第27話
文字数 1,989文字
ゴットルは剣を弾き飛ばされて、そのまま勢いで後ろへ倒れ込む。別に斬ってはいない。
「ゴットル!?」
レシアがゴットルにゆっくり近づいて行くのを見て、ラベンダーが慌てて近付いて来る。
「そこで焦ってどうする。せっかくさっきまでクレバーだったのに。」
「黙れ!」
こうなってしまえば、何の問題も無かった。斬る事しか頭になくなってしまったラベンダーに対して、カウンターで剣の平を叩きつけた。ラベンダーはそのまま倒れる。
「ぐっ、ラベンダー。大丈夫か」
「く……何とか」
「どうやら俺の勝ちみたいだな」
「ふざけるな。まだ終わっていない」
「私達は死ぬまで諦めないわ」
「おいおい……無駄に命を粗末にする必要は無いだろ?」
「確かにお前は強かった。俺達の想像以上だ。だからと言って、簡単に諦める訳にもいかない」
「先に進むのなら私達を殺していくのね」
これほどまでに家族の絆は強い物だろうか。もしかしたら傍から見ればレシアも同じ様な物なのかもしれない。ゴットルとラベンダーが仇のレシアに執着する様に、レシアもまた仇のアサシンに執着しているのだ。
「俺は…………」
どうするべきなのか。別にここで意味も無い殺しを行う必要は無い。ただ、今見逃したとしたらどうなる? この地下迷宮を進んでいく途中でまた戦いになるかもしれない。その度に同じことを繰り返すのはリスクも高い。それならばここで決着を着けておいた方が良いのだろうか?
「さあ、続きをやるぞ! レッド・アサシン!」
レシアにもやるべき事はある。今後のリスクを減らす事は無意味では無いのかもしれない。この2人には礎となって貰うべきだろうか。
「…………」
「分かった。俺にもやらなきゃいけない事がある。お前達にはここで死んで貰おう。パワーホールド!」
「やっとその気になったか。俺達は本気のレッド・アサシンを倒す。それが父であるスウァム……」
ゴットルが何かを言い終わる前にレシアがゴットルの命を終わらせた。身体から離れたゴットルの頭が跳ねて転がった。
「ゴットル!?」
「油断し過ぎだな。俺はヒーローじゃないし騎士道精神みたいな物も持ち合わせていない。隙を突くだけだ」
「この……!」
ラベンダーがダガーを構えた。しかしパワーホールドで強化中のレシアの本気の攻撃に耐えられる訳もなく、ダガーごと命を斬り裂かれてしまった。
暫くの静寂の中、レシアはその場に膝を付く。
「…すまない。俺がこいつ等一家を殺してしまったんだな。せめて祈らせてくれ。全てが終わったら俺もそっちへ行く。その時は好きにしてくれて構わない」
一頻り冥福を祈った後、レシアは静かに立ちあがった。
「ああ、そうか……俺が行くのは地獄だよな、きっと」
暫く地下迷宮を彷徨う。あの2人の身体もそろそろ魔物に食い散らかされている頃だろう。地下迷宮は本当に迷路みたいな感じで、もはや狙って戻る事も出来ないレベルだ。
「これ……俺って出口に辿り着けるんだろうか?」
そう考えながらも進んでいると、やがて大きなフロアに出た。奥に急な階段が見える。どうやら出口に辿り着いた様だ。
「はあ……やっとか。いや、出口に辿り着けて良かった」
階段を昇って行くと天井に扉があった。鍵が掛かっていたが、剣で破壊する。そっと開いて覗くと見覚えのある部屋に繋がっていた。
「ここはアサシン本部長室……バダグの部屋じゃないか。隣の部屋から落ちてグルグル回ったのにここに着くのか」
どうやら地下迷宮は回りに回って似た様な位置に戻って来る構造らしい。しかもあんなに最初落ちたのに、階段を多少昇った程度でここに着くなんて……地下迷宮自体が緩やかな上り坂になっていたのだろうか。
「……バダグは居ないな」
部屋に入り込み、隣の部屋に向かう。そこにも誰も居なかったが、どこからか気配を感じる。どこからだ?
よくよく見ると、暖炉にはめてあった安全の為の小さな鉄格子が外れて横に置いてある。屈んで中を窺うと、奥へ続いている。考えてみたら、この暖炉を使用しているのを見た事は無かったな。エアコンもあるんだし、ただのオブジェみたいな物だと思っていたが……秘密の部屋への隠し通路だったのか?
中へ入ってみる。やはり暖炉としては使用していなかったのだろう。煤の様な汚れは全く無く、そもそも煙を逃がす様な煙突に繋がる穴も無かった。
「ってか、煙突自体が無いもんな……アサシン本部って」
20秒ほど進んだ辺りで広めの空間に着いた。扉も無く内装も打ち付けの綺麗でも何でもないコンクリートの壁のみだった。奥にバダグが1人で座って居る。その奥には小さな祭壇があった。
「……ん? レ、レッド!?」
「うわ、見付かった」
「まさか、あの地下迷宮から抜け出す者が居るなんて……流石だな」
バダグが立ちあがると、祭壇に飾ってある大きな鉱石が目に入った。
「……そうか。バダグ、お前も絡んでいたんだな」
「ゴットル!?」
レシアがゴットルにゆっくり近づいて行くのを見て、ラベンダーが慌てて近付いて来る。
「そこで焦ってどうする。せっかくさっきまでクレバーだったのに。」
「黙れ!」
こうなってしまえば、何の問題も無かった。斬る事しか頭になくなってしまったラベンダーに対して、カウンターで剣の平を叩きつけた。ラベンダーはそのまま倒れる。
「ぐっ、ラベンダー。大丈夫か」
「く……何とか」
「どうやら俺の勝ちみたいだな」
「ふざけるな。まだ終わっていない」
「私達は死ぬまで諦めないわ」
「おいおい……無駄に命を粗末にする必要は無いだろ?」
「確かにお前は強かった。俺達の想像以上だ。だからと言って、簡単に諦める訳にもいかない」
「先に進むのなら私達を殺していくのね」
これほどまでに家族の絆は強い物だろうか。もしかしたら傍から見ればレシアも同じ様な物なのかもしれない。ゴットルとラベンダーが仇のレシアに執着する様に、レシアもまた仇のアサシンに執着しているのだ。
「俺は…………」
どうするべきなのか。別にここで意味も無い殺しを行う必要は無い。ただ、今見逃したとしたらどうなる? この地下迷宮を進んでいく途中でまた戦いになるかもしれない。その度に同じことを繰り返すのはリスクも高い。それならばここで決着を着けておいた方が良いのだろうか?
「さあ、続きをやるぞ! レッド・アサシン!」
レシアにもやるべき事はある。今後のリスクを減らす事は無意味では無いのかもしれない。この2人には礎となって貰うべきだろうか。
「…………」
「分かった。俺にもやらなきゃいけない事がある。お前達にはここで死んで貰おう。パワーホールド!」
「やっとその気になったか。俺達は本気のレッド・アサシンを倒す。それが父であるスウァム……」
ゴットルが何かを言い終わる前にレシアがゴットルの命を終わらせた。身体から離れたゴットルの頭が跳ねて転がった。
「ゴットル!?」
「油断し過ぎだな。俺はヒーローじゃないし騎士道精神みたいな物も持ち合わせていない。隙を突くだけだ」
「この……!」
ラベンダーがダガーを構えた。しかしパワーホールドで強化中のレシアの本気の攻撃に耐えられる訳もなく、ダガーごと命を斬り裂かれてしまった。
暫くの静寂の中、レシアはその場に膝を付く。
「…すまない。俺がこいつ等一家を殺してしまったんだな。せめて祈らせてくれ。全てが終わったら俺もそっちへ行く。その時は好きにしてくれて構わない」
一頻り冥福を祈った後、レシアは静かに立ちあがった。
「ああ、そうか……俺が行くのは地獄だよな、きっと」
暫く地下迷宮を彷徨う。あの2人の身体もそろそろ魔物に食い散らかされている頃だろう。地下迷宮は本当に迷路みたいな感じで、もはや狙って戻る事も出来ないレベルだ。
「これ……俺って出口に辿り着けるんだろうか?」
そう考えながらも進んでいると、やがて大きなフロアに出た。奥に急な階段が見える。どうやら出口に辿り着いた様だ。
「はあ……やっとか。いや、出口に辿り着けて良かった」
階段を昇って行くと天井に扉があった。鍵が掛かっていたが、剣で破壊する。そっと開いて覗くと見覚えのある部屋に繋がっていた。
「ここはアサシン本部長室……バダグの部屋じゃないか。隣の部屋から落ちてグルグル回ったのにここに着くのか」
どうやら地下迷宮は回りに回って似た様な位置に戻って来る構造らしい。しかもあんなに最初落ちたのに、階段を多少昇った程度でここに着くなんて……地下迷宮自体が緩やかな上り坂になっていたのだろうか。
「……バダグは居ないな」
部屋に入り込み、隣の部屋に向かう。そこにも誰も居なかったが、どこからか気配を感じる。どこからだ?
よくよく見ると、暖炉にはめてあった安全の為の小さな鉄格子が外れて横に置いてある。屈んで中を窺うと、奥へ続いている。考えてみたら、この暖炉を使用しているのを見た事は無かったな。エアコンもあるんだし、ただのオブジェみたいな物だと思っていたが……秘密の部屋への隠し通路だったのか?
中へ入ってみる。やはり暖炉としては使用していなかったのだろう。煤の様な汚れは全く無く、そもそも煙を逃がす様な煙突に繋がる穴も無かった。
「ってか、煙突自体が無いもんな……アサシン本部って」
20秒ほど進んだ辺りで広めの空間に着いた。扉も無く内装も打ち付けの綺麗でも何でもないコンクリートの壁のみだった。奥にバダグが1人で座って居る。その奥には小さな祭壇があった。
「……ん? レ、レッド!?」
「うわ、見付かった」
「まさか、あの地下迷宮から抜け出す者が居るなんて……流石だな」
バダグが立ちあがると、祭壇に飾ってある大きな鉱石が目に入った。
「……そうか。バダグ、お前も絡んでいたんだな」