第25話
文字数 2,151文字
レシアはアサシン本部に来ていた。まだそんなに経っていないのに、懐かしく感じてしまう。
「ブルーが死んだ事を知られると、敵の守りも硬くなる。敵が油断している今がチャンスだ」
本部の裏側にアサシンしか知らない裏口がある。魔力で偽装されている為、パッと見は分からないがここを通っていくと仮眠室へ行ける。そこからバダグの居る本部長室まではすぐだ。
「しかし……いつもより人が少ない気がするな。普段ならもう少し居るハズなんだが。大掛かりなロックにでも出払っているんだろうか?」
裏口から仮眠室への通路に人気は無く、レシアの足音だけが響いた。そのまま仮眠室への入り口に入る。
「……微妙に人の気配はする。でも寝ているのか?」
音をなるべく立てずに仮眠室へ入る。寝息の様な音が静かに立っていた。仮眠室の入り口に向かうと、ちょうどアサシンと鉢合わせになってしまった。
「……!」
「うわっ、ビックリした。なんだレッドさんじゃないですか。仮眠してたんですか?」
どうやら俺の事はアサシンには広まっていない様だ。もちろん、コイツがたまたま知らないだけの可能性もある。と言うか、コイツ誰だ?
「俺を知っているのか?」
「そりゃ知ってますよ。レッドさんはアサシンでも有名です。知らない奴なんて居ないでしょう」
「そうか」
恐らくは普通の一般アサシンだ。俺の事は一部のアサシンしか知らないのだろう。一瞬、緊張が和らいだ。しかし、これから行くのはバダグの所だ。気を引き締め直さないと。
本部長室へ向かう途中にも何人かのアサシンとすれ違ったが、特に変わった事は起きなかった。何事も無く目的の部屋に到着してしまった。
「……気配は無い。もしかして外出中なのか?」
静かにドアを開ける。やはり誰の気配も感じない。程よい広さの待合室みたいな空間があり、奥はバダグの部屋。手前の床に設置されたドアはゴミ箱だ。まあ、ただのゴミではなく襲撃者という名のゴミを落とす為のドアだが。
「地下迷宮へ落とす為の場所だったっけ? 俺も行った事は無いけど、誰も出られた事は無いらしいからな」
バダグの部屋に入る。普段から誰でも入れる場所だ。中には誰も居ない。
「……やはり無人か。どうしたもんか。」
唐突に後ろに感じる殺気。
「!」
「よお、レッドじゃないか」
振り向くとバダグが戻って来た所だった。
「勇気があると言うか、不用心だぞ。道すがら、お前の目撃情報が沢山出てきたぜ。レッドが本部長室へ入っていったってな」
「俺が何で来たか分かるな?」
「予想は出来るよ」
「何処に行ってた?」
「お前には関係の無い事だ」
「まあそうか。このまま留守だったらどうしようかと思ったぞ」
「ブルーを殺したのか?」
「正当防衛ってヤツだ。お前だって本気でブルーが俺に勝てるとは思っていないだろう」
「……レッド、お前!」
「ああ、分かるよ。仲間を殺された怒りや恨みってのは。こっちだってナーダを殺されたんだ!」
「ならばお前も殺されても文句は無いんだな」
「そもそも殺されたら文句すら言えんだろう。まあお前にも言える事だがな」
レシアは剣を構える。バダグも拳を構えた。セスタスはもう装着されている。
「もはや語る事も無いだろう。地獄へ落ちるんだな、レッド」
「お前がな、バダグ」
レシアは剣を振るったが、案の定セスタスで受けられてしまう。バダグの蹴りを何とかかわしながら距離を離す。
「レッド、今回は邪魔者も居ない。助けは無いぞ」
「関係ない」
今度はバダグが攻撃を仕掛けてきた。早くて剣でガードするのが精一杯だ。
「早いし重いし……流石はバダグだな」
「お前とは経験値が違い過ぎるからな」
レシアは剣を薙ぎ払うが、バダグに避けられてしまう。そのまま回転し、下段に薙ぎ払いを行う。セスタスを装着した拳以外の場所なら、剣撃を止める事は出来ない。バダグはそれもかわす。
「かわす事は出来るわな、そりゃ」
「ダガーに比べると僅かにスピードが落ちているぞ」
「そりゃどうも、シャドウ!」
闇属性の魔法を放つと、バダグはそれを殴り飛ばした。
「今だ!」
その隙に近付く。斬るよりも早く出せる突きで攻めるが、もう片方の拳で突きを弾かれた。
「そんなものか、レッド・アサシンの実力は?」
「もうレッドじゃないんだって」
バダグが気合を入れて蹴りを出して来た。流石に格闘技の受けなんかは練習していない。太ももに直撃し、動きが止まってしまう。その流れでバダグは拳を出して来た。ギリギリ剣でガードするも、剣が手から離れて飛んで行ってしまう。
「し、しまった」
慌てて剣を拾いに行く。剣が落ちた場所は地下迷宮のドアの上だった。ドアが開いていたら落ちてしまっていた所だ。
「甘い!」
剣を拾おうとした瞬間に凄まじい殺気を感じた。バダグが攻撃をしてきていたのだ。それをかわすと、バダグの拳は床……地下迷宮のドアに当たり、ドアに亀裂が入る。
「くっ、剣を拾う暇が無い……どうすれば」
「どうしようもしなくて良い!」
更にバダグは攻撃してきた。拳はレシアの腹部を直撃する。その勢いでドアが壊れて、レシアはそのまま地下へ落ちて行ってしまった。
「……落ちたか。ダメージもある。もう助かるまい」
長い距離を滑り落ち、地下のフロアに身体を打ち付ける。レシアの意識はそのまま薄れて行った。
「ブルーが死んだ事を知られると、敵の守りも硬くなる。敵が油断している今がチャンスだ」
本部の裏側にアサシンしか知らない裏口がある。魔力で偽装されている為、パッと見は分からないがここを通っていくと仮眠室へ行ける。そこからバダグの居る本部長室まではすぐだ。
「しかし……いつもより人が少ない気がするな。普段ならもう少し居るハズなんだが。大掛かりなロックにでも出払っているんだろうか?」
裏口から仮眠室への通路に人気は無く、レシアの足音だけが響いた。そのまま仮眠室への入り口に入る。
「……微妙に人の気配はする。でも寝ているのか?」
音をなるべく立てずに仮眠室へ入る。寝息の様な音が静かに立っていた。仮眠室の入り口に向かうと、ちょうどアサシンと鉢合わせになってしまった。
「……!」
「うわっ、ビックリした。なんだレッドさんじゃないですか。仮眠してたんですか?」
どうやら俺の事はアサシンには広まっていない様だ。もちろん、コイツがたまたま知らないだけの可能性もある。と言うか、コイツ誰だ?
「俺を知っているのか?」
「そりゃ知ってますよ。レッドさんはアサシンでも有名です。知らない奴なんて居ないでしょう」
「そうか」
恐らくは普通の一般アサシンだ。俺の事は一部のアサシンしか知らないのだろう。一瞬、緊張が和らいだ。しかし、これから行くのはバダグの所だ。気を引き締め直さないと。
本部長室へ向かう途中にも何人かのアサシンとすれ違ったが、特に変わった事は起きなかった。何事も無く目的の部屋に到着してしまった。
「……気配は無い。もしかして外出中なのか?」
静かにドアを開ける。やはり誰の気配も感じない。程よい広さの待合室みたいな空間があり、奥はバダグの部屋。手前の床に設置されたドアはゴミ箱だ。まあ、ただのゴミではなく襲撃者という名のゴミを落とす為のドアだが。
「地下迷宮へ落とす為の場所だったっけ? 俺も行った事は無いけど、誰も出られた事は無いらしいからな」
バダグの部屋に入る。普段から誰でも入れる場所だ。中には誰も居ない。
「……やはり無人か。どうしたもんか。」
唐突に後ろに感じる殺気。
「!」
「よお、レッドじゃないか」
振り向くとバダグが戻って来た所だった。
「勇気があると言うか、不用心だぞ。道すがら、お前の目撃情報が沢山出てきたぜ。レッドが本部長室へ入っていったってな」
「俺が何で来たか分かるな?」
「予想は出来るよ」
「何処に行ってた?」
「お前には関係の無い事だ」
「まあそうか。このまま留守だったらどうしようかと思ったぞ」
「ブルーを殺したのか?」
「正当防衛ってヤツだ。お前だって本気でブルーが俺に勝てるとは思っていないだろう」
「……レッド、お前!」
「ああ、分かるよ。仲間を殺された怒りや恨みってのは。こっちだってナーダを殺されたんだ!」
「ならばお前も殺されても文句は無いんだな」
「そもそも殺されたら文句すら言えんだろう。まあお前にも言える事だがな」
レシアは剣を構える。バダグも拳を構えた。セスタスはもう装着されている。
「もはや語る事も無いだろう。地獄へ落ちるんだな、レッド」
「お前がな、バダグ」
レシアは剣を振るったが、案の定セスタスで受けられてしまう。バダグの蹴りを何とかかわしながら距離を離す。
「レッド、今回は邪魔者も居ない。助けは無いぞ」
「関係ない」
今度はバダグが攻撃を仕掛けてきた。早くて剣でガードするのが精一杯だ。
「早いし重いし……流石はバダグだな」
「お前とは経験値が違い過ぎるからな」
レシアは剣を薙ぎ払うが、バダグに避けられてしまう。そのまま回転し、下段に薙ぎ払いを行う。セスタスを装着した拳以外の場所なら、剣撃を止める事は出来ない。バダグはそれもかわす。
「かわす事は出来るわな、そりゃ」
「ダガーに比べると僅かにスピードが落ちているぞ」
「そりゃどうも、シャドウ!」
闇属性の魔法を放つと、バダグはそれを殴り飛ばした。
「今だ!」
その隙に近付く。斬るよりも早く出せる突きで攻めるが、もう片方の拳で突きを弾かれた。
「そんなものか、レッド・アサシンの実力は?」
「もうレッドじゃないんだって」
バダグが気合を入れて蹴りを出して来た。流石に格闘技の受けなんかは練習していない。太ももに直撃し、動きが止まってしまう。その流れでバダグは拳を出して来た。ギリギリ剣でガードするも、剣が手から離れて飛んで行ってしまう。
「し、しまった」
慌てて剣を拾いに行く。剣が落ちた場所は地下迷宮のドアの上だった。ドアが開いていたら落ちてしまっていた所だ。
「甘い!」
剣を拾おうとした瞬間に凄まじい殺気を感じた。バダグが攻撃をしてきていたのだ。それをかわすと、バダグの拳は床……地下迷宮のドアに当たり、ドアに亀裂が入る。
「くっ、剣を拾う暇が無い……どうすれば」
「どうしようもしなくて良い!」
更にバダグは攻撃してきた。拳はレシアの腹部を直撃する。その勢いでドアが壊れて、レシアはそのまま地下へ落ちて行ってしまった。
「……落ちたか。ダメージもある。もう助かるまい」
長い距離を滑り落ち、地下のフロアに身体を打ち付ける。レシアの意識はそのまま薄れて行った。