第33話
文字数 1,977文字
「ぐ……まさか」
「はあはあ…バダグ、貰ったよ」
「気が付いていたのか……」
「バダグ。悪いな、時間稼ぎをした」
「レ、レッド……」
「ナーダの仇、確かに取ったぞ」
「ふ……流石だな。上手い事チームプレーにやられたよ」
「村の事に付いて聞きたいんだが……もう無理そうだな」
「く……これだけは言っておいてやる。ルーン村の仇は……俺では無い」
「……! それはどういう事だ」
「そこまでは言えないな。俺は……犯人を庇って……いる」
そのままバダグは息を引き取った。1番肝心な所は聞けなかったが……
いつの間にかゴットルも起き上がっていた。ラベンダーに事情を聞いている。
「……終わったな」
「ああ、2人のお陰だ。ありがとう」
「皆でやれる事をやっただけよ」
「さて……約束だ。俺は何も抵抗しない。お前達の好きにするんだ」
「……俺は情けで親父の仇を討つつもりは無い」
「え?」
「今の貴方はボロボロよ。そんな状態の貴方を討つ事は父の意思にも反するわ」
「さあ、さっさと何処にでも行ってしまえ」
「お前達……」
「別に貴方を許した訳じゃ無いわ。何れ、スウァムの名に懸けて貴方を討ちに行くわ」
「でも俺はナーダを……村のたった1人の生き残りすら守れなかった。ナーダの仇を討った今、する事なんて……」
「村の仇を討つんだろ。お前が言っていた事だぜ」
「…………」
そのすぐ後、ハンターによるアサシン一掃作戦が始まった。俺達の前にも沢山のハンターが現れたが、ゴットルやラベンダーの口添えもあり俺が捉えられる事は無かった。
ルーン村を襲った犯人の事は結局何も分からなかった。でももう良いのかもしれない。ナーダ1人守れなかった俺が村の仇なんてもう……
それから俺は殺しを一切やめた。そしてレシアとして残りの人生を生きて行くんだろう。
アサシン本部の外に出た。地下迷宮で迷っていた時間が長かったのだろう。外はもう暗くなっていた。
「でもこれで良かったんだろうか。何もする事も無いまま……見つからないまま……」
「そうだ、村に戻ろう。ナーダの……村の皆の墓を作って皆を供養しないとな。作物も育てれば良いな。1人で生きて行く事くらい出来るだろう。いや、皆と一緒に過ごして行こう」
何とも……俺の人生設計は変わりっぱなしだ。でも良い。アサシンとして人を殺し続けていく人生よりかは良い。
その時、不思議な事が起こった。
レッドの首に下がっていた紅い宝石が眩く光り輝く。フッと身体が楽になり、レッドは訳も分からないまま光に包まれていった。
「……そうか。何で今まで忘れてたんだろ。時間の路へ戻るのか……」
気付くと時間の路に立っていた。
「……戻って来たか」
「どうでしたか。貴方の思う未来になりましたか?」
「ルーン。俺は……」
「どうやら貴方はこの結末に心から納得していないようですね」
「そうかもしれない」
「ならば今1度、あの扉を開けて貴方の運命を辿りなさい」
レシアは時間の扉の方を向く。またあの扉を開けて時間を繰り返すのか……また河川敷に出るのか?
「ルーン、お前は時間の流れを護る守護霊って言ったな。一体いつから此処に居るんだ?」
「分かりません。時間という概念がありませんから」
「でも時間の流れを護っているんだろ?」
「貴方は同じ時間を繰り返しながらも、少しづつ何かしらを変化させているでしょう。貴方にとっては今までのこの流れが真実でしょう。しかし他の者にとっては更新された時間軸だけが唯一の真実なのです」
「分かる様な分からない様な……」
「概念とは、物事・事柄に対しどういう物かという共通の認識や考え方の事を指します。ルーンナーとして活動する貴方とその他の者、そして私と認識は違ってしまっているはずです。可逆か不可逆かという根本の部分ですら違うでしょう。故に概念として存在できていないのです」
「……なんか頭が痛くなる話だ。もう良いや」
※横話Cが解禁されました。現状でのエピローグを垣間見る事が可能になります。ただし、これがこの物語の最終的なエピローグではありません。レッドはこのエピローグを見た後、また時間の扉を開ける事になります。
「俺はあの森で2回もナーダを守れなかった。未だに解決方法は見付かっていない。せめてあの一瞬だけでも記憶が蘇れば……」
「いつかも言いましたが、ひょんな事から記憶が部分的にでも蘇る可能性はあります。その切っ掛けは人により、状況により変化するでしょう」
「確かに……今まで選択を変更した時って、微妙な違和感とかを感じた時だった様な気がする。とは言えたまたまレベルの話だよな」
「後はその時が来るまで貴方の心が耐えられるかどうかでしょう」
「何回ナーダの死に耐えられるか、か」
ゆっくりと静かに時間の扉を開けた。途端に光が拡がり、レシアの身体を包む。時間の路へ来た時と同じ様な感覚に包まれながら、レシアは目を塞いだ。
「はあはあ…バダグ、貰ったよ」
「気が付いていたのか……」
「バダグ。悪いな、時間稼ぎをした」
「レ、レッド……」
「ナーダの仇、確かに取ったぞ」
「ふ……流石だな。上手い事チームプレーにやられたよ」
「村の事に付いて聞きたいんだが……もう無理そうだな」
「く……これだけは言っておいてやる。ルーン村の仇は……俺では無い」
「……! それはどういう事だ」
「そこまでは言えないな。俺は……犯人を庇って……いる」
そのままバダグは息を引き取った。1番肝心な所は聞けなかったが……
いつの間にかゴットルも起き上がっていた。ラベンダーに事情を聞いている。
「……終わったな」
「ああ、2人のお陰だ。ありがとう」
「皆でやれる事をやっただけよ」
「さて……約束だ。俺は何も抵抗しない。お前達の好きにするんだ」
「……俺は情けで親父の仇を討つつもりは無い」
「え?」
「今の貴方はボロボロよ。そんな状態の貴方を討つ事は父の意思にも反するわ」
「さあ、さっさと何処にでも行ってしまえ」
「お前達……」
「別に貴方を許した訳じゃ無いわ。何れ、スウァムの名に懸けて貴方を討ちに行くわ」
「でも俺はナーダを……村のたった1人の生き残りすら守れなかった。ナーダの仇を討った今、する事なんて……」
「村の仇を討つんだろ。お前が言っていた事だぜ」
「…………」
そのすぐ後、ハンターによるアサシン一掃作戦が始まった。俺達の前にも沢山のハンターが現れたが、ゴットルやラベンダーの口添えもあり俺が捉えられる事は無かった。
ルーン村を襲った犯人の事は結局何も分からなかった。でももう良いのかもしれない。ナーダ1人守れなかった俺が村の仇なんてもう……
それから俺は殺しを一切やめた。そしてレシアとして残りの人生を生きて行くんだろう。
アサシン本部の外に出た。地下迷宮で迷っていた時間が長かったのだろう。外はもう暗くなっていた。
「でもこれで良かったんだろうか。何もする事も無いまま……見つからないまま……」
「そうだ、村に戻ろう。ナーダの……村の皆の墓を作って皆を供養しないとな。作物も育てれば良いな。1人で生きて行く事くらい出来るだろう。いや、皆と一緒に過ごして行こう」
何とも……俺の人生設計は変わりっぱなしだ。でも良い。アサシンとして人を殺し続けていく人生よりかは良い。
その時、不思議な事が起こった。
レッドの首に下がっていた紅い宝石が眩く光り輝く。フッと身体が楽になり、レッドは訳も分からないまま光に包まれていった。
「……そうか。何で今まで忘れてたんだろ。時間の路へ戻るのか……」
気付くと時間の路に立っていた。
「……戻って来たか」
「どうでしたか。貴方の思う未来になりましたか?」
「ルーン。俺は……」
「どうやら貴方はこの結末に心から納得していないようですね」
「そうかもしれない」
「ならば今1度、あの扉を開けて貴方の運命を辿りなさい」
レシアは時間の扉の方を向く。またあの扉を開けて時間を繰り返すのか……また河川敷に出るのか?
「ルーン、お前は時間の流れを護る守護霊って言ったな。一体いつから此処に居るんだ?」
「分かりません。時間という概念がありませんから」
「でも時間の流れを護っているんだろ?」
「貴方は同じ時間を繰り返しながらも、少しづつ何かしらを変化させているでしょう。貴方にとっては今までのこの流れが真実でしょう。しかし他の者にとっては更新された時間軸だけが唯一の真実なのです」
「分かる様な分からない様な……」
「概念とは、物事・事柄に対しどういう物かという共通の認識や考え方の事を指します。ルーンナーとして活動する貴方とその他の者、そして私と認識は違ってしまっているはずです。可逆か不可逆かという根本の部分ですら違うでしょう。故に概念として存在できていないのです」
「……なんか頭が痛くなる話だ。もう良いや」
※横話Cが解禁されました。現状でのエピローグを垣間見る事が可能になります。ただし、これがこの物語の最終的なエピローグではありません。レッドはこのエピローグを見た後、また時間の扉を開ける事になります。
「俺はあの森で2回もナーダを守れなかった。未だに解決方法は見付かっていない。せめてあの一瞬だけでも記憶が蘇れば……」
「いつかも言いましたが、ひょんな事から記憶が部分的にでも蘇る可能性はあります。その切っ掛けは人により、状況により変化するでしょう」
「確かに……今まで選択を変更した時って、微妙な違和感とかを感じた時だった様な気がする。とは言えたまたまレベルの話だよな」
「後はその時が来るまで貴方の心が耐えられるかどうかでしょう」
「何回ナーダの死に耐えられるか、か」
ゆっくりと静かに時間の扉を開けた。途端に光が拡がり、レシアの身体を包む。時間の路へ来た時と同じ様な感覚に包まれながら、レシアは目を塞いだ。