第50話

文字数 1,887文字

 レシアは新しく出現した横話の間の方へ歩き出した。この内容次第ではもう自分の進む未来を決めてしまっても良いのかもしれない。


「もし自分の望む未来でなくても、その時はもう1度時間の扉を開ければ良いだけなのです」
「それはそうだが……実際にアレって結構大変なんだぜ? 時間を遡っている間は基本的に思い出せないから、あんまり関係ないんだけどさ」
「それはどうしようもありません。貴方の場合は長い場合だと結構な期間があります」
「今までのルーンナーはもっと短かったのか?」

「そうですね。短い方であればほんの数時間でした」
「それは……短くて楽だな」
「貴方は珍しいのかもしれませんね」
「珍獣みたいだな」



 数歩歩いた時点で、何か違和感を覚える。全身に何かが侵されてしまっている様な感覚。


「……今のは何だ?」
「……分かりません。ここは時間の路、神聖なる場所です。そう簡単に何かの影響を受ける事もありません」
「でも何か……ちょっと上手く言えないけどさ」
「ええ、私も感じました」


 違和感は一瞬だけだった様で、もう何も感じない。






※横話Fが解禁されました。少し未来の話を見る事が可能になります。レシアはこの横話を見た後、また時間の扉を開ける事になります。




 レシアは再び時間の扉へ手を掛ける。このままでは終われない。


「なあ、ルーン」
「はい、何でしょうか」
「トリガーって何だと思う?」
「トリガーですか?」

「ああ。道中で記憶を取り戻すトリガーさ」
「それは私には分かりません」
「思い返せばたまにあったんだよな。朧気でも思い出す瞬間が、な」
「どうでしょうか。切っ掛けはその人や状況によって違います」


 記憶が戻らない状態で時間を繰り返しても、結局はあまり変わった展開にはならないのでは無いだろうか。確かに、今までちょとした違和感や既視感レベルの物によって上手く時間の流れを変える事は出来て来た。それでも正直、運レベルの話なのだ。


「俺って此処に来るのは何回目なんだ?」
「どういう意味でしょう?」
「河川敷からスタートしてこの時間の路へ戻る流れ、何回繰り返したかな? と。正直覚えていないんだ」
「貴方は何回目だと予想しますか?」

「う~ん……4~5回目かとも思うし、何十回も繰り返してる様な気もするし……分からない」
「それはどうでも良い事かもしれません。最終的に望む未来へ進む事が目的なのですか。」
「そうなんだろうか?」
「私は貴方が何回この流れを繰り返しているか把握しています。しかしそれを言う必要も義務もありませんので」


 そう言われるとそんな気にもなって来る。確かに1番大切なのは、何回時間の流れを繰り返してでも自分の望む道へ進む方法を探す事なんだろう。



 また違和感。

 普段、この違和感は時間の流れを繰り返している中でしか起こらなかった。でもさっきといい、今といい……


「因みに時間の流れを繰り返す事に対して、制限ってあるのかな? 制限って言うか……何回までしか出来ないとか」
「いえ、それはありません。時間を繰り返していますので、貴方が老いる事もありません。また、1度時間の路と繋がれた者は何度でも繰り返し繋がれます」
「そうか」
「敢えて言うのであれば、自分の選択……開いた道に真に納得出来た者は自然と時間の路を閉ざす事となります。そうなった場合はその時間の路に戻る事はなくなるでしょう」

「なるほど……でもそれは道理なのかもしれないな」
「貴方もそうなる様、自分の道を進んで下さい」
「ああ。じゃあ行くよ。何度目かは忘れたけど……この流れの最初に」




 レシアは時間の扉を開いた。扉から光が拡がり、すべてを包んでいく。








「……!? ここは」
「……」
「河川敷……リュートのロックの日か。また戻って来たんだな」


 少しして、ハッと気付く。


「何で覚えているんだ? これからの流れも、時間の路の事も全部覚えている」
「レッド?」
「……ああ、済まない。何でもないんだ」
「何でも? そんな事は無いでしょう」


 ブルーはダガーを振るって来た。いきなりだったが、何とかかわす。


「うわっ!? 何をするんだ」
「何かよく分からないけど、私も覚えているのよね。これから起こる事を」
「え……それはどういう?」


 後ろからハンターが襲い掛かって来た。そうだった、ここに戻ってすぐにリュートの護衛であるハンターが襲って来るんだった。


「取り敢えずこいつ等からだな」
「そのようね」


 1人1殺、あっと言う間にハンターを片付けた。すぐにリュート本体も来るのだろう。しかし……今のはどういう事なんだ?


「お前も覚えているんだな?」
「ええ。覚えているわ」
「そうか……」


 訳が分からなかった。





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登場人物紹介

【レッド】

腕利きのアサシン。

とある目的の為にアサシンとなった彼は、その手を血に染めていく。

序盤はダガーを使用し、闇属性の魔法も使用可能。

【ブルー】

レッドの相棒であるアサシン。

金が好きで基本的に冷めた性格である。

どういった経緯でアサシンになったかは不明。

ダガーを使用し、風属性と水属性の魔法も使用可能。

【バダグ】

アサシン本部の部長。

普段はラフな喋り方だが、実力はアサシンでも最強クラス。

セスタスを装着し、格闘術を得意とする。

【ナーダ】

レッドの幼馴染。

とある場所で再会する。

杖を装備しており、光属性と回復の魔法が使用可能。

【シヴァ】

ハンター本部の部長。

エルフであり、魔力が高い。

長剣を使用し、無属性の魔法を使用可能。

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