第143話 上司からの急な連絡ほど怖いものはない
文字数 3,289文字
何かとトラブル続きの日々が多かったが、平日になれば、また静かな日々に戻る。
これはこれで、寂しいというか、つまらない毎日でもあるのだが、身体を休めるのにいい機会だ。
俺は溜まった疲れを昼寝で回復させていた。
勉強と仕事以外は。
それから数日が経ち、この日も俺はベッドで寝込んでいた。
だが、完全には休みきれていない。
原因はスマホだ。
アラームが数分置きに鳴り続ける。
ミハイルとアンナのダブルL●NE攻撃。
腐女子の北神 ほのかによるEメール。臭そうなデータ付き。
それからちょっと病みだした三ツ橋高校のJK、赤坂 ひなたの執拗な「今なにしてますか?」という連続攻撃(闇属性)
「はぁ……」
心身、疲れ果てた俺は二段ベッドの上でため息をつく。
そこへ、妹のかなでがひょっこり顔を出す。
ベッドの柵にあごをひっかけて、「おにーさま、大丈夫ですか?」と聞いてくる。
「いやぁ……ちょっと人間関係に疲れた」
マジでリセットしたい。
「そうですか? 万年ぼっちで妹でシコる童貞のおにーさまよりマシじゃないですか♪」
こんのやろう……。
「なにか用か?」
「あ、そうでしたわ。おにーさま宛てにお手紙ですの」
そう言うとベッドの上に茶色の封筒を置く。
寝転がったまま、俺は封を切った。
中身を見ると怪文書のようなきったねー字で書かれた手紙が。
A4用紙をまるまる一枚使って、デカデカとこう書いてあった。
『今度のスクリーングは夕方6時に来るように!』
宗像 蘭より。
読み終えるともう一枚、何かが便せんの裏にあることに気がつく。
パラッと布団の上に落ちたのは一枚の写真。
青く透き通った海、白い砂浜、そこに寝転ぶ一人の女性。
際どいマイクロビキニで、大事なナニかがもう少しで見えそうだ。
黒い長髪をなびかせ、妖しく微笑むその女は……手紙の送り主じゃ! ボケェ!
「うぉえっ!」
俺は急いで写真を封筒に戻すと、かなでに「これ捨てといて」と手渡した。
かなでは首をかしげながら、部屋のゴミ箱にそっと入れた。
グッジョブ、我が妹よ。
「しかし……なんでスクリーングが夕方の6時なんだ?」
もう一度、便せんを確かめたが、やはり間違ってない。
俺が困っていると、スマホからアイドル声優のYUIKAちゃんが可愛らしい歌声を流す。
毎度おなじみの『幸せセンセー』
何回、聞いてもいい曲だ。
癒される、過去にこれを着信に設定した俺氏、最高かよ。
画面を見ると着信主は古賀 ミハイル。
「もしもし?」
『あ、タクト。久しぶり☆』
おかしいなぁ、YUIKAちゃんみたいな甲高くて可愛い声がここにもいるよ?
「久しぶりだな」
ていうか毎分、L●NEしてくるのやめて。
もうアプリがバグりそうだよ。
『タクトのところにも宗像先生から手紙きた?』
「ああ、来たぞ」
キモいセクハラ写真と一緒に。
『なんか今度のスクリーングって夕方にやるの? 朝の六時の間違いじゃないの、これ』
「いや、わざわざ、あのオバサンが手紙を送ってきたぐらいだ。確かなのだろう」
『そっかぁ……じゃあ、いつもの電車の時間じゃなくて、夕方に一緒に行こうぜ☆』
なるほど、ミハイルは一緒に学校に行きたかったから連絡してきたわけか。
「かまわんぞ」
『うん、約束☆』
「ああ」
『ところで、タクトにも写真って送られてきた?』
「ブフッ!」
思わず唾を吐きだしてしまった。
近くにいたかなでの顔にかかり「なにをしますのよ!」と怒られてしまった。
「ミハイルのところにも来たのか?」
『オレは見てないけど、封筒に名前がなかったからねーちゃんが怪しい人かもって先に見たんだ。そしたらねーちゃんが顔を真っ赤にして写真ビリビリに破っちゃった。だからオレは見れてない』
見なくてよかったです。
ヴィッキーちゃん、ナイス。
「ああ、アレな。きっと異物混入だから見なくて正解だったと思うぞ」
『ふーん。タクトとねーちゃんだけって……なんかずっこいぞ!』
全然ずるくありません。
お姉さんは君を守ったんですよ。
「じゃあ、5時半ぐらいの列車に乗るからそれでいいか?」
『うん、スクリーング楽しみにしてるよ☆』
そうして別れを告げた。
だが、一体宗像先生はなにを考えているんだ。
ま、どうせくだらないことだろ。
~数日後~
俺は日が暮れるころになって、家を出た。
列車に乗り、途中でミハイルと同車する。
彼はいつも通り、タンクトップにダメージ加工のされたショーパン。
小さなお尻がキュッと際立つタイトなデニム。
夜が近づいていることもあってか、俺の太ももにピッタリと並べるその白くて華奢な細い美脚は思わず生唾を飲み込む。
「ゴクン!」
ミハイルはそんな俺の心を知ってか知らずか、もっと顔を近づけ、俺の目の中をじっと眺める。
「タクト? 大丈夫か? 顔が赤いけど」
ピンク色の唇が潤っている。
小さな唇が少し開くと、唾液の細い糸が光る。
「いや、なんでもない……」
「調子悪いならちゃんと言えよ」
何故だ……アンナモードでないのに、こんなにも魅力的に感じてしまうのは。
いかんいかん、こいつは古賀 ミハイルだ。
おとこ、おとこ!
そう自分に言い聞かせて、邪心を払うかのように頭を横に振る。
「なあ、タクトぉ。どうしてこっち見てくんないだよぉ! さびしいじゃ~ん」
俺は熱くなった頬を隠すかのように、窓の景色を楽しんだ。
電車に揺られること30分。
目的地の赤井駅に着く。
「久しぶりだな……」
赤井という土地は都市部からかなり離れた土地で、大きな山々に囲まれた盆地だ。
住宅街ばかりで、あまり店や高層ビルも少ない。
だから天神や博多ほど、人口も少ないため、自ずと空気が清んでおいしく感じる。
背伸びをして、一ツ橋高校へと向かった。
大きな校門を抜けると長い坂道、通称『心臓破りの地獄ロード』のお出迎え。
相変わらず、この坂道は膝にくる。
俺とミハイルが黙って、坂道をのぼっていると隣りの車道をバイクが追い抜いていく。
「ひゃっほ~ ミーシャ♪」
「ミハイル、先に行っているぜ!」
二人乗りの花鶴 ここあに千鳥 力。
千鳥が運転していて、ハゲを隠すかのようにヘルメットとサングラス。
後部座席に腰を下ろす花鶴は相変わらずの超ミニスカートを履いていた。
もちろん、追い風でスカートはめくれあがっている。
ヒョウ柄のパンティが丸見えだ。
この人はもうスカートを履く必要性がないんじゃないかと思えてしまう。
「うん、あとでな! オレはタクトと一緒だから☆」
といって、笑顔で彼らに手を振る。
当の俺は隣りで「ぜぇぜぇ」を息を荒くしているのに、ミハイルはケロッとしている。
やっとのことで、長い坂道を昇り終えると、そこには一人の女が立ちふさがっていた。
キッとこちらを睨みつけ、俺とミハイルを交互に見つめると、妖しく微笑んだ。
「だぁっははは! よくぞ来たな! 新宮、古賀!」
赤い夕陽をバックに下品な笑い声をあげる。
「宗像先生……その前にその格好、なんですか?」
俺が指差す方向には、結婚前のアラサー女子とは思えない服をまとったお人が……。
靴はバッシュ、紺色のニーハイ、ブルマ、そして名前の刺繍が入った体操服。
ひらがなでこう書かれていた。
『3-1 むなかた らん』
ファッ!?
「ああ、これか? だって今日運動会だろ? 先生だってジャージぐらい着るにきまっているだろ」
そう言って、また大きく口を開き豪快に笑いだす。
あの……ジャージじゃないです。
完璧コスプレですよね?
だってもう立派に育ちすぎた巨乳で体操服がパッツパツですよ。
アラサーのブルマなんて見たくないです。
どこかの大人向きな映画にでも出演してきたらどうですか?
「さあ! 始めるぞ!」
「ナニをですか?」
「夜の大運動会だぁ!」
「……」
聞いてねぇ!
「やったぁ! 楽しそう!」
隣りを見ると、ミハイルがピョンピョンとその場で飛び跳ねていた。
時折タンクトップがめくれ、胸元がチラチラと見えてしまう。
彼の方が個人的にはとても可愛らしく、魅力的に感じます。
これは病気でしょうか?
これはこれで、寂しいというか、つまらない毎日でもあるのだが、身体を休めるのにいい機会だ。
俺は溜まった疲れを昼寝で回復させていた。
勉強と仕事以外は。
それから数日が経ち、この日も俺はベッドで寝込んでいた。
だが、完全には休みきれていない。
原因はスマホだ。
アラームが数分置きに鳴り続ける。
ミハイルとアンナのダブルL●NE攻撃。
腐女子の北神 ほのかによるEメール。臭そうなデータ付き。
それからちょっと病みだした三ツ橋高校のJK、赤坂 ひなたの執拗な「今なにしてますか?」という連続攻撃(闇属性)
「はぁ……」
心身、疲れ果てた俺は二段ベッドの上でため息をつく。
そこへ、妹のかなでがひょっこり顔を出す。
ベッドの柵にあごをひっかけて、「おにーさま、大丈夫ですか?」と聞いてくる。
「いやぁ……ちょっと人間関係に疲れた」
マジでリセットしたい。
「そうですか? 万年ぼっちで妹でシコる童貞のおにーさまよりマシじゃないですか♪」
こんのやろう……。
「なにか用か?」
「あ、そうでしたわ。おにーさま宛てにお手紙ですの」
そう言うとベッドの上に茶色の封筒を置く。
寝転がったまま、俺は封を切った。
中身を見ると怪文書のようなきったねー字で書かれた手紙が。
A4用紙をまるまる一枚使って、デカデカとこう書いてあった。
『今度のスクリーングは夕方6時に来るように!』
宗像 蘭より。
読み終えるともう一枚、何かが便せんの裏にあることに気がつく。
パラッと布団の上に落ちたのは一枚の写真。
青く透き通った海、白い砂浜、そこに寝転ぶ一人の女性。
際どいマイクロビキニで、大事なナニかがもう少しで見えそうだ。
黒い長髪をなびかせ、妖しく微笑むその女は……手紙の送り主じゃ! ボケェ!
「うぉえっ!」
俺は急いで写真を封筒に戻すと、かなでに「これ捨てといて」と手渡した。
かなでは首をかしげながら、部屋のゴミ箱にそっと入れた。
グッジョブ、我が妹よ。
「しかし……なんでスクリーングが夕方の6時なんだ?」
もう一度、便せんを確かめたが、やはり間違ってない。
俺が困っていると、スマホからアイドル声優のYUIKAちゃんが可愛らしい歌声を流す。
毎度おなじみの『幸せセンセー』
何回、聞いてもいい曲だ。
癒される、過去にこれを着信に設定した俺氏、最高かよ。
画面を見ると着信主は古賀 ミハイル。
「もしもし?」
『あ、タクト。久しぶり☆』
おかしいなぁ、YUIKAちゃんみたいな甲高くて可愛い声がここにもいるよ?
「久しぶりだな」
ていうか毎分、L●NEしてくるのやめて。
もうアプリがバグりそうだよ。
『タクトのところにも宗像先生から手紙きた?』
「ああ、来たぞ」
キモいセクハラ写真と一緒に。
『なんか今度のスクリーングって夕方にやるの? 朝の六時の間違いじゃないの、これ』
「いや、わざわざ、あのオバサンが手紙を送ってきたぐらいだ。確かなのだろう」
『そっかぁ……じゃあ、いつもの電車の時間じゃなくて、夕方に一緒に行こうぜ☆』
なるほど、ミハイルは一緒に学校に行きたかったから連絡してきたわけか。
「かまわんぞ」
『うん、約束☆』
「ああ」
『ところで、タクトにも写真って送られてきた?』
「ブフッ!」
思わず唾を吐きだしてしまった。
近くにいたかなでの顔にかかり「なにをしますのよ!」と怒られてしまった。
「ミハイルのところにも来たのか?」
『オレは見てないけど、封筒に名前がなかったからねーちゃんが怪しい人かもって先に見たんだ。そしたらねーちゃんが顔を真っ赤にして写真ビリビリに破っちゃった。だからオレは見れてない』
見なくてよかったです。
ヴィッキーちゃん、ナイス。
「ああ、アレな。きっと異物混入だから見なくて正解だったと思うぞ」
『ふーん。タクトとねーちゃんだけって……なんかずっこいぞ!』
全然ずるくありません。
お姉さんは君を守ったんですよ。
「じゃあ、5時半ぐらいの列車に乗るからそれでいいか?」
『うん、スクリーング楽しみにしてるよ☆』
そうして別れを告げた。
だが、一体宗像先生はなにを考えているんだ。
ま、どうせくだらないことだろ。
~数日後~
俺は日が暮れるころになって、家を出た。
列車に乗り、途中でミハイルと同車する。
彼はいつも通り、タンクトップにダメージ加工のされたショーパン。
小さなお尻がキュッと際立つタイトなデニム。
夜が近づいていることもあってか、俺の太ももにピッタリと並べるその白くて華奢な細い美脚は思わず生唾を飲み込む。
「ゴクン!」
ミハイルはそんな俺の心を知ってか知らずか、もっと顔を近づけ、俺の目の中をじっと眺める。
「タクト? 大丈夫か? 顔が赤いけど」
ピンク色の唇が潤っている。
小さな唇が少し開くと、唾液の細い糸が光る。
「いや、なんでもない……」
「調子悪いならちゃんと言えよ」
何故だ……アンナモードでないのに、こんなにも魅力的に感じてしまうのは。
いかんいかん、こいつは古賀 ミハイルだ。
おとこ、おとこ!
そう自分に言い聞かせて、邪心を払うかのように頭を横に振る。
「なあ、タクトぉ。どうしてこっち見てくんないだよぉ! さびしいじゃ~ん」
俺は熱くなった頬を隠すかのように、窓の景色を楽しんだ。
電車に揺られること30分。
目的地の赤井駅に着く。
「久しぶりだな……」
赤井という土地は都市部からかなり離れた土地で、大きな山々に囲まれた盆地だ。
住宅街ばかりで、あまり店や高層ビルも少ない。
だから天神や博多ほど、人口も少ないため、自ずと空気が清んでおいしく感じる。
背伸びをして、一ツ橋高校へと向かった。
大きな校門を抜けると長い坂道、通称『心臓破りの地獄ロード』のお出迎え。
相変わらず、この坂道は膝にくる。
俺とミハイルが黙って、坂道をのぼっていると隣りの車道をバイクが追い抜いていく。
「ひゃっほ~ ミーシャ♪」
「ミハイル、先に行っているぜ!」
二人乗りの花鶴 ここあに千鳥 力。
千鳥が運転していて、ハゲを隠すかのようにヘルメットとサングラス。
後部座席に腰を下ろす花鶴は相変わらずの超ミニスカートを履いていた。
もちろん、追い風でスカートはめくれあがっている。
ヒョウ柄のパンティが丸見えだ。
この人はもうスカートを履く必要性がないんじゃないかと思えてしまう。
「うん、あとでな! オレはタクトと一緒だから☆」
といって、笑顔で彼らに手を振る。
当の俺は隣りで「ぜぇぜぇ」を息を荒くしているのに、ミハイルはケロッとしている。
やっとのことで、長い坂道を昇り終えると、そこには一人の女が立ちふさがっていた。
キッとこちらを睨みつけ、俺とミハイルを交互に見つめると、妖しく微笑んだ。
「だぁっははは! よくぞ来たな! 新宮、古賀!」
赤い夕陽をバックに下品な笑い声をあげる。
「宗像先生……その前にその格好、なんですか?」
俺が指差す方向には、結婚前のアラサー女子とは思えない服をまとったお人が……。
靴はバッシュ、紺色のニーハイ、ブルマ、そして名前の刺繍が入った体操服。
ひらがなでこう書かれていた。
『3-1 むなかた らん』
ファッ!?
「ああ、これか? だって今日運動会だろ? 先生だってジャージぐらい着るにきまっているだろ」
そう言って、また大きく口を開き豪快に笑いだす。
あの……ジャージじゃないです。
完璧コスプレですよね?
だってもう立派に育ちすぎた巨乳で体操服がパッツパツですよ。
アラサーのブルマなんて見たくないです。
どこかの大人向きな映画にでも出演してきたらどうですか?
「さあ! 始めるぞ!」
「ナニをですか?」
「夜の大運動会だぁ!」
「……」
聞いてねぇ!
「やったぁ! 楽しそう!」
隣りを見ると、ミハイルがピョンピョンとその場で飛び跳ねていた。
時折タンクトップがめくれ、胸元がチラチラと見えてしまう。
彼の方が個人的にはとても可愛らしく、魅力的に感じます。
これは病気でしょうか?