横話F 封印
文字数 1,566文字
※この横話Fは「50話」終了時点の状態でのお話です。50話まで読んでいない方は、先にそちらまで本編を読んで頂く事を強くお勧めします。
横話F
封印
魔物になってしまったあの人の為に、食料代わりの魔物を供給し続けた上司。今は私がその後を継いでいる。
もっとも私は魔物を供給している訳じゃ無い。あの人……ニサラレスを閉じ込めておくだけ。あの人は異空間に隠されていて、簡単に言えば捕縛されている。でも異空間とこの世界を繋いで、この世界の空気に触れてしまうとその鎖が解き放たれてしまう。
故に私も異空間には行った事は無い。今はただあの人が弱まるのを……もっと言ってしまえば餓死するのを待つだけ。それまでの間、異空間に居るあの人の動きを止める為にこの世界にある封印を見守っている。封印が弱まりそうな時に封印の要となっているこの石に魔力を供給するだけ。そこまで難しい仕事では無い。
問題があるとすれば、いつ封印が弱体するか分からない事。理由は分からないが封印は不定期に弱体する。数時間とかは問題無いが、1日開けてしまう事は危険だ。旅行にすら行けやしない。それにこの事は誰にも言っていない。入院や最悪死んでしまったりした時に、封印を護る存在が居なくなってしまう。あともう1つ…………
私、アンジェは弱体化した封印に魔力を供給した。これで良し、と。
「こんな状態じゃ結婚も出来ないわね。まあ相手も居ないんだけど」
供給はある程度の魔力が必要だ。私もそこまで魔力が強い訳では無い。普通より強め、ってレベルだ。それでもあの上司よりはマシだった。
上司はもう亡くなってしまったけど、上司はニサラレスに取り込まれてしまっていた。その為、魔物を召喚してそれを異空間に送るといった事を強要されてしまっていた。元々魔力の強い訳でも無かった上司だ。一定を超えてしまった辺りから急激にやつれていった。私がやっている事と比べると、上司が行っていた事は遥かに魔力を消費していた。
「ニサラレスはいつまでもつのかしら。あの人が死ねば封印が弱体しなくなるらしいけど、今の所はそんな雰囲気も無いし……」
上司もやろうと思えば魔物の召喚を辞める事も出来たはずだ。強要されているとは言え、この場所を離れている時は効力も弱まる。自分が何処か遠い場所へ避難して、私でも誰でも他の者に封印を見させていれば……
ニサラレスは上司の、更に上司の息子だった。もちろん人間だ。それがある日急に魔物へと変化してしまった。襲い掛かって来た魔物と化したニサラレスを上司は迎え撃った。動きを封じる事は出来たが、殺す事は出来なかった。その後、上司の上司からの命令で異空間に封じ込める事となった。その際に上司はあの人に取り込まれてしまったらしい。
異空間を形成出来たのも封印の要となっている石のお陰だ。同時にこの石はニサラレスを魔物に変えた原因とも考えられている。
上司はあの人を護り続けた。取り付かれていたというのもあるが、それ以上に2人は親友だったのだ。私はあの人とは接点も無いので、このまま餓死させる事に迷いはない。あの人を異空間に監禁する事は…見殺しにする事は、上司が亡くなる前に私に託した事でもあるのだ。上司は自分が死んだ時はあの人を誰に被害を与えない様に始末する事を望んでいた。
だが、ある日……最悪の事態が起こる。問題視していた最後の1つが起こってしまった。
それはあの人の力が強くなり、私では抑えきれなくなってしまう事だ。空腹で弱っていくと思われたあの人の力は増大し、封印では抑えられなくなってしまったのだ。
私が上司から使命を受けた、僅か半年後の事だった。
横話の間が閉じる。
「……何だこれ? 話は分かるが、意味は分からない。ブルーはそんな使命を負ってしまっているのか? ってかアンジェって……」
横話F
封印
魔物になってしまったあの人の為に、食料代わりの魔物を供給し続けた上司。今は私がその後を継いでいる。
もっとも私は魔物を供給している訳じゃ無い。あの人……ニサラレスを閉じ込めておくだけ。あの人は異空間に隠されていて、簡単に言えば捕縛されている。でも異空間とこの世界を繋いで、この世界の空気に触れてしまうとその鎖が解き放たれてしまう。
故に私も異空間には行った事は無い。今はただあの人が弱まるのを……もっと言ってしまえば餓死するのを待つだけ。それまでの間、異空間に居るあの人の動きを止める為にこの世界にある封印を見守っている。封印が弱まりそうな時に封印の要となっているこの石に魔力を供給するだけ。そこまで難しい仕事では無い。
問題があるとすれば、いつ封印が弱体するか分からない事。理由は分からないが封印は不定期に弱体する。数時間とかは問題無いが、1日開けてしまう事は危険だ。旅行にすら行けやしない。それにこの事は誰にも言っていない。入院や最悪死んでしまったりした時に、封印を護る存在が居なくなってしまう。あともう1つ…………
私、アンジェは弱体化した封印に魔力を供給した。これで良し、と。
「こんな状態じゃ結婚も出来ないわね。まあ相手も居ないんだけど」
供給はある程度の魔力が必要だ。私もそこまで魔力が強い訳では無い。普通より強め、ってレベルだ。それでもあの上司よりはマシだった。
上司はもう亡くなってしまったけど、上司はニサラレスに取り込まれてしまっていた。その為、魔物を召喚してそれを異空間に送るといった事を強要されてしまっていた。元々魔力の強い訳でも無かった上司だ。一定を超えてしまった辺りから急激にやつれていった。私がやっている事と比べると、上司が行っていた事は遥かに魔力を消費していた。
「ニサラレスはいつまでもつのかしら。あの人が死ねば封印が弱体しなくなるらしいけど、今の所はそんな雰囲気も無いし……」
上司もやろうと思えば魔物の召喚を辞める事も出来たはずだ。強要されているとは言え、この場所を離れている時は効力も弱まる。自分が何処か遠い場所へ避難して、私でも誰でも他の者に封印を見させていれば……
ニサラレスは上司の、更に上司の息子だった。もちろん人間だ。それがある日急に魔物へと変化してしまった。襲い掛かって来た魔物と化したニサラレスを上司は迎え撃った。動きを封じる事は出来たが、殺す事は出来なかった。その後、上司の上司からの命令で異空間に封じ込める事となった。その際に上司はあの人に取り込まれてしまったらしい。
異空間を形成出来たのも封印の要となっている石のお陰だ。同時にこの石はニサラレスを魔物に変えた原因とも考えられている。
上司はあの人を護り続けた。取り付かれていたというのもあるが、それ以上に2人は親友だったのだ。私はあの人とは接点も無いので、このまま餓死させる事に迷いはない。あの人を異空間に監禁する事は…見殺しにする事は、上司が亡くなる前に私に託した事でもあるのだ。上司は自分が死んだ時はあの人を誰に被害を与えない様に始末する事を望んでいた。
だが、ある日……最悪の事態が起こる。問題視していた最後の1つが起こってしまった。
それはあの人の力が強くなり、私では抑えきれなくなってしまう事だ。空腹で弱っていくと思われたあの人の力は増大し、封印では抑えられなくなってしまったのだ。
私が上司から使命を受けた、僅か半年後の事だった。
横話の間が閉じる。
「……何だこれ? 話は分かるが、意味は分からない。ブルーはそんな使命を負ってしまっているのか? ってかアンジェって……」