第10話
文字数 1,977文字
「結構早い攻撃だな」
「段々と切り刻んであげましょう」
ナスナは次々と突きを繰り出してくる。かわし、弾きしながら何とか隙を窺う。流石はナスナ、今までの相手とはレベルが違う。
「く……ガチで強いじゃないか。手加減どころじゃないぞ」
「こっちがもう少し手加減してやろうか?」
「ふざけんな。パワーホールド!」
次のナスナの突きを大きく弾き飛ばした。そのまま足を切り裂いた。
「ぐっ!? こんな奴に攻撃を許すとは!」
「浅かったのか?」
ナスナは槍を振りかぶって斬り掛かってきた。アサシンに切られた怒りから攻撃が単純になっている。レッドはその攻撃が届く前に、一気に剣を振るった。
「う……ぐ……」
「し、しまった。やりすぎたか?」
実力が拮抗していた事もあり、一瞬の隙に焦り思いっきり攻撃をしてしまった。その1撃は完全にナスナの身体を切り裂いてしまっていた。ナスナはそのまま倒れる。
「私も堕ちたものだ……しかし敗れたのがレッド・アサシンと言うのは悪くない、か」
「おい、お前に聞きたい事がある」
「聞きたい事だと?」
「3年前にルーンの村を襲ったアサシン。そいつについて何か情報は無いか?」
「ルーンの村……あの秘宝の村か。ハンターがどれくらい情報を得ているか知りたいのか? ふっふっふ……ハンターを甘く見ない事だな」
「……!? 何か知っているんだな?」
「くっ……どうしてお前がそれを知りたがっている? お前がアサシンに加入する前の事件だろう」
「それはお前には関係ない」
「……まあ良い。俺は既にハンターではない。だが、そう簡単にアサシンに情報をくれてやるとは思わない事だな」
「何だと」
暫くの沈黙の後、ナスナ・クールは動かなくなった。
「……死んだ。もしもの時の為に自害用の薬か何かを仕込んでいたのか」
結局、肝心な事は何も聞く事が出来なかった。しかし情報の鍵はハンターにありそうだ。一定以上のハンターなら情報を持っている可能性がある。
冥福を祈っていると、遠くの方から人の走って来る音が聞こえる。このままでは見つかってしまうだろう。場合によっては始末しなければならない。
「はあはあ……レ、レシア!」
「ナーダ!?」
来たのはナーダだった。その後ろからは見慣れた女の姿が見えてきた。
「……ブルー」
「レッド? アンタ何でここに?」
「これはどういう事だ?」
「依頼が入ったの。ナーダを消せって依頼がね」
「何だって……」
「貴方もアサシンなら分かるでしょ? 仕事に私情を挟む訳にはいかないの。レッドには関係の無い事よ」
「…………」
どうする……?確かにアサシンとして、ブルーの邪魔をする事は許されない。邪魔をすれば俺は反逆者として扱われるかもしれない。だが……ナーダが死んでも良いのか? 村のたった1人の生き残りじゃないか。昔から知っている、妹みたいな存在なんだ……
「…………」
レッドはナーダに背を向ける。
「ナーダ。俺はアサシンだ」
「え……レシア?」
「俺ではお前を助ける事が出来ない」
「レシア……どうして……」
「俺がここでお前を助けてしまおう物なら、俺はアサシンに反逆者として狙われてしまうだろう。それじゃ駄目なんだ。俺は村を襲ったアサシンを見付け、仇を討つ為だけに生きているんだ」
「そ、そんな……」
ナーダは逃げる気力すら無くなったのか、膝から崩れ落ちる。
「私が聞くのもなんだけど、良いのね?」
「……ブルー、お前もアサシンだろう」
「分かったわ」
「ナーダ……すまない」
ナーダの泣く声を無視し、レッドは歩いて行った。その声を聞いているのが辛かった。
「俺は……無力だ。ナーダを救う事も出来やしない。でも大丈夫だ。俺もその内にそっちへ逝くだろう。村の仇を取るって事はアサシンを殺すって事。そうなれば俺も殺されてしまうだろうから」
何時の間にか、ナーダの声は聞こえなくなっていた。
「仇さえ打てればそれでいい。あとはアサシンかハンターに殺される。……出来ればブルーかバダグにお願いしたいものだな」
家に帰り布団に潜り込む。食欲も無い。ただただ塞ぎ込んだ。
現状として、ハンター長を含めハンター側が襲いに来るだろう。そうなると情報収集など言っていられなくなるかもしれない。
「時間がない。いつハンター長に狙われるか分からない。ナーダを犠牲にしてまで掴んでいる命だ。決して無駄にする訳にはいかないんだ!」
何とか言い訳を作り、気持ちを落ち着かせる頃には朝になっていた。無理やりに食事を摂り、風呂に入った。鏡を見ると酷い表情になっていた。
コンコン
ドアがノックされ、返事もしない内にブルーが入って来た。何とも言えない表情を浮かべている。一応、気を遣っているのだろうか?
「おはよう」
「おはよう。昨夜は……」
「気にするな。アサシンとしてするべき事をしただけだろう」
「……そうね」
「早速だけど、バダグが呼んでいるわ」
「段々と切り刻んであげましょう」
ナスナは次々と突きを繰り出してくる。かわし、弾きしながら何とか隙を窺う。流石はナスナ、今までの相手とはレベルが違う。
「く……ガチで強いじゃないか。手加減どころじゃないぞ」
「こっちがもう少し手加減してやろうか?」
「ふざけんな。パワーホールド!」
次のナスナの突きを大きく弾き飛ばした。そのまま足を切り裂いた。
「ぐっ!? こんな奴に攻撃を許すとは!」
「浅かったのか?」
ナスナは槍を振りかぶって斬り掛かってきた。アサシンに切られた怒りから攻撃が単純になっている。レッドはその攻撃が届く前に、一気に剣を振るった。
「う……ぐ……」
「し、しまった。やりすぎたか?」
実力が拮抗していた事もあり、一瞬の隙に焦り思いっきり攻撃をしてしまった。その1撃は完全にナスナの身体を切り裂いてしまっていた。ナスナはそのまま倒れる。
「私も堕ちたものだ……しかし敗れたのがレッド・アサシンと言うのは悪くない、か」
「おい、お前に聞きたい事がある」
「聞きたい事だと?」
「3年前にルーンの村を襲ったアサシン。そいつについて何か情報は無いか?」
「ルーンの村……あの秘宝の村か。ハンターがどれくらい情報を得ているか知りたいのか? ふっふっふ……ハンターを甘く見ない事だな」
「……!? 何か知っているんだな?」
「くっ……どうしてお前がそれを知りたがっている? お前がアサシンに加入する前の事件だろう」
「それはお前には関係ない」
「……まあ良い。俺は既にハンターではない。だが、そう簡単にアサシンに情報をくれてやるとは思わない事だな」
「何だと」
暫くの沈黙の後、ナスナ・クールは動かなくなった。
「……死んだ。もしもの時の為に自害用の薬か何かを仕込んでいたのか」
結局、肝心な事は何も聞く事が出来なかった。しかし情報の鍵はハンターにありそうだ。一定以上のハンターなら情報を持っている可能性がある。
冥福を祈っていると、遠くの方から人の走って来る音が聞こえる。このままでは見つかってしまうだろう。場合によっては始末しなければならない。
「はあはあ……レ、レシア!」
「ナーダ!?」
来たのはナーダだった。その後ろからは見慣れた女の姿が見えてきた。
「……ブルー」
「レッド? アンタ何でここに?」
「これはどういう事だ?」
「依頼が入ったの。ナーダを消せって依頼がね」
「何だって……」
「貴方もアサシンなら分かるでしょ? 仕事に私情を挟む訳にはいかないの。レッドには関係の無い事よ」
「…………」
どうする……?確かにアサシンとして、ブルーの邪魔をする事は許されない。邪魔をすれば俺は反逆者として扱われるかもしれない。だが……ナーダが死んでも良いのか? 村のたった1人の生き残りじゃないか。昔から知っている、妹みたいな存在なんだ……
「…………」
レッドはナーダに背を向ける。
「ナーダ。俺はアサシンだ」
「え……レシア?」
「俺ではお前を助ける事が出来ない」
「レシア……どうして……」
「俺がここでお前を助けてしまおう物なら、俺はアサシンに反逆者として狙われてしまうだろう。それじゃ駄目なんだ。俺は村を襲ったアサシンを見付け、仇を討つ為だけに生きているんだ」
「そ、そんな……」
ナーダは逃げる気力すら無くなったのか、膝から崩れ落ちる。
「私が聞くのもなんだけど、良いのね?」
「……ブルー、お前もアサシンだろう」
「分かったわ」
「ナーダ……すまない」
ナーダの泣く声を無視し、レッドは歩いて行った。その声を聞いているのが辛かった。
「俺は……無力だ。ナーダを救う事も出来やしない。でも大丈夫だ。俺もその内にそっちへ逝くだろう。村の仇を取るって事はアサシンを殺すって事。そうなれば俺も殺されてしまうだろうから」
何時の間にか、ナーダの声は聞こえなくなっていた。
「仇さえ打てればそれでいい。あとはアサシンかハンターに殺される。……出来ればブルーかバダグにお願いしたいものだな」
家に帰り布団に潜り込む。食欲も無い。ただただ塞ぎ込んだ。
現状として、ハンター長を含めハンター側が襲いに来るだろう。そうなると情報収集など言っていられなくなるかもしれない。
「時間がない。いつハンター長に狙われるか分からない。ナーダを犠牲にしてまで掴んでいる命だ。決して無駄にする訳にはいかないんだ!」
何とか言い訳を作り、気持ちを落ち着かせる頃には朝になっていた。無理やりに食事を摂り、風呂に入った。鏡を見ると酷い表情になっていた。
コンコン
ドアがノックされ、返事もしない内にブルーが入って来た。何とも言えない表情を浮かべている。一応、気を遣っているのだろうか?
「おはよう」
「おはよう。昨夜は……」
「気にするな。アサシンとしてするべき事をしただけだろう」
「……そうね」
「早速だけど、バダグが呼んでいるわ」