第269話 塵も積もれば山となる

文字数 1,749文字


 結果的にズキンちゃんのドレスは、超セクシーミニドレスとなり、5000円以上の素晴らしい写真と動画を、大量にゲットできた。
 俺は支払っていないが。
 ズキンちゃん、ありがとう。
 僕の自宅PCのHDD、容量が足りなくなりそうです。
 HDDを追加で3TBぐらい買いますね。
 ぜひ、買わせて頂きますわ……ふぅ。


 撮り終えた大量のアンナの写真を確認している間、更衣室から着替えを終えた彼女が出てくる。
「楽しかったね☆ ドレス☆」
「ああ! 最高にな! これならまた小説に使えそうだ!」(口調強め)
「ホント? なら良かったぁ☆」
 そして、夜のお楽しみにも再利用できる。
 これぞ……究極のSDGs!

   ※

 その後、パンパンマンの生みの親である『いせ へいし』劇場へと向かった。
 丁度今からダンスショーが始まるそうだ。
 ステージの上でショートパンツ姿のお姉さんが、マイクを持って子供たちに声をかける。
「福岡ミュージアムに来てくれたおともだちのみんな~! このあと、パンパンマンたちが出てきて元気に踊るから、大きな拍手で出迎えてあげてね~!」

 劇場と言っても、所謂ミュージシャンのライブのような会場とは違う。
 三角形の形をした左右に広がる大き目の階段と言ったところか。
 壁にはパンパンマンやキンキンマンの可愛らしいイラストがプリントされており、所々に小さなスピーカーが見える。
 また左手には、薄い仕切りで出来た舞台袖が確認できる。
 時折、着ぐるみたちの身体がはみ出てしまう。

 客とステージの距離感もかなり近い。
 階段下の目の前に、赤いベルトでパーテーションしてあるだけで、行こうと思えば、乗り越えられるガバガバなセキュリティレベル。
 いや、むしろこの近すぎる距離感が売りと言うべきか。

 その証拠にもう家族連れが地べたに座り込み、パンパンマンの登場を今か今かと待ちわびている。
 さすがにこのイベント、大人の俺たちにはないよな……。
 と隣りのアンナに話を振ろうとした瞬間。
「ん?」
 さっきまで俺の隣りにいたはずの彼女の姿が消えていた。

 迷子になったのかと思い、心配して辺りをきょろきょろと探していると。

「さ、パンパンマンたちが出てくるよぉ~ あ、一緒にダンスしたいっていうおともだちは前に出てきてもいいよ~!」
 とステージのお姉さんが幼い子供たちを誘導。
 後ろにいるお父さんお母さんが見守るなか、出てきたたくさんの着ぐるみ達と嬉しそうに見よう見まねで元気に踊り出す。

 軽快な音楽が鳴り響く中、俺は相方のアンナを未だに見つけられずにいた。
 どこに行ったんだ……まったく。

「ズキンちゃん、踊ろ踊ろ☆」

 え……なんか聞き覚えのある声が舞台から聞こえてくるんだが。
 恐る恐る、その声の持ち主の方へと首を動かす。

 オレンジ色の着ぐるみと金髪の少女が腰に手を当ててステップを踏んでいる。
 その場でくるくる回って見せる。ワンピースの裾がフワッと宙に上がる。
 ミニ丈だからちょっとパンツが見えそう。
 幼い子供だったらセーフなのだろうが。
 うちのヒロインなんです……。

 周りに座っていた親御さんたちがその姿を見て困惑していた。
 だって、暗黙のルールでパンパンマン達と踊るのは、せいぜいが小学校の低学年ぐらいまでだからだ。
 どう考えても10代後半のお姉さんだからな。(♂)

「あの子、ちょっとあれかしら……ちょっとそういう子かしら」
「近くに保護者の人はいないのかい? あのままにしていると危険じゃないかな?」
 なんて変な心配をされる始末。

 ちゃんと保護者はここにいるので、安心されてご自身のお子様を見守ってあげてください。

 アンナはフルで10分間、ズキンちゃんのダンスを完コピと言えるぐらいキレッキレッのダンスをステージ上にて楽しんだ。
 ちょっとズキンちゃんが引くレベルの上手さ。

 踊り終えて、満足そうな顔で俺のところに戻ってくる。
「ねぇねぇ。見ててくれた? アンナとズキンちゃんのダンス☆ 上手に踊れてた?」
「うん。マジで……ダンス上手なのな」
 引くレベルだけど。
「ありがとぉ☆ 小さい頃からDVDで毎日踊っているから、自然と身体が覚えているんだよねぇ~」
 あれを毎日10年以上もやり続けているのか……。
 もう仙人並みに悟りを開けているな。
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