第22話

文字数 1,921文字

 山に入り、先へ進んでいく。整備された道なのでそれほど大変ではなさそうだ。休み休み行けばナーダでも問題なく行けるだろう。


「……しかし、何だかんだで山を越えるんだもんな。面倒だな」
「何言ってるの。張り切って行こうよ」
「元気だな」



 道中で何回か魔物が襲ってきたが、そんなに強い魔物は居ず問題なく倒せる。良くは分からないが、魔力による封印がなされているらしい。その為、外から魔物は入って来れずに元々生息している弱い魔物が居るだけらしい。


「しかし、ナーダのライトは本当に弱いな」
「仕方ないよ。発動出来るまでは習ったけど、実践なんて無かったんだし」
「俺のシャドウの方がよっぽどいけるぜ」
「ヒールが使えるから良いでしょ」



 山を一旦下って行った辺りで、洞窟に入った。ここもきちんと整備されており、弱い魔物や蝙蝠などの動物しか出現しない。ただ、階段が多く面倒なだけだ。



「よし、もうちょっとで洞窟も抜けそうだな。行くぞ」
「はあはあ……元気ね」




 洞窟を抜けた先には自然溢れる光景が広がっていた。吹き抜ける風が心地良い。


「やっと地上に出たね。ん~風が気持ち良い」
「洞窟って言っても地下に居た訳じゃないけどな。さて、ここまで来ればもう道は分かる。あと30分も歩けば村に到着するぞ」
「まだ30分もあるの?」
「ちょっと休むか?」
「……ううん、大丈夫」




 村が近付くにつれて、何とも言えない感情が沸き起こって来る。あの事件が夢だったら良いのに。普通に両親が出迎えてくれるんじゃないか。

 しかし当たり前だが、見えてきた光景は現実を映していた。



「……3年振りか。相変わらず酷いな」
「……うん」


 レシアの家も完全に潰れていて、正確な位置すらも判別できない程だった。


「ナーダはあの時、何処に居たんだ?」
「教会の裏に地下の食糧庫があったでしょ? あそこに匿われていたの」
「ああ、あそこか。」


 村の東側にはナーダの家を含む何軒かの家と、小さな教会があった。教会の裏には一見分からない地下への階段があり、その先には非常用の食糧庫があるのだ。


「あ、ここよ」
「ああ、しかしここも酷い有様だな。ほとんど原形が残っていない」


 食糧庫の中はアサシン襲撃の影響は無かったが、時間の経過で古くなっていた。食料も残っていたが、流石に食べれそうに無い。



「う~ん。来てみたは良いけど、どうしようか」
「敵の狙いは高純度のルーン鉱石だったと思う。取り敢えず、ルーン発掘場の入り口を探そう」
「発掘場……村の西側だよね」
「そうだな。でも俺は狩人だったから、詳しい場所までは分からないな」


 村の西側は広い広場になっており、どこかにあるルーン採掘場の入り口も普段は隠されている。見る限り、採掘場の入り口は開いていなかった。


「何処かに入り口があるはずだけど……分からないな。もしかしたら発見されていないのかもしれない」
「取り敢えず、入り口を探してみようよ」
「そうだな」



 暫く地面を探していると、奥の方で階段を発見した。



「あったな。行ってみるか?」
「……うん」



 中に入る。入口のスイッチを入れると電気が走り、次々と松明に明かりが灯っていった。大きな蓄電器を使用していたせいなのか、まだ電気が残っていた。


「スイッチを入れた時だけ電気を使用するってのも関係あるのかな?」
「どういう事?」
「スイッチを入れた瞬間にこの線を電気が走るんだ。それで松明に明かりを点けるんだ」
「あ~、だから最初だけ電気を使えば良いんだ」



 ふと、何かの気配を感じた。振り向くと、ゴーストが2体こっちに向かって来ている。


「ゴースト!? こんな所に何でいるんだ?」
「魔物なの?」
「そうだ。霊系の魔物だ。こいつ等には攻撃が通りにくい」


 動き自体は遅いが、物理攻撃は通らない……と本で読んだ。実際に剣で斬り掛かるも、手応えがまるで無かった。


「逃げるか……奥へ行くぞ。」
「え、逃げれるの? 追いかけてきたらどうするの?」
「その時は魔法で吹っ飛ばす。魔法攻撃なら通用するはずだからな。でも逃げれるなら逃げるぞ。下手に魔法をぶっ放して、この採掘場が崩れてはマズいからな」
「わ、分かった」



 逃げながらも周りを観察する。荒らされた形跡は見当たらない。やっぱり、敵はこの採掘場には来ていないのだろうか。



「ここは……最奥だな」
「レシア、あれを見て」


 奥には祭壇があり、その上に一粒の大きな鉱石があった。


「これはルーン鉱石。しかも見た事が無い位に高純度のルーンだ」
「これが高純度なの?」
「ああ、見てみろ。輝きときめ細やかさが違う」
「……よく分からないよ」


 レシアはルーンを拾い上げる。片手にギリギリ収まる大きさだ。


「これは凄いな……加工したら良い武器が出来そうだな。貰っておくか」






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登場人物紹介

【レッド】

腕利きのアサシン。

とある目的の為にアサシンとなった彼は、その手を血に染めていく。

序盤はダガーを使用し、闇属性の魔法も使用可能。

【ブルー】

レッドの相棒であるアサシン。

金が好きで基本的に冷めた性格である。

どういった経緯でアサシンになったかは不明。

ダガーを使用し、風属性と水属性の魔法も使用可能。

【バダグ】

アサシン本部の部長。

普段はラフな喋り方だが、実力はアサシンでも最強クラス。

セスタスを装着し、格闘術を得意とする。

【ナーダ】

レッドの幼馴染。

とある場所で再会する。

杖を装備しており、光属性と回復の魔法が使用可能。

【シヴァ】

ハンター本部の部長。

エルフであり、魔力が高い。

長剣を使用し、無属性の魔法を使用可能。

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