第18話

文字数 2,026文字

「流石ね……私が負けるなんて」
「当然だろ」
「レシア、大丈夫?」
「ああ、怪我はしていないよ」

「ブルー、俺はアサシンを辞めて自力で村の仇を見付け出してやる」
「アサシン本部をも敵に回すかもしれないのよ?」
「こうなった以上は仕方ないだろう。それにお前なら知っているだろう。俺の邪魔をするヤツは誰であれ殺す。たとえブルー、お前でもだ」
「……知っているわよ」

「悪いが、今回だけは手を引いてくれないか?まあ最終通告にはなっちまうが」
「……私はアサシンなの、アンタと違ってね。今ここで頷く事なんて出来ないわ。まあ仮にターゲットに逃げられてしまったとしたら別だけど」



 そう言ってブルーは後ろを向いた。どうやら言質はやれないとしても、この場は逃がしてくれるらしい。レッドはナーダの手を取る。


「ナーダ…行くぞ」
「……良いの?」
「良いも悪いも無い」



 レッドとナーダは暗闇に消えて行った。



「……」
「ブルー、敗れた様だな」
「バダグ、いつから居たの?」


 いつの間にかブルーの横にバダグが立っていた。


「ついさっきだよ。心配で見に来たんだ」
「私までもが裏切らないかどうかを?」
「その心配はしていない」
「そう……」

「レッド、今回は私の負けね。でも次はこうはいかないわ」







 一旦は、レッドの家に戻った。何だかんだ、ブルーが今日再来する事は無いだろう。証拠は無いがそう思った。


「さて……今日はここで休むとして、明日からどうするか?」
「レシア、ごめんね。私のせいで……」
「ナーダが謝る事じゃない。俺の方こそ、アサシンをやっていたせいでナーダを危険な目に合わせてしまった」
「それこそレシアが謝る事じゃないよ」


 これで村の手がかりを得る方法は無くなってしまった。アサシンを襲撃して情報を吐かせるのも非現実だろう。いっその事、仇のアサシンを見付ける様にバダグに依頼を出してしまうか?

 いや、危険だろう。もし仇が要人だった場合、俺は騙されて殺されてしまう可能性がある。一瞬でもナーダを見殺しにしようと考えた自分の浅はかさに腹が立つ。



「そうだ。ハンターに匿ってもらうのはどう?」
「いや、俺はレッド・アサシンだ。今更アサシン辞めましたって言って、誰が信じる? もし信じたとしても俺がハンターを多数殺して来た事は事実だ。誰もが俺をレッド・アサシンとしてしか見ない」


 もしかしたら最初から間違えていたのかもしれない。仮に俺がアサシンではなくハンターに行っていたら……また違う展開が待っていたのかもしれない。



 でもこれは物語じゃない。現実なんだ。過ぎた時間は巻き戻す事は出来ない。



「シヴァさんなら助けてくれるんじゃないかな? あの時だってレシアにアサシンを辞める様に言っていたし」
「シヴァか……ハンターのトップなら出来る事もあるかもしれないな。アサシンとハンターの両方に狙われるよりかは良いのかもしれない」


 結果としてアサシンを辞める事になったのは都合が良いだろう。例え一部であってもハンターから狙われる可能性が減るのであれば、言う事は無い。



 その日はゆっくり休んだ。何だかんだ、色々あった。疲れも溜まっているし、意外と休めるものだった。






 次の日からハンター本部へ向かって移動を開始した。ハンター本部は徒歩で3日……いや、ナーダが居るから5日は掛かるだろう。

 現状として、ハンターからすればレッドはまだアサシンだ。いつ襲われるかもしれないと気を張っていたが、別段事件も無く日は過ぎて行った。

 そして5日後、やっとハンター本部のある町まで辿り着いた。流石に夜になっていた為、この日は宿に泊まろうとし宿屋を探す。



「ここがハンター本部かな?」
「ああ、入り口にハンターの紋章が飾ってある。間違いなくハンター本部だ。って、本部には来た事がなかったのか?」
「うん。私が行ったのはあの町のハンター支部だけよ」
「そうか……ん?」


 何やら気配を感じた。複数人の人の気配だ。


「ナーダ、こっちに隠れろ」
「え、どうしたの?」
「何者かがこっちに向かって来ている。喋るな」
「……(コクン)」


 明らかに足音を殺してやって来ている。これはおかしい。



 暫く様子を伺っていると、隠れた反対方向から数名の男達が現れた。その内の1人は良く見知った顔だった。


(バダグだと? アイツがここに来るなんて……他の奴もアサシンだな。つまりこれは……)




 2人のアサシンが表へ出る。


「ん、何だお前達は?」
「死んで貰おう」
「まさか、アサシンか!?」
「ハンター本部に攻め入って来るなんて良い度胸だな」
「お前には関係の無い事だ」

「ここは通さないぞ!」
「通さない、は通らないぞ」
「えっ?」



 2人のアサシンに気を向けていたハンターは後ろから来たバダグになす術も無く殺される。もう1人のハンターもそれに気を取られている内に他のアサシンに切られていた。


「よし、この中にシヴァが居るハズだ。総員全力で当たれ」
「おおっ!」



 バダグと他の4人のアサシンは、ハンター本部の中に入っていった。





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登場人物紹介

【レッド】

腕利きのアサシン。

とある目的の為にアサシンとなった彼は、その手を血に染めていく。

序盤はダガーを使用し、闇属性の魔法も使用可能。

【ブルー】

レッドの相棒であるアサシン。

金が好きで基本的に冷めた性格である。

どういった経緯でアサシンになったかは不明。

ダガーを使用し、風属性と水属性の魔法も使用可能。

【バダグ】

アサシン本部の部長。

普段はラフな喋り方だが、実力はアサシンでも最強クラス。

セスタスを装着し、格闘術を得意とする。

【ナーダ】

レッドの幼馴染。

とある場所で再会する。

杖を装備しており、光属性と回復の魔法が使用可能。

【シヴァ】

ハンター本部の部長。

エルフであり、魔力が高い。

長剣を使用し、無属性の魔法を使用可能。

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