第31話
文字数 2,009文字
「確かに俺はお前達の親父を依頼により殺害してしまった。それは取り返しも付かないし、いつか償わなきゃならない俺の罪だ。それでも今、死ぬ訳にはいかないんだ」
「……」
「虫の良い事を言っているのは重々承知している。だが、もう1度だけ言う。俺に協力してバダグを一緒に倒してくれ。バダグを……ナーダの仇を討てれば良い。ナーダの仇を討てるなら、もう村の仇の事は忘れても良い。その後は、俺を捕らえるなり殺すなりお前達の好きにしても良い。俺は抵抗しない」
ゴットルとラベンダーは互いに顔を見合わせる。暫くの沈黙が流れたが、2人は一言も会話する事無くこっちを向いた。
「……俺達はお前を許す事は出来ない。でもそんなのを聞いてしまったら協力しない訳にはいかないな」
「え……じゃあ」
「同じ状況なら父も同じ決断をしたでしょう」
「ただし、事が終わったその後はお前にとって地獄だと思え」
「……有難う」
有難い事に意図せぬ場所で仲間が増えた。後ろへの警戒が無くなった事は大きい。何より、バダグと戦うのに複数名で挑めるのは非常に助かる。
戦いの上で数は強いアドバンテージとなる。それに3人居るという事は、2回は盾を使えるという事だ。いざとなったらこいつ等には俺の盾になって貰う。バダグを……ナーダの仇を討てるのであれば、もうそれ以上は望まない。それ位にバダグは厳しい相手なのだ。
暫く地下迷宮を彷徨った後、やっとの事で出口らしき場所に出た。扉の鍵を破壊し、警戒しながら外に出る。
「ここはアサシン本部長室……バダグの部屋じゃないか。隣の部屋から落ちてグルグル回ったのにここに着くのか。……バダグは居ないか」
よくよく見ると、暖炉にはめてあった安全の為の小さな鉄格子が外れて横に置いてある。屈んで中を窺うと、奥へ続いている。考えてみたら、この暖炉を使用しているのを見た事は無かったな。エアコンもあるんだし、ただのオブジェみたいな物だと思っていたが……秘密の部屋への隠し通路だったのか?
中へ入ってみる。やはり暖炉としては使用していなかったのだろう。煤の様な汚れは全く無く、そもそも煙を逃がす様な煙突に繋がる穴も無かった。
「ってか、煙突自体が無いもんな……アサシン本部て」
20秒ほど進んだ辺りで広めの空間に着いた。扉も無く内装も打ち付けの綺麗でも何でもないコンクリートの壁のみだった。奥にバダグが1人で座って居る。その奥には小さな祭壇があった。
「……ん? レ、レッド!?」
「うわ、見付かった」
「まさか、あの地下迷宮から抜け出す者が居るなんて……流石だな」
バダグが立ちあがると、祭壇に飾ってある大きな鉱石が目に入った。
「……そうか。バダグ、お前も絡んでいたんだな」
あの鉱石はルーン鉱石だ。しかもルーン村の村長の家に飾ってあったルーン鉱石で間違いない。アサシン襲撃の際に消えてしまっていた。大きいが純度は低く、加工しても無駄な位の物でオブジェ以外の使い道が無いレベルの代物だ。
「レッド、どういう事だ?」
「そのルーン鉱石はルーン村にあった物だ。つまりお前はアサシン襲撃に関係している。主犯かどうかは分からないが、少なくともお前はあの事件を知っている」
「これは確かにルーン鉱石だ。しかしこれがお前の村にあった物だとは限らないだろう?」
「見苦しいな。そのルーン鉱石の側面に傷があるだろう? それは俺が幼い頃にイタズラで付けた物だ」
「たまたま似た様な傷が付いただけじゃないのか?」
「よく見てみろ。汚い字だけど、俺の名前が彫ってあるんだよ」
「……そうか。確かにレシアと彫ってあるな。お前の本名を最近まで知らなかったから、すっかりこのルーン鉱石に書いてあったサインを忘れていたよ」
バダグはゆっくりと構える。セスタスを装着していない。俺が戻って来るとは本当に考えていなかった様だ。
「しかしあの地下迷宮を本当に抜けて来るとはな。考えてもみなかったぞ」
「あの程度の迷宮で俺を閉じ込められるとは思わない事だな。これでもレッド・アサシンとしてある程度は名を馳せてたんだぜ?」
「ハンターまで連れてきて……そうまでして俺に勝ちたいのか? プライドも何もあった物じゃないな」
「だまれ」
「覚悟しろ、アサシン本部長バダグ!」
「雑魚が気安く話し掛けるな。お前達を殺して全てを終わらす」
「殺されるのは貴方の方よ。父を直接殺したのはレッド・アサシンだけど、それを指示したのは貴方でしょう。つまり貴方も父の仇よ」
「くどい」
バダグは一気に詰め寄って来た。パンチでラベンダーを吹っ飛ばす。直撃だ。
「ラベンダー! 大丈夫か」
「仲間を心配する暇は無いぞ」
バダグはゴットルに蹴りを放つ。ゴットルはガードするが、勢いで剣が弾き飛ばされてしまう。
「速攻で2人が戦力外になってしまったんだが……」
「正直、このレベルであれば何人居ても変わらんな。問題はレッド、お前だけだ」
「そりゃどうも」
レシアは剣を構えた。
「……」
「虫の良い事を言っているのは重々承知している。だが、もう1度だけ言う。俺に協力してバダグを一緒に倒してくれ。バダグを……ナーダの仇を討てれば良い。ナーダの仇を討てるなら、もう村の仇の事は忘れても良い。その後は、俺を捕らえるなり殺すなりお前達の好きにしても良い。俺は抵抗しない」
ゴットルとラベンダーは互いに顔を見合わせる。暫くの沈黙が流れたが、2人は一言も会話する事無くこっちを向いた。
「……俺達はお前を許す事は出来ない。でもそんなのを聞いてしまったら協力しない訳にはいかないな」
「え……じゃあ」
「同じ状況なら父も同じ決断をしたでしょう」
「ただし、事が終わったその後はお前にとって地獄だと思え」
「……有難う」
有難い事に意図せぬ場所で仲間が増えた。後ろへの警戒が無くなった事は大きい。何より、バダグと戦うのに複数名で挑めるのは非常に助かる。
戦いの上で数は強いアドバンテージとなる。それに3人居るという事は、2回は盾を使えるという事だ。いざとなったらこいつ等には俺の盾になって貰う。バダグを……ナーダの仇を討てるのであれば、もうそれ以上は望まない。それ位にバダグは厳しい相手なのだ。
暫く地下迷宮を彷徨った後、やっとの事で出口らしき場所に出た。扉の鍵を破壊し、警戒しながら外に出る。
「ここはアサシン本部長室……バダグの部屋じゃないか。隣の部屋から落ちてグルグル回ったのにここに着くのか。……バダグは居ないか」
よくよく見ると、暖炉にはめてあった安全の為の小さな鉄格子が外れて横に置いてある。屈んで中を窺うと、奥へ続いている。考えてみたら、この暖炉を使用しているのを見た事は無かったな。エアコンもあるんだし、ただのオブジェみたいな物だと思っていたが……秘密の部屋への隠し通路だったのか?
中へ入ってみる。やはり暖炉としては使用していなかったのだろう。煤の様な汚れは全く無く、そもそも煙を逃がす様な煙突に繋がる穴も無かった。
「ってか、煙突自体が無いもんな……アサシン本部て」
20秒ほど進んだ辺りで広めの空間に着いた。扉も無く内装も打ち付けの綺麗でも何でもないコンクリートの壁のみだった。奥にバダグが1人で座って居る。その奥には小さな祭壇があった。
「……ん? レ、レッド!?」
「うわ、見付かった」
「まさか、あの地下迷宮から抜け出す者が居るなんて……流石だな」
バダグが立ちあがると、祭壇に飾ってある大きな鉱石が目に入った。
「……そうか。バダグ、お前も絡んでいたんだな」
あの鉱石はルーン鉱石だ。しかもルーン村の村長の家に飾ってあったルーン鉱石で間違いない。アサシン襲撃の際に消えてしまっていた。大きいが純度は低く、加工しても無駄な位の物でオブジェ以外の使い道が無いレベルの代物だ。
「レッド、どういう事だ?」
「そのルーン鉱石はルーン村にあった物だ。つまりお前はアサシン襲撃に関係している。主犯かどうかは分からないが、少なくともお前はあの事件を知っている」
「これは確かにルーン鉱石だ。しかしこれがお前の村にあった物だとは限らないだろう?」
「見苦しいな。そのルーン鉱石の側面に傷があるだろう? それは俺が幼い頃にイタズラで付けた物だ」
「たまたま似た様な傷が付いただけじゃないのか?」
「よく見てみろ。汚い字だけど、俺の名前が彫ってあるんだよ」
「……そうか。確かにレシアと彫ってあるな。お前の本名を最近まで知らなかったから、すっかりこのルーン鉱石に書いてあったサインを忘れていたよ」
バダグはゆっくりと構える。セスタスを装着していない。俺が戻って来るとは本当に考えていなかった様だ。
「しかしあの地下迷宮を本当に抜けて来るとはな。考えてもみなかったぞ」
「あの程度の迷宮で俺を閉じ込められるとは思わない事だな。これでもレッド・アサシンとしてある程度は名を馳せてたんだぜ?」
「ハンターまで連れてきて……そうまでして俺に勝ちたいのか? プライドも何もあった物じゃないな」
「だまれ」
「覚悟しろ、アサシン本部長バダグ!」
「雑魚が気安く話し掛けるな。お前達を殺して全てを終わらす」
「殺されるのは貴方の方よ。父を直接殺したのはレッド・アサシンだけど、それを指示したのは貴方でしょう。つまり貴方も父の仇よ」
「くどい」
バダグは一気に詰め寄って来た。パンチでラベンダーを吹っ飛ばす。直撃だ。
「ラベンダー! 大丈夫か」
「仲間を心配する暇は無いぞ」
バダグはゴットルに蹴りを放つ。ゴットルはガードするが、勢いで剣が弾き飛ばされてしまう。
「速攻で2人が戦力外になってしまったんだが……」
「正直、このレベルであれば何人居ても変わらんな。問題はレッド、お前だけだ」
「そりゃどうも」
レシアは剣を構えた。