第28話
文字数 2,176文字
あの鉱石はルーン鉱石だ。しかもルーン村の村長の家に飾ってあったルーン鉱石で間違いない。アサシン襲撃の際に消えてしまっていた。大きいが純度は低く、加工しても無駄な位の物でオブジェ以外の使い道が無いレベルの代物だ。
「レッド、どういう事だ?」
「そのルーン鉱石はルーン村にあった物だ。つまりお前はアサシン襲撃に関係している。主犯かどうかは分からないが、少なくともお前はあの事件を知っている」
「これは確かにルーン鉱石だ。しかしこれがお前の村にあった物だとは限らないだろう?」
「見苦しいな。そのルーン鉱石の側面に傷があるだろう?それは俺が幼い頃にイタズラで付けた物だ」
「たまたま似た様な傷が付いただけじゃないのか?」
「よく見てみろ。汚い字だけど、俺の名前が彫ってあるんだよ」
「……そうか。確かにレシアと彫ってあるな。お前の本名を最近まで知らなかったから、すっかりこのルーン鉱石に書いてあったサインを忘れていたよ」
バダグはゆっくりと構える。セスタスを装着していない。俺が戻って来るとは本当に考えていなかった様だ。
「しかしあの地下迷宮を本当に抜けて来るとはな。考えてもみなかったぞ」
「あの程度の迷宮で俺を閉じ込められるとは思わない事だな。これでもレッド・アサシンとしてある程度は名を馳せてたんだぜ?」
「しかし、再び1人で挑みに来るとはな。いつの間にそんな愚かな男になってしまったんだ」
「黙れ。どうして村を襲った?」
「わざわざ言うとでも?」
「そうか。だったら力尽くで吐かせてやる」
レシアは剣を構える。
「セスタスの無いお前が俺の攻撃を凌げるか?」
「レッド。俺とお前の差は、武器の有る無しでは無い」
「そうかよ」
実際、バダグの格闘能力は凄まじい。セスタスが無くても強烈な強さだろう。果たしてこの男を相手に、殺さない様に気を付けながら戦って勝つ事が出来るのだろうか。
「取り敢えず、腕の1本でも貰おうか」
「その前に葬ってやるから心配するな」
流石のバダグでも不用意には手を出してこない。隙を窺う様にし、少し離れた位置から急接近し蹴りを放ってきた。何とか後ろへ下がりかわす。そのまま剣を振るうが、距離があり過ぎて届かない。
「意外と難しいな。これは油断した方が負けか」
「別に魔法を使っても良いんだぞ」
「そうか、ありがとう。シャドウ!」
レシアは闇属性の魔法を放つが、どうしても威力が弱い。バダグに一蹴されてしまう。
「危ないな、本当に撃ってくるか」
「お前が良いと言ったんだろう」
「まあ良い。大した魔法でもないしな」
「言ってくれる。……でもまあ、そうだな」
レシアは1歩前へ出て斬り掛かる。バダグは横にかわしながら拳を出して来た。レシアはそれをかわす。
「拳で剣を受け止められない分、どうしても距離を取らざるを得ないか」
「バダグ、別にカウンター覚悟で近くへ来てくれても良いんだぞ」
「そうか、ありがとう。……って行くか!」
「ノリが悪いな」
2人がゆっくりと近付いて行く。いざ、斬り掛かろうと1歩踏み出した瞬間に、部屋の中に沢山の人間がテレポートで現れた。バダグは一瞬そちらに気を向けてしまう。レシアの剣はそのままバダグを斬り付けた。
「ぐっ、しまった!」
「斬った……が、こいつらは何だ!?」
2人が沢山の人間に囲まれる形になってしまう。
「バダグとレッド・アサシンか」
「お前達は何者だ?」
「俺達はハンターだ」
「ハンターだと」
「ぐ……アサシンを殺しに来たのか?」
「そうだ。アサシンの撲滅が今回の任務だ」
どうやらレシアの事もアサシンと認識している様だ。シヴァからは何も聞いていないのか……?
「どうやら逃げる事は出来なさそうだな。レッド、お前に斬られた攻撃の所為で力も入らん」
「まさかこんな結末になるなんてな……」
「さあ、バダグとレッド・アサシンを殺せ!」
「まあ……一応、村の仇を取った様なモンで良いのかもな。ナーダ、俺もそっちへ行く。もし行き先が地獄でも昇って行ってやるさ」
「……ルーン村の仇は俺では無いけどな」
「え?」
バダグの方を向いた瞬間にハンターたちが一斉に襲い掛かって来た。どうやらバダグの言葉の意味を考える時間は無さそうだった。
その時、不思議な事が起こった。
レッドの首に下がっていた紅い宝石が眩く光り輝く。フッと身体が楽になり、レッドは訳も分からないまま光に包まれていった。
「お……思い出した。これは時間の路へ移動する光か」
気付くと時間の路に立っていた。
「……やり直しが、出来るのか。また……バダグは主犯では無い? いや、ナーダの仇はバダグだろう。村の仇は……結局誰なんだ?」
「ここは時間の路」
「お前はルーンか」
「貴方はこの結末に心から納得は出来ていない様ですね」
「そうだな」
「ならばもう1度、時間の扉を開けるのです」
※横話Bが解禁されました。現状でのエピローグを垣間見る事が可能になります。ただし、これがこの物語の最終的なエピローグではありません。レシアはこのエピローグを見た後、また時間の扉を開ける事になります。
「今回はどこに戻るんだろうか。やっぱりナーダの殺される前まで戻るのかな?」
「それは貴方の心次第です」
「……そうだな」
ゆっくりと静かに時間の扉を開けた。途端に光が拡がり、レシアの身体を包む。時間の路へ来た時と同じ様な感覚に包まれながら、レシアは目を塞いだ。
「レッド、どういう事だ?」
「そのルーン鉱石はルーン村にあった物だ。つまりお前はアサシン襲撃に関係している。主犯かどうかは分からないが、少なくともお前はあの事件を知っている」
「これは確かにルーン鉱石だ。しかしこれがお前の村にあった物だとは限らないだろう?」
「見苦しいな。そのルーン鉱石の側面に傷があるだろう?それは俺が幼い頃にイタズラで付けた物だ」
「たまたま似た様な傷が付いただけじゃないのか?」
「よく見てみろ。汚い字だけど、俺の名前が彫ってあるんだよ」
「……そうか。確かにレシアと彫ってあるな。お前の本名を最近まで知らなかったから、すっかりこのルーン鉱石に書いてあったサインを忘れていたよ」
バダグはゆっくりと構える。セスタスを装着していない。俺が戻って来るとは本当に考えていなかった様だ。
「しかしあの地下迷宮を本当に抜けて来るとはな。考えてもみなかったぞ」
「あの程度の迷宮で俺を閉じ込められるとは思わない事だな。これでもレッド・アサシンとしてある程度は名を馳せてたんだぜ?」
「しかし、再び1人で挑みに来るとはな。いつの間にそんな愚かな男になってしまったんだ」
「黙れ。どうして村を襲った?」
「わざわざ言うとでも?」
「そうか。だったら力尽くで吐かせてやる」
レシアは剣を構える。
「セスタスの無いお前が俺の攻撃を凌げるか?」
「レッド。俺とお前の差は、武器の有る無しでは無い」
「そうかよ」
実際、バダグの格闘能力は凄まじい。セスタスが無くても強烈な強さだろう。果たしてこの男を相手に、殺さない様に気を付けながら戦って勝つ事が出来るのだろうか。
「取り敢えず、腕の1本でも貰おうか」
「その前に葬ってやるから心配するな」
流石のバダグでも不用意には手を出してこない。隙を窺う様にし、少し離れた位置から急接近し蹴りを放ってきた。何とか後ろへ下がりかわす。そのまま剣を振るうが、距離があり過ぎて届かない。
「意外と難しいな。これは油断した方が負けか」
「別に魔法を使っても良いんだぞ」
「そうか、ありがとう。シャドウ!」
レシアは闇属性の魔法を放つが、どうしても威力が弱い。バダグに一蹴されてしまう。
「危ないな、本当に撃ってくるか」
「お前が良いと言ったんだろう」
「まあ良い。大した魔法でもないしな」
「言ってくれる。……でもまあ、そうだな」
レシアは1歩前へ出て斬り掛かる。バダグは横にかわしながら拳を出して来た。レシアはそれをかわす。
「拳で剣を受け止められない分、どうしても距離を取らざるを得ないか」
「バダグ、別にカウンター覚悟で近くへ来てくれても良いんだぞ」
「そうか、ありがとう。……って行くか!」
「ノリが悪いな」
2人がゆっくりと近付いて行く。いざ、斬り掛かろうと1歩踏み出した瞬間に、部屋の中に沢山の人間がテレポートで現れた。バダグは一瞬そちらに気を向けてしまう。レシアの剣はそのままバダグを斬り付けた。
「ぐっ、しまった!」
「斬った……が、こいつらは何だ!?」
2人が沢山の人間に囲まれる形になってしまう。
「バダグとレッド・アサシンか」
「お前達は何者だ?」
「俺達はハンターだ」
「ハンターだと」
「ぐ……アサシンを殺しに来たのか?」
「そうだ。アサシンの撲滅が今回の任務だ」
どうやらレシアの事もアサシンと認識している様だ。シヴァからは何も聞いていないのか……?
「どうやら逃げる事は出来なさそうだな。レッド、お前に斬られた攻撃の所為で力も入らん」
「まさかこんな結末になるなんてな……」
「さあ、バダグとレッド・アサシンを殺せ!」
「まあ……一応、村の仇を取った様なモンで良いのかもな。ナーダ、俺もそっちへ行く。もし行き先が地獄でも昇って行ってやるさ」
「……ルーン村の仇は俺では無いけどな」
「え?」
バダグの方を向いた瞬間にハンターたちが一斉に襲い掛かって来た。どうやらバダグの言葉の意味を考える時間は無さそうだった。
その時、不思議な事が起こった。
レッドの首に下がっていた紅い宝石が眩く光り輝く。フッと身体が楽になり、レッドは訳も分からないまま光に包まれていった。
「お……思い出した。これは時間の路へ移動する光か」
気付くと時間の路に立っていた。
「……やり直しが、出来るのか。また……バダグは主犯では無い? いや、ナーダの仇はバダグだろう。村の仇は……結局誰なんだ?」
「ここは時間の路」
「お前はルーンか」
「貴方はこの結末に心から納得は出来ていない様ですね」
「そうだな」
「ならばもう1度、時間の扉を開けるのです」
※横話Bが解禁されました。現状でのエピローグを垣間見る事が可能になります。ただし、これがこの物語の最終的なエピローグではありません。レシアはこのエピローグを見た後、また時間の扉を開ける事になります。
「今回はどこに戻るんだろうか。やっぱりナーダの殺される前まで戻るのかな?」
「それは貴方の心次第です」
「……そうだな」
ゆっくりと静かに時間の扉を開けた。途端に光が拡がり、レシアの身体を包む。時間の路へ来た時と同じ様な感覚に包まれながら、レシアは目を塞いだ。