横話C 約束

文字数 2,330文字

※この横話Cは「33話」終了時点の状態でのエピローグです。33話まで読んでいない方は、先にそちらまで本編を読んで頂く事を強くお勧めします。







横話C

約束







 あの日から3か月が経った。

 ナーダの仇を討った日。

 レッド・アサシンが死んでレシアが蘇った日。

 もう人を殺めないと心に誓った日。


 村に戻ったレシアは皆の墓を建てて、作物を育て狩りをし1人で暮らしていた。アサシン時代に稼いだ金で村の入り口付近に小さな家を建てた。他の潰れた家や実家はそのままだ。流石にそれを何とか出来る程の金は無かった。


「何かあっと言う間に過ぎて行った3か月だったな。……今頃ゴットルから連絡が来るるなんてな」


 村の名前は言ってあった。ハンターなら俺を探し出す事も難しくは無いだろう。


「約束を今こそ果たす、か。まあ予想はつく。村の供養も済んだし実際やる事も無い。まあ行ってやろうじゃないか」





 久し振りに町へ来た。相変わらず町は賑やかだった。


「町の中心部から少し離れた所だな。歩いて30分ほどか」


 暫く歩いていると、路地から声が聞こえた。


「おい、レッドじゃないか。お前生きてたのか」
「ん……? あ、お前は鍛冶ケッツか?」
「おうよ、久し振りじゃないか」


 コイツはケッツ。俺より少し前に辞めた元アサシンだ。元々鍛冶をするのが大好きで、アサシンを辞めて鍛冶屋になったって噂を聞いた事はあった。面識は数えるほどしか無かったが。


「お前どうしたんだ、こんな所で?」
「ここは俺が出している鍛冶屋だ」
「へえ……何か小さいな」
「放っとけ。しかしよく無事だったな。3か月前にハンターのアサシン一掃作戦があっただろ。お前は何とも無いのか?」

「俺はもうアサシンじゃないんだ」
「辞めたのか。ハンターに降伏したのか?」
「いや、あの一掃事件の前には辞めてたよ」
「へえ……お前も人を殺すのに嫌気がさしてきたって感じか?」
「……まあ、そんな所かな」

「じゃあ、今ならお前の名前を聞いても良いかい? 俺の本名はニックスだ」
「俺はレシアだ」
「何だ、レ繋がりか?」
「たまたまだ」


「しかし……レシア、お前何か思い詰めていないか?」
「え?」
「顔……ってか表情かな? 前から時々変な表情をしてたけどさ。なんか戦地に向かう兵士みたいな顔してるぞ」
「気のせいだよ」

「そうか? ……分かった。せっかくの再会だ。俺がお前の剣を鍛冶してやる」
「はい?」
「そのガンブレード壊れてるじゃないか。貸してみろ。……って、そこに持ってるのはルーン鉱石じゃないか。しかも上物っぽいな」
「俺の村の特産品だ」


 これは……村の採掘場の奥で拾った高純度ルーンだったな。ゴーストに襲われた時の。


「じゃあ使っても良いだろ。ほれっ!」
「うわ、勝手に……って!?」


 ニックスは魔法を活用しながら凄い勢いで剣を修復していった。こいつの鍛冶魔法は噂には聞いていたが……大した物だ。


「ほれ、出来た」
「え、もう出来たのか?」
「錬金と鍛冶は得意なんだ。銃の部分を直してやったぜ。魔力をここに注入すればトリガーを引いた時に超振動する。その瞬間に斬るんだ。あと、ここに魔力を込めればここから気弾を発射できるぜ。他にも全体的にルーンコーティングしといたから耐久性も威力も上がってる」
「ああ……どうも」

「勝手にやった事だから金はいいぜ。いや~あまりに良い鉱石だったからテンション上がってな」
「こいつ……」
「どうだ? 今から再会を祝して乾杯しないか?」
「いや……今からちょっと用事があるんだ。また今度な」
「そうか。じゃあまたな。……あまり気負い過ぎるなよ」
「ああ」
「武器は殺す為だけの道具じゃ無いんだからな」
「ああ、有難う」



 色々勝手にされてしまった……






 約束の場所はちょっとした広場だった。そこにゴットルとラベンダーが居た。


「待たせたな」
「いや、構わない」


 ゴットルは剣を構える。


「レッド、約束は覚えているか?」
「ああ」
「スウァムの名に懸けて、ゴットルが貴方を討ちます」
「ゴットルだけなのか?」

「ラベンダーには見届け人になって貰う」
「この3か月でゴットルは強くなったわ。でもレッド、貴方にはまだ敵わないでしょう」
「なのにどうして1人なんだ?」

「この戦いがただの決闘だったって言う証人が必要だからだ。決闘と証明できればお前は人殺しとして捕まらずに済む。……それにラベンダーには死んで欲しくないしな」
「……」
「行くぞ!」




 勝負は一瞬だった。ゴットルの攻撃をかわしたレシアは剣の柄でゴットルを突いた後、シャドウで吹っ飛ばした。ふらついて起き上がれないゴットルに剣を向ける。


「終わりだ。別に殺されてやっても良かったんだが、お前はそれで納得はしないだろう」
「ぐ……こうも簡単に倒されるなんて……止めを刺すんだな」

「馬鹿野郎! お前達が俺を憎むのは分かる。忘れもしない。でもお前がここで死んだらラベンダーはどうなる。愛する家族が2人も死んでしまうんだぞ。残された家族の悲しみを考えて見ろ!」
「……そうよ。ゴットルまで死んじゃったら、私どうすれば良いか……ごめん。言い出せなかった私の所為ね」
「ラベンダー……」


 レシアは剣を仕舞い、後ろを向く。


「俺は生きて行く。だからお前も腐らずに修行して強くなれ。何時でも相手をしてやる。それに今の俺はレシアなんだ。もうレッド・アサシンは居ない」


 目の前が歪む。光が差し込んで来る。


「……レッド?」
「それがお前を殺さない……もう1つの……りゆ……う……」



 光が完全にレシアを包み、横話の間が閉じた。





「ゴットル、ラベンダー……済まなかったな。また会いたいもんだ……ってのは勝手な言い分かな?」


 次に会った時、2人はまたレシアの敵だろう。ただレッド・アサシンに父親を殺されただけの……





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登場人物紹介

【レッド】

腕利きのアサシン。

とある目的の為にアサシンとなった彼は、その手を血に染めていく。

序盤はダガーを使用し、闇属性の魔法も使用可能。

【ブルー】

レッドの相棒であるアサシン。

金が好きで基本的に冷めた性格である。

どういった経緯でアサシンになったかは不明。

ダガーを使用し、風属性と水属性の魔法も使用可能。

【バダグ】

アサシン本部の部長。

普段はラフな喋り方だが、実力はアサシンでも最強クラス。

セスタスを装着し、格闘術を得意とする。

【ナーダ】

レッドの幼馴染。

とある場所で再会する。

杖を装備しており、光属性と回復の魔法が使用可能。

【シヴァ】

ハンター本部の部長。

エルフであり、魔力が高い。

長剣を使用し、無属性の魔法を使用可能。

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