横話D 葛藤
文字数 1,811文字
※この横話Dは「43話」時点の状態でのお話です。43話まで読んでいない方は、先にそちらまで本編を読んで頂く事を強くお勧めします。
横話D
葛藤
レシアを迎え撃つ為に地下通路へ向かったアサシン。バダグはブルーを呼び止めた。
「それで、話って何?」
「クラスタは確かに優秀なアサシンだった。だが、アイツは正面切って戦う事は本来しない」
「確かにそうね。今回は珍しいのかも」
「普通に戦った場合、やはりレッドの方に分がある」
「どうなのかしら。でも最近、今まで以上に強くなって来ているイメージはあるかもしれないけどね」
「うむ。スウァム辺りからのレッドの成長には目を見張るものがある」
「じゃあクラスタはどうしてもレッドに勝てないと?」
「俺の個人的な予想では、ほぼ100%レッドの勝ちだろう」
「ブラックは上手く逃がせたわよ」
バダグは椅子に凭れ掛かる。
「その様だな。ブラックのロックを誰かに依頼しておく」
「はあ……そう言うと思ったわ」
「では本題へ入る」
「レッドの迎撃を私に……って事でしょ? こう言うのも何だけど、私ではレッドに勝てないわよ」
「お前の言う通り、レッドはここまで辿り着く事になるだろう。しかも俺の意識はもう半分以上、ダークの支配下にある。現に、魔物の召喚を止められずに居る」
「……」
「もう俺は自分の身体を制御できていないんだ」
「もしかして私にレッドを導けと?」
「そこまでは言わないが……だが、俺達が今まで護って来た事だけは貫かねばならない」
「ダークの正体ね?」
「そうだ。俺はあの人を救って見せる。だが、もしそれが叶わぬ場合でも少しでもレッドに発見されるのを遅らせなければならない」
「バダグ……アンタの命を賭けてまで守る相手なの?」
「ふっ、そうで無くては此処まで出来ていないだろう」
「……そう」
「もし俺が死んでお前が生き残る事があれば、お前にアサシン本部長になって貰う。お前は何の洗礼も受けていない。ダークを抑えておくだけであれば、そんなに難しくも無いだろう」
「まあ、私が先にレッドに殺される可能性の方が高いけどね」
「その時は俺がダークだとレッドに名乗り出る。幸い、あの村の事件の事は分かっている」
「ルーン村の事件は私も知っているけど……」
「ああ。だからこそお前に、俺の意思を継いで欲しいんだ」
暫くの沈黙。ブルーは後ろを向いて歩き出した。
「ブルー」
「別に私がレッドを殺せばそれで良いだけ」
「……」
「もうすぐレッドが来るんでしょ? 行くわ」
「……ああ」
隠し通路に入る。他のアサシン3人も来ている。
「アンタ達は先のフロアで待機しなさい。私はこのフロアで待機するわ。もしレッドを殺せるなら殺して構わない。何も聞き出す事も無いし、遠慮はいらない。との事よ」
「分かりました、では」
アサシンは先へ進んでいく。ブルーは1人、フロアの壁に凭れ掛かる。
「……さて、私でレッドに勝てるかしら。だいぶ分の悪い賭けになるわね」
ルーン村の事件を思い出す。凄惨な事件だった。村に火を点けたのはブルー・バダグを含むアサシン。それは間違いない。そしてレッドにとって真の仇であるダーク。いや、この時点ではダーク・アサシンなんて名称の者は居なかった。ダークとは誰かが犯人を探し出そうとした時の為のフェイクなのだ。
事件の前からバダグを見て来た。バダグの苦労もよく分かっている。現状が良くない事は理解出来ているが、だからと言ってどうする事も出来ない。残念ながら、バダグを開放する為に彼を殺す……なんて考えは浮かばない。
レッドなら何か出来るのだろうか? 最近のレッドは不思議な雰囲気を醸し出している。
1番高い可能性は、ここでレッドに殺されてしまう事だろう。ブルーはレッドはおろか、クラスタにも及ばない。もしレッドがここに来るというのであれば、クラスタに勝っているという事なのだ。
「……ちょっと答えは見付からないな」
ブルーが1人で苦笑いをしている時に、ドアが開いた。
「……何でお前が?」
本当に来た……ナーダも居る。犠牲無くクラスタに勝利したのね。
「あら、レッド。本当にクラスタに勝ったのね」
そう言ってダガーを出して歩き出す。命を賭けた戦いが始まるのだ。
横話の間が閉じる。
「何なんだ……この記憶は? そんな覚悟で来てたんだな。村に火を点けたのはブルーやバダグ達で、真に仇なのはダーク? 意味が分からない。しかもバダグはダークでは無かったのか? あの野郎……」
横話D
葛藤
レシアを迎え撃つ為に地下通路へ向かったアサシン。バダグはブルーを呼び止めた。
「それで、話って何?」
「クラスタは確かに優秀なアサシンだった。だが、アイツは正面切って戦う事は本来しない」
「確かにそうね。今回は珍しいのかも」
「普通に戦った場合、やはりレッドの方に分がある」
「どうなのかしら。でも最近、今まで以上に強くなって来ているイメージはあるかもしれないけどね」
「うむ。スウァム辺りからのレッドの成長には目を見張るものがある」
「じゃあクラスタはどうしてもレッドに勝てないと?」
「俺の個人的な予想では、ほぼ100%レッドの勝ちだろう」
「ブラックは上手く逃がせたわよ」
バダグは椅子に凭れ掛かる。
「その様だな。ブラックのロックを誰かに依頼しておく」
「はあ……そう言うと思ったわ」
「では本題へ入る」
「レッドの迎撃を私に……って事でしょ? こう言うのも何だけど、私ではレッドに勝てないわよ」
「お前の言う通り、レッドはここまで辿り着く事になるだろう。しかも俺の意識はもう半分以上、ダークの支配下にある。現に、魔物の召喚を止められずに居る」
「……」
「もう俺は自分の身体を制御できていないんだ」
「もしかして私にレッドを導けと?」
「そこまでは言わないが……だが、俺達が今まで護って来た事だけは貫かねばならない」
「ダークの正体ね?」
「そうだ。俺はあの人を救って見せる。だが、もしそれが叶わぬ場合でも少しでもレッドに発見されるのを遅らせなければならない」
「バダグ……アンタの命を賭けてまで守る相手なの?」
「ふっ、そうで無くては此処まで出来ていないだろう」
「……そう」
「もし俺が死んでお前が生き残る事があれば、お前にアサシン本部長になって貰う。お前は何の洗礼も受けていない。ダークを抑えておくだけであれば、そんなに難しくも無いだろう」
「まあ、私が先にレッドに殺される可能性の方が高いけどね」
「その時は俺がダークだとレッドに名乗り出る。幸い、あの村の事件の事は分かっている」
「ルーン村の事件は私も知っているけど……」
「ああ。だからこそお前に、俺の意思を継いで欲しいんだ」
暫くの沈黙。ブルーは後ろを向いて歩き出した。
「ブルー」
「別に私がレッドを殺せばそれで良いだけ」
「……」
「もうすぐレッドが来るんでしょ? 行くわ」
「……ああ」
隠し通路に入る。他のアサシン3人も来ている。
「アンタ達は先のフロアで待機しなさい。私はこのフロアで待機するわ。もしレッドを殺せるなら殺して構わない。何も聞き出す事も無いし、遠慮はいらない。との事よ」
「分かりました、では」
アサシンは先へ進んでいく。ブルーは1人、フロアの壁に凭れ掛かる。
「……さて、私でレッドに勝てるかしら。だいぶ分の悪い賭けになるわね」
ルーン村の事件を思い出す。凄惨な事件だった。村に火を点けたのはブルー・バダグを含むアサシン。それは間違いない。そしてレッドにとって真の仇であるダーク。いや、この時点ではダーク・アサシンなんて名称の者は居なかった。ダークとは誰かが犯人を探し出そうとした時の為のフェイクなのだ。
事件の前からバダグを見て来た。バダグの苦労もよく分かっている。現状が良くない事は理解出来ているが、だからと言ってどうする事も出来ない。残念ながら、バダグを開放する為に彼を殺す……なんて考えは浮かばない。
レッドなら何か出来るのだろうか? 最近のレッドは不思議な雰囲気を醸し出している。
1番高い可能性は、ここでレッドに殺されてしまう事だろう。ブルーはレッドはおろか、クラスタにも及ばない。もしレッドがここに来るというのであれば、クラスタに勝っているという事なのだ。
「……ちょっと答えは見付からないな」
ブルーが1人で苦笑いをしている時に、ドアが開いた。
「……何でお前が?」
本当に来た……ナーダも居る。犠牲無くクラスタに勝利したのね。
「あら、レッド。本当にクラスタに勝ったのね」
そう言ってダガーを出して歩き出す。命を賭けた戦いが始まるのだ。
横話の間が閉じる。
「何なんだ……この記憶は? そんな覚悟で来てたんだな。村に火を点けたのはブルーやバダグ達で、真に仇なのはダーク? 意味が分からない。しかもバダグはダークでは無かったのか? あの野郎……」