第24話

文字数 1,917文字

 来た道を戻って森に入る。暫く進んだ少し開けた場所で、とある人物と再会してしまった。



「お前、ブルー……」
「探したわよ、レッド」
「こんな所まで来るとはな。暇なのか? それとも、アサシンの面子を汚した男に復讐しに来たのか?」
「そうね。ナーダのロックにシヴァのロック……アンタには2回も邪魔されたからね。今回はアサシン本部長直々の依頼で、レッドをロックしに来たわ」

「バダグの依頼だと? よっぽどシヴァのロックを邪魔した事を怨んでいるんだな」
「それだけでも無いけどね」
「何だと?」
「いいえ。とにかく1番の理由は、アンタがバダグを裏切ったからね」



 そっと剣の柄に手を伸ばす。戦闘は避けられない。


「そうか。それでどうするんだ?」
「やるしかないでしょう?」
「そりゃそうだ。」
「レッド、アンタはどうするの?」
「やるしかないだろう?」
「そうね。」




 1呼吸の後、ブルーが斬り込んで来る。相変わらず早い攻撃だ。


「また絶妙な位置で攻撃しやがって」
「今回のターゲットはレッド・アサシンなの。少しの油断も出来ないわ」
「油断してなくっても、俺には勝てないぜ」


 ブルーは離れてウィンドカッターを放つ。レシアはそれを斬り裂いた。もうこの魔法は怖くない。


「どうした? お前の攻撃は通用しないみたいだな」
「それを油断って言うのよ! ウィンドカッターツヴァイ!」
「なっ!?」


 ブルーの手からウィンドカッターが一度に3つ発射される。それぞれが弧を描いてレシアに襲い掛かる。1つを斬り裂いたレシアだが、同時に襲い掛かって来る物を斬る事は出来ない。


「こんな奥の手を隠してるなんて」


 レシアは大きく横に飛び退いた。風の刃が腹部を掠める。



「どうかしら。ウィンドカッターツヴァイは?」
「3つも飛んできた。ツヴァイ(2)じゃなくてドライ(3)じゃないか。詐欺だな」
「ナンバリングだからツヴァイで良いのよ。さあ、ダメージもあったし、これでお仕舞かしら?」
「それを油断って言うんだよ」


 近付いてきたブルーを手早く斬り付けた。ブルーの肩を掠める。


「別にちょっと掠っただけだから、問題ないんだよ」
「くっ……」


 同じ掠めるでも、ブルーの方が傷が深い様だ。ブルーの肩から血が流れ出す。



「ますます腕を上げたようね、レッド」
「ブルー、これが本当に本当の最終通告だ。これ以上、俺達に関わるのは止めろ。これ以上関わるのなら命の保証は無い」
「……私はアンタと違ってアサシンなの。見縊らないで貰いたいわ!」


 至近距離でブルーはアイスを発動した。いきなりの魔法攻撃に上手く対応できず、レシアは氷に当たり後ろへ吹っ飛んだ。


「うっ、くそっ!」
「私の受けている依頼には……」
「……えっ?」


 ブルーはナーダの方へ走り出した。


「ナーダをロックする依頼もあるのよ!」
「しまった……ナーダ、逃げろ!」
「あ……」


 ブルーのダガーがナーダを斬り裂いた。一目で致命傷であると分かる。


「利き手を残したのがアンタのミスよ、レッド。お陰で本当の奥の手が出せるわ!」
「やめろ!」


 ブルーの手から一際大きいアイスが発動。ナーダの全身を氷漬けにする。そのまま風の刃をダガーに込めてナーダに斬り付けた。



 ナーダは氷ごとバラバラになった。辺りにはナーダの血液が飛び散る。

 実際に人を氷漬けにして砕いても、その人はバラバラにはならない。でもそうなってしまったのは、風邪の魔法の所為だろう。相手の動きを封じ、確実に止めを刺す恐ろしい技だった。


「あ……あ……」



 アサシンをやってきた自分としては今更だが……人の命って、簡単に消えてしまう物だ。


「奥義・氷結破砕斬よ。いくらアンタでもこれはかわせない。次はレッド、アンタが死ぬのよ」
「…………」
「覚悟しなさい」


「……お前だ」
「え?」
「次に死ぬのはお前だ!」



 もしかしたら、今までで1番早く動けたかもしれない。一気に距離を詰め、ブルーを一刀両断した。


「ぐ……」


 ブルーと目が合う。ブルーはそのまま何も言えずに倒れ、息を引き取った。





「俺は、ナーダを救えなかった……また……」


 また、と言って違和感を覚える。またって何だ?

 でもそんな事は些細な事だ。



「……バダグ、許さん。お前が俺を殺そうと言うのなら、俺にも考えがある。ナーダの仇は取らせて貰うぞ」



 ナーダは原形が全く分からないレベルでバラバラにされている。レシアは手を合わせて目を塞ぐ。


「ナーダ、すまない。どう考えても俺に関わった所為で殺された。仇は取ってやる。今は村の仇よりもナーダの仇だ」



 目を開ける。


「今回の件がバダグに知られるまでは、まだ時間がある。その間に決着を付けてやる。バダグ、覚悟していろ。いや、覚悟する前に殺してやる」



 決戦が始まろうとしていた。





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登場人物紹介

【レッド】

腕利きのアサシン。

とある目的の為にアサシンとなった彼は、その手を血に染めていく。

序盤はダガーを使用し、闇属性の魔法も使用可能。

【ブルー】

レッドの相棒であるアサシン。

金が好きで基本的に冷めた性格である。

どういった経緯でアサシンになったかは不明。

ダガーを使用し、風属性と水属性の魔法も使用可能。

【バダグ】

アサシン本部の部長。

普段はラフな喋り方だが、実力はアサシンでも最強クラス。

セスタスを装着し、格闘術を得意とする。

【ナーダ】

レッドの幼馴染。

とある場所で再会する。

杖を装備しており、光属性と回復の魔法が使用可能。

【シヴァ】

ハンター本部の部長。

エルフであり、魔力が高い。

長剣を使用し、無属性の魔法を使用可能。

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