第44話

文字数 649文字

「ええ? 俺の気持ち?」

「そう、おめはんの気持ぢ」

「俺の気持ちに気付いていたんだ…… うわ…」

 かなえへの想いが伝わっていたなんて…

「そう、おらとへっぺしたぐで仕方ねぁーどいうおめはんの気持ぢにね」

 半分違くて半分正解。青春と性旬。恋心と肉欲。相反する様で実は密接な関係。

「いや… それは、そうだけど、そうではなくってさ、何て言ったらいいんだか…」

 子供の頃から異性の人の目が怖かったの。みんな舐めるように私を眺め、その何人かは私の身体を触ってきたりして。勿論男女の交接についてはよく知っていたわ、父が久しぶりに帰宅すると、それから毎晩母と交わっていたから。あの母の悲鳴が最初は恐怖だった、だけど成長するにつれあの悲鳴が歓喜だと知り愕然としたわ、あの大人しい母が父との交接であれ程乱れ喜ぶのかと知って。以来、私は肉体的な話から逃げているの。宇宙神もそれで良いと言ってくれている。だからあの海で翔くんが私を肉欲的な視線を見た時、絶望に陥ったのよ。ああこの人も私を肉の塊としてしか見ていないんだって。私の心でなく容姿と肉体を欲しているんだって。だから諦めようとしたの翔くんのことを。だけどそれは出来なかった。夜になると貴方が瞼の裏に浮かんできて微笑んでくれる。そっと私を抱きしめてくれる。私を母のように歓喜に導いてくれる。そして私の全てを認知し承認してくれる! こんな私を、私の全てを受け入れてくれる! 宇宙神の使徒たる私を、選ばれし使徒である私を……

 あのね。分かっているから。自分が病気だって事。
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