスを装着し構えた。


「そうか……ここまでしてもお前は」


 レシアも剣を構えた。ブルーも同時にダガーを構える。まずはブルーが仕掛ける。


「魔物を召喚している影響でアンタの動きは衰えているわ。今の私にも勝てないんじゃない?」
「甘く見ない事だな」


 ブルーのダガーをセスタスで弾き、バダグはブルーを蹴り飛ばした。その間にレシアが斬り掛かるが、バダグはそれを回避した。


「やる……が、確かに動きが鈍い様だな?」
「お前に心配される日が来るとはな」


 バダグはパンチを繰り出してきたが、レシアはそれをかわしながら、腕のセスタスの無い部分を斬った。


「やっぱりそうだ。お前は凄い勢いで衰えている。いや、衰え続けている」
「……そうかもしれないな」
「1週間くらい前のお前だったら、ここまで俺に隙を見せなかったはずだ」
「バダグ。今からでも遅くないんじゃない?」
「ブルー、言ったはずだ」
「……そう」


 ブルーはウィンドカッターツヴァイを放った。バダグは両腕で2つのウィンドカッターを弾くが、残る1つのウィンドカッターに腹を斬り裂かれる。


「ぐほっ……さ、流石はブルーの風魔法だな」
「こんなのも避けられない位になってるのよ。私が成長したんじゃないわ」
「バダグ、もう終わりだ」
「まさか。ダメージはあるが、致命傷ではない」


 バダグは拳に魔力を込める。


「バダグが魔法……だと?」
「恐らくは無属性の魔法ね。魔法に関してはバダグはそんなに強くは無いわ」
「威力増大位にはなりそうだがな」
「全く、好き放題言ってくれるな。否定はしないが」


 レシアもルーンソードの銃部分に魔力を込めた。


「そう言えば、ガンブレードの銃部分を直したんだな」
「まあな。使用するつもりは無かったが、まあ良いだろう」


 バダグがレシアに近寄って来た。レシアも剣を構え直す。互いの距離が近付き、拳と剣が交差した。




「……」
「……」

「……お前はやっぱり強いな……レッド」
「お前程じゃ無いさ。お前が弱っていなければ……」


 バダグは倒れた。


「これで全て終わった……村の仇も、レッド・アサシンも……」
「ぐ……忠告しておいてやろう。アサシン本部は誰かが俺の代わりに本部長になっていくだろう。ハンターも今は壊滅状態。このままではアサシンとハンターの戦争が起こるだろう」
「アサシンは私が引き継いであげるわ」
「ブルー……そうか」


 バダグは何とか上半身を起こす。


「おい、あまり無理するな。まあどちらにしろもう助からんだろうが」
「やるべき事はやっておかなければな」
「バダグ?」

「レッド、ブルー。アサシン本部長として最後の指示だ」
「俺はもうアサシンでは無いんだが……」
「これで俺達の戦いは終わりだ。レッド・ナーダの殺害依頼は中止。これからはこの世界の為に各々が行動するんだ」
「アンタの言いたい事は分かっているわ。それがアサシンの為にもなるでしょうし」

「? どういう意味だ?」
「アンタは気にしなくても良いわ」
「何だそりゃ……」

「でもハンターはどうなるの?」
「ハンターだって馬鹿じゃ無い。きっと、よりベターな道を選んでいくだろうさ」
「……後は頼んだ」


 バダグはそう言うと再び倒れる。その表情は穏やかで、まるで憑物でも落ちたかの様だった。


(バダグ、アンタとの約束は守って見せる。アンタの死は無駄にはしないわ)


「さて、今から私がアサシン本部長ね」
「お前は俺達が憎くは無いのか?」
「そりゃ、憎い部分はあるわ。でもアンタより大人ってだけよ」
「……そうか」





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登場人物紹介

【レッド】

腕利きのアサシン。

とある目的の為にアサシンとなった彼は、その手を血に染めていく。

序盤はダガーを使用し、闇属性の魔法も使用可能。

【ブルー】

レッドの相棒であるアサシン。

金が好きで基本的に冷めた性格である。

どういった経緯でアサシンになったかは不明。

ダガーを使用し、風属性と水属性の魔法も使用可能。

【バダグ】

アサシン本部の部長。

普段はラフな喋り方だが、実力はアサシンでも最強クラス。

セスタスを装着し、格闘術を得意とする。

【ナーダ】

レッドの幼馴染。

とある場所で再会する。

杖を装備しており、光属性と回復の魔法が使用可能。

【シヴァ】

ハンター本部の部長。

エルフであり、魔力が高い。

長剣を使用し、無属性の魔法を使用可能。

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