第32話
文字数 1,938文字
「このままハンター共々、殺してやるよ」
「死ぬのはお前だ、バダグ」
とは言え、暫く見合いが続く。流石のバダグでも不用意には手を出してこない。隙を窺う様にし、少し離れた位置から急接近し蹴りを放ってきた。何とか後ろへ下がりかわす。そのまま剣を振るうが、距離があり過ぎて届かない。
「セスタスが無い分、攻撃に精彩を欠いているな」
「レッド。俺とお前の差は、武器の有る無しでは無い」
「そうかよ」
レシアが剣を振るう。バダグはそれをかわし再び蹴りを放つ。拳より蹴りの方がリーチを取れるせいか、蹴りの頻度が多い気がする。
「まあ良いか、このまま今度は足を斬り裂いてやる」
「格闘に慣れていないお前にそんな事が出来るかな」
「被弾覚悟ならいけるかもよ」
「ならばやってみろ!」
挑発に乗ったのか、バダグが蹴りを放つ。今までと違う軌道の素早い蹴りだ。直撃は避けたが、足が腹部へ突き刺さる。肋骨が悲鳴を上げる。
「ぐ……何だ今の蹴りは」
「蹴りもいつも使う回し蹴りだけでは無い。色んな種類の蹴りがあるんだ」
「これはズルいな」
「武器を持っているヤツがズルいとか言うな」
後ろから剣が振るわれる。
「……! 貴様!?」
「俺を無視するんじゃ無い!」
ゴットルの剣はバダグをの足を斬る。だいぶ浅かった様だが、バダグに隙が生まれる。レシアはその一瞬で詰め寄り、そのまま剣を突き出してバダグの肩を貫いた。同時にバダグの拳もレシアの腹部を打つ。
「うぐ……」
「ぐおっ……」
レシアは思わず膝を付く。暫く呼吸が出来なかったが、何とか落ち着く。顔を上げるとゴットルが蹴りで吹っ飛ばされていた。どうやら盾になってくれた様だ。しかもバダグの足に怪我を負わせた。
「ゴットル、よくやったな」
「レッド……プライドを捨て、こんな形で俺を追い詰めて満足か?」
「プライド? そんな物はナーダが死んでしまった時に捨てた。俺は命を賭けてお前と戦う事を決めた。命のやり取りにプライドなんて言っていられない。」
ラベンダーは最初の1撃で気を失ってしまっている。ゴットルもさっきの攻撃で気を失った様だ。
「しかもお前、まだ元気じゃん。今もゴットルを蹴り倒してたし」
「言っただろ。あのレベルでは何人来ても変わらんと」
「そうだったな」
レシアは立ち上がり魔法を唱える。
「ここまで来て勝ち方なんて問わない。何をしてでも俺はお前に勝つ。ナーダの為でもあるし、俺の為でもある」
「……じゃあ決着を着けようか」
「そうだな……シャドウ!」
シャドウを連発する。確かに威力は弱いが……無防備で直撃すれば間違いなくダメージを与えられる程度には強い。実際にブルーをこの魔法で撤退させた事もあったんだ。無視は出来ない。
バダグは1発目のシャドウをかわし、2発目をガードする。セスタスの無い状態では流石にシャドウを殴って消す事は難しいらしい。レシアはその隙に一気にバダグに斬り掛かった。
「バダグ、覚悟しろ!」
「させるか!」
何とも言えない音が鳴り響き、レシアは壁へ叩きつけられた。剣はギリギリまで離さなかったお陰で、近くに落ちている。
「……レッド、流石だな。もう少しで首を落とされる所だった」
「バダグこそ流石だ。セスタスも着用してないのに俺の剣を叩き落とすなんてな」
「ああ。その代償は大きい様だがな」
剣を無理に弾いた結果、バダグの腕を深く切り裂いた。バダグの右腕からは血が噴き出し、動かす事も出来ない様な状態になってしまっていた。
「勝負あったかな?」
「冗談だろ、まだやれるさ」
「このまま逃げ回っているだけでも出血多量で俺の判定勝ちだぞ」
バダグは服を左手と口で斬り裂いて器用に右腕に巻き付け、縛り付けた。流石にちゃんと止血は出来ていないが。
「これで多少は寿命が延びた」
「……仕方が無いな。俺が直接引導を渡してやる」
レシアは立ち上がる。力んだ所で吐血する。肋骨が折れているだろう。もしかしたら折れた骨が何処かに刺さってしまっているかもしれない。
「ははっ、お前も結構重傷じゃないか」
「お前程じゃ無いさ」
動きが鈍い。結構なダメージだ。でもそれはバダグも同じだ。そして後ろで動く気配。
「バダグ、今回俺はハンターと組んで3人でお前に挑んだ。ゴットルの不意打ちが無かったらお前に攻撃を当てられなかったかもしれない。その肩の傷はあいつのお陰だ」
「……時間稼ぎでもするつもりか?」
「とにかく、俺達3人の勝ちが俺の勝ちだ。俺の勝ちが俺達の勝ちでもある」
剣を構える。バダグも左手を構える。どちらにしろバダグはもう助からないだろう。勝利自体は決定している。皆がバダグを仇だと言うのなら、誰が止めを刺しても皆の勝ちになる。今更、卑怯とは言うまい。
次の瞬間、後ろからラベンダーのダガーがバダグの背中を貫いた。
「死ぬのはお前だ、バダグ」
とは言え、暫く見合いが続く。流石のバダグでも不用意には手を出してこない。隙を窺う様にし、少し離れた位置から急接近し蹴りを放ってきた。何とか後ろへ下がりかわす。そのまま剣を振るうが、距離があり過ぎて届かない。
「セスタスが無い分、攻撃に精彩を欠いているな」
「レッド。俺とお前の差は、武器の有る無しでは無い」
「そうかよ」
レシアが剣を振るう。バダグはそれをかわし再び蹴りを放つ。拳より蹴りの方がリーチを取れるせいか、蹴りの頻度が多い気がする。
「まあ良いか、このまま今度は足を斬り裂いてやる」
「格闘に慣れていないお前にそんな事が出来るかな」
「被弾覚悟ならいけるかもよ」
「ならばやってみろ!」
挑発に乗ったのか、バダグが蹴りを放つ。今までと違う軌道の素早い蹴りだ。直撃は避けたが、足が腹部へ突き刺さる。肋骨が悲鳴を上げる。
「ぐ……何だ今の蹴りは」
「蹴りもいつも使う回し蹴りだけでは無い。色んな種類の蹴りがあるんだ」
「これはズルいな」
「武器を持っているヤツがズルいとか言うな」
後ろから剣が振るわれる。
「……! 貴様!?」
「俺を無視するんじゃ無い!」
ゴットルの剣はバダグをの足を斬る。だいぶ浅かった様だが、バダグに隙が生まれる。レシアはその一瞬で詰め寄り、そのまま剣を突き出してバダグの肩を貫いた。同時にバダグの拳もレシアの腹部を打つ。
「うぐ……」
「ぐおっ……」
レシアは思わず膝を付く。暫く呼吸が出来なかったが、何とか落ち着く。顔を上げるとゴットルが蹴りで吹っ飛ばされていた。どうやら盾になってくれた様だ。しかもバダグの足に怪我を負わせた。
「ゴットル、よくやったな」
「レッド……プライドを捨て、こんな形で俺を追い詰めて満足か?」
「プライド? そんな物はナーダが死んでしまった時に捨てた。俺は命を賭けてお前と戦う事を決めた。命のやり取りにプライドなんて言っていられない。」
ラベンダーは最初の1撃で気を失ってしまっている。ゴットルもさっきの攻撃で気を失った様だ。
「しかもお前、まだ元気じゃん。今もゴットルを蹴り倒してたし」
「言っただろ。あのレベルでは何人来ても変わらんと」
「そうだったな」
レシアは立ち上がり魔法を唱える。
「ここまで来て勝ち方なんて問わない。何をしてでも俺はお前に勝つ。ナーダの為でもあるし、俺の為でもある」
「……じゃあ決着を着けようか」
「そうだな……シャドウ!」
シャドウを連発する。確かに威力は弱いが……無防備で直撃すれば間違いなくダメージを与えられる程度には強い。実際にブルーをこの魔法で撤退させた事もあったんだ。無視は出来ない。
バダグは1発目のシャドウをかわし、2発目をガードする。セスタスの無い状態では流石にシャドウを殴って消す事は難しいらしい。レシアはその隙に一気にバダグに斬り掛かった。
「バダグ、覚悟しろ!」
「させるか!」
何とも言えない音が鳴り響き、レシアは壁へ叩きつけられた。剣はギリギリまで離さなかったお陰で、近くに落ちている。
「……レッド、流石だな。もう少しで首を落とされる所だった」
「バダグこそ流石だ。セスタスも着用してないのに俺の剣を叩き落とすなんてな」
「ああ。その代償は大きい様だがな」
剣を無理に弾いた結果、バダグの腕を深く切り裂いた。バダグの右腕からは血が噴き出し、動かす事も出来ない様な状態になってしまっていた。
「勝負あったかな?」
「冗談だろ、まだやれるさ」
「このまま逃げ回っているだけでも出血多量で俺の判定勝ちだぞ」
バダグは服を左手と口で斬り裂いて器用に右腕に巻き付け、縛り付けた。流石にちゃんと止血は出来ていないが。
「これで多少は寿命が延びた」
「……仕方が無いな。俺が直接引導を渡してやる」
レシアは立ち上がる。力んだ所で吐血する。肋骨が折れているだろう。もしかしたら折れた骨が何処かに刺さってしまっているかもしれない。
「ははっ、お前も結構重傷じゃないか」
「お前程じゃ無いさ」
動きが鈍い。結構なダメージだ。でもそれはバダグも同じだ。そして後ろで動く気配。
「バダグ、今回俺はハンターと組んで3人でお前に挑んだ。ゴットルの不意打ちが無かったらお前に攻撃を当てられなかったかもしれない。その肩の傷はあいつのお陰だ」
「……時間稼ぎでもするつもりか?」
「とにかく、俺達3人の勝ちが俺の勝ちだ。俺の勝ちが俺達の勝ちでもある」
剣を構える。バダグも左手を構える。どちらにしろバダグはもう助からないだろう。勝利自体は決定している。皆がバダグを仇だと言うのなら、誰が止めを刺しても皆の勝ちになる。今更、卑怯とは言うまい。
次の瞬間、後ろからラベンダーのダガーがバダグの背中を貫いた。