第54話

文字数 752文字

 翌日から必ず僕とかなえは一緒に登校し下校した。

 雪道に慣れないからと言い訳をし、ずっと手を繋いで登下校した。

 或る日。クリスマスはどうするのかと僕が問うと、不思議そうな顔をしながら
「あれ? 一緒にするんじゃないの?」

 と当たり前のように言われ、あの十二月前半の鬱状態は何だったのだろうかと自問してみる。

 まさか、宇宙に聖夜の儀式を捧げたりしないよな、と揶揄うと顔を真っ赤にして、本当にやめて頂戴と泣き声で言われ慌てて執りなしたりする。

 心の半分くらいかなえの全裸が見られなくて残念と思うも、普通の彼氏彼女として祝えると喜ぶ。

 あれ?

 俺たちって、付き合っているのか?

 僕はすっかりその気持ちだったのだが、考えてみると一度もきちんとその話をした記憶が無い。一緒にいたいとかいて欲しい、へっぺはもう少し待って欲しい、と言うのはあったが、付き合おうそうしましょう、と言う類の話は思い出せない。

 クリスマスまで数日に迫ったある夕刻。かなえのアパートで不意に尋ねてみる。なあ俺たちって付き合っているんだよな?

 かなえは眉を顰めつつ、付き合うって一体何? と逆に僕に問う。だから、一緒に登下校したりデートしたり、イベント事を一緒に楽しんだりする男女、と僕が答える。

 かなえは更に眉を顰め、それなら別に本当に好きでなくても人って付き合えるのじゃなくて? 

 そんな事はないと思うが、それもあるかも知れないと答えると、それは付き合いとは言えない。付き合うとは、お互いの全裸を眺め合える関係なのだ、と叫んだ。

 僕は呆然とし、それから、あ、それなら俺たちとっくに付き合ってんじゃん、と言うと、当たり前のことを言わないで欲しい、と強く睨まれてしまった。

 喜びよりも圧倒的な怖さに平伏しそうになる、かなえの彼氏である僕であった。
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