第14話

文字数 697文字

 六月に入ると、かなえの突飛な言動が更に加速していく。膠二病の病状悪化と捉えてよい。

「銀河系条例に従って、身を清めに行くから翔くんも付き合いなさい」

 何のこっちゃ? とある日曜日に呼び出され、電車に揺られ付いていくと、とある人気のない砂浜に僕とかなえは全裸で立っており。

「全身を冷たい海水で清めるのよ。これを毎年しておかないと健全な波動が保てないのよ。さ、入るわよ」

 六月の、東北地方の太平洋岸の水温。

 かなえの全裸に興奮する余裕など微塵もなく、僕は縮こまる己を慰めながら針が突き刺すような水の冷たさに耐えるだけだった。

 ふとかなえの方を眺めると、あまりの寒さに唇が真っ青になっており。そして黒目が上に上がったかと思った瞬間、彼女は気絶し水面下に消えていった。

 慌てて彼女を抱え起こす。水深は70センチくらいなのだが。砂浜に抱えて行き、そっと横たえる。

 真っ白なかなえの全裸。曇天の下に横たわる無垢なる純白の奇跡。

 縮こまっていた己が隆々と(そび)え立ち、全身に血が沸るのを感じる。何という美しい身体。肉のたるみなぞ微塵も無く、神々しい程の完璧な肉体。
 但し、双丘は相当お淑やかであったことが悔やまれる。

 何度唾を飲み込んだだろう、我慢の限界が近づくのを感じる。そして限界突破を自認したその瞬間、彼女は目をパッチリと開く。そして僕を下から見上げ。

 僕の己をマジマジと眺め。

 細く冷たい悲鳴が砂浜に鳴り響く。まだまだシーズンには程遠い砂浜に絶望と苦悩の悲鳴が響き渡る。僕の己は無惨にもかなえの投じた砂まみれとなり、更には砂に混じっていた小貝の破片が表皮を切り裂き、全治二週間の擦過傷を負う羽目になった。
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