横話I エピローグ

文字数 2,318文字

※この横話Iは「66話」終了時点の状態でのエピローグです。66話まで読んでいない方は、先にそちらまで本編を読んで頂く事を強くお勧めします。







横話I

エピローグ







 あれから3日が過ぎた。体力の低下していたバダグはアサシン本部に戻ってすぐに倒れてしまった。今日はバダグの様子を見る為にアサシン本部へ行ってみた。



「よお、バダグ。もう調子はいいのか?」
「ああ、昨夜は充分に休ませて貰ったからな。」
「バダグも元に戻ったし、世界も平和になったし。」
「そうだな。」


 ブルーもやって来る。


「おう。ブルーじゃないか」
「あら、レッド。もう落ち着いたの?」
「俺は元気だからな」
「そう。……あら、バダグも居たのね」
「気付くの遅くない?」


 昔と変わらない光景に笑みがこぼれそうになる。


「まあ良い。今日はナーダはどうした?」
「今日はルーン村に行っている。皆の墓を作るんだって。おれも後で行って手伝うよ」
「レッドはこれからどうするの?」
「まだ迷っている。村で過ごすのも良いし、街へ出るのも良い。金はある程度あるからな」

「もし金に困ったら仕事を紹介してやっても良いぞ」
「どうせロックだろうが。それはもう良いわ」
「ハンターに紹介してやろうか?」
「はあ? どういう心境の変化だ?」

「今朝、ハンター部長から使者が来てな。アサシンとハンターの業務提携の提案が来た」
「業務提携……? どっちかが吸収されるのか?」
「そういう感じじゃないみたいね」
「今でもロックはアサシン、それ以外はハンターみたいな風潮があっただろ。実際には決まっていなくて、ハンターでロックはするしアサシンでも子猫探しをする」

「そうだな」
「依頼の受口を1つにして、内容によって仕事を割り振ろうって事らしい」
「へえ……ってかよく受けたな」
「まだ返答はしていない。が、正直どっちでも良いとは思っている」

「大元を言えば、アサシンとハンターはライバルではあれど決して憎しみ合う敵では無かったからね」
「何かの拍子でハンターのロックを行ってから、今の争いが始まったらしいからな」
「そうなんだ。じゃあ本当に業務提携なんだな」
「うむ」


 時計を見ると、予定していた時間を過ぎていた。


「ああ、もうこんな時間か。ハンター本部にも寄らなきゃだし、俺はもう行くぞ」
「何、今からハンター本部に行くの? だったら業務提携の件、OKの返事しといて」
「そうか、分かった」
「え、俺の意見は? 俺が一番偉いんだよな?」

「じゃあな。そうそう会う事は無いだろうが、また機会があったら会おう」
「敵として会わない事を祈るわ」
「そうだな」
「おーい!」






 ハンター本部ではシヴァが待っていた。


「おお、レシア。良く来たな」
「ちょっと待たせたか。悪いな」
「構わない。それより話を聞かせてくれ。昨日ナーダにちょっと聞いただけだから良く分かっていないんだ」
「そうだな」



「…………そうか。ダーク・アサシンは滅んだのか。これでアサシンの異常な横暴は起こらなくなるだろうな」
「ルーン村やフレスト村の事だな」
「ああ。それにアサシンには今朝、使者を出して来た」
「ああ、そう言えば伝言を預かって来たんだった。業務提携、OKだとよ」

「アサシン本部に居たのか? そうか、OKか」
「上手くいくかどうかは分からんが、まあ頑張ってくれ」
「ああ。レシアはこれからどうするんだ?」
「取り敢えずは村の皆を供養するよ。それからの事はまだ決めかねている。村に残っても良いし、街に出ても良い」

「仕事に困ったら俺を訪ねて来い。何だったら家も探してやるぞ」
「家か。それも有りか……」
「街に出るなら家を借りるか建てるかしないとな」
「家を建てるのも面白そうだな。うん、そうしようか」

「アサシン時代の貯金はあるんだろ?」
「アサシンは給料が良かったからな。意外と持っているぞ」
「じゃあそこから頭金を出して自分の好みの家を建てたらどうだ?」
「好みのって言っても、別に要望とかも無いけどな。趣味も無いし」

「将来の事も考えたら大きな家とか、部屋数とか色々あるだろ」
「う~ん……まあ、よく分からんがその時に考えるわ」
「そうか。まあまた近くに来たら寄れよ」
「その時には美味い茶も忘れるな」






 山に入り洞窟を抜け、ルーン村へ辿り着いた。昼過ぎではあるが、まだ暗くなるには時間もある。当時、村人自体は簡単に埋葬してあったが墓までは建てる余裕も無かった。


「ナーダは何処だ? 墓を建てるのなら西の広場だろうか?」


 広場の入り口にはナーダの使用しているバッグが置いてあった。中を覗くと既に沢山の墓が建てられている。勿論、しっかりした物では無いがちゃんと1つ1つ感覚を開けて石を置いてある。しかしこれは……



「あ、レシア。おかえり」
「ただいま。……ただいまなのか?」
「見てみて。沢山作ったよ」
「ああ、そうなんだけどさ」

「全部で100個の墓が出来ましたっ!」
「あのさ……」
「頑張ったでしょ?」
「沢山作ったな」

「うん」
「でも……多くね?」
「ん?」
「この村、全員でも40名だったんだが?」





 墓の数は40個になった。全員で40名の村だった……つまりレシアとナーダの分まで残してしまっている気もするが……




「レシアはこれからどうするの?」
「ああ。街へでようかと思ってる。家を建てて暮らそうと思う。シヴァやバダグが仕事の世話をしてくれるらしいぞ」
「そうなんだ。じゃあ私も行く」
「え?」

「え、って何よ。私も行ったら駄目なの?」
「駄目じゃないけど、ナーダは何かやりたい事とかあるのか?」
「あるけど……内緒」
「そうか。それでナーダは何処に住むんだ?」

「それは、レシアの所」
「はい?」
「うんうん」
「…………」






 横話の間が閉じる。


 そして、時間の路全体に光が拡がっていった。





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登場人物紹介

【レッド】

腕利きのアサシン。

とある目的の為にアサシンとなった彼は、その手を血に染めていく。

序盤はダガーを使用し、闇属性の魔法も使用可能。

【ブルー】

レッドの相棒であるアサシン。

金が好きで基本的に冷めた性格である。

どういった経緯でアサシンになったかは不明。

ダガーを使用し、風属性と水属性の魔法も使用可能。

【バダグ】

アサシン本部の部長。

普段はラフな喋り方だが、実力はアサシンでも最強クラス。

セスタスを装着し、格闘術を得意とする。

【ナーダ】

レッドの幼馴染。

とある場所で再会する。

杖を装備しており、光属性と回復の魔法が使用可能。

【シヴァ】

ハンター本部の部長。

エルフであり、魔力が高い。

長剣を使用し、無属性の魔法を使用可能。

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