第57話
文字数 671文字
かなえは携帯電話を持っていない。
故に帰郷を報告しようにも、その手段が無い。
だが、岩手に戻った翌日には僕はかなえと会っていた。朝の雪掻きを終え、散歩がてらにかなえのアパートを覗きに行ったら、カーテンが開かれていたのでかなえの帰宅が分かったからだ。
呼び鈴を押し、ドアが開かれる。
僕は驚愕する。
かなえの黒く美しい長い髪は、肩までのショートボブになっていたからだ。
部屋に上がりその経緯を聞く。
元旦に神の啓示を受け、昨日昼に街に戻り美容院で切ったのだという。
あれ、そういうのやめたのでは、と言うと実は何となく切りたくなっただけ、と白状する。
長い髪には神性力があるのでは、と揶揄うと
「もう、やめでけろ、翔ぐんのバカ」
と真っ赤になって照れるのが堪らなく可愛い。
だが暫く互いの近況を伝え終わる頃。
「あのね、らずもねぐおっかねえ夢見だの、それも何度も」
それはどんな内容か問うと、俯きながら
「それがよぐ覚えでねぁーの。でもほんにおっかねぁー夢なの」
僕に又馬鹿にされるからだろう、本当は覚えているくせに言おうとしない。百年に一度の台風や学校の襲撃だのとこれまで散々僕は痛い目に会ってきているのだから、それはそれで彼女は良い方向に向かっている、即ち病気からの回復して来ていると捉え、そっかそれは辛かったであろう、今日からは俺が一緒だから不安に思ったら俺と一緒にいれば良い、と言うと、
「もー。ほんに翔ぐんは優しいんだがら」
と言ってまた赤くなる。
その愛おしさに、僕の雄の本能が刺激され、遠からず彼女と結ばれたいと切に願い始めるのだった。
故に帰郷を報告しようにも、その手段が無い。
だが、岩手に戻った翌日には僕はかなえと会っていた。朝の雪掻きを終え、散歩がてらにかなえのアパートを覗きに行ったら、カーテンが開かれていたのでかなえの帰宅が分かったからだ。
呼び鈴を押し、ドアが開かれる。
僕は驚愕する。
かなえの黒く美しい長い髪は、肩までのショートボブになっていたからだ。
部屋に上がりその経緯を聞く。
元旦に神の啓示を受け、昨日昼に街に戻り美容院で切ったのだという。
あれ、そういうのやめたのでは、と言うと実は何となく切りたくなっただけ、と白状する。
長い髪には神性力があるのでは、と揶揄うと
「もう、やめでけろ、翔ぐんのバカ」
と真っ赤になって照れるのが堪らなく可愛い。
だが暫く互いの近況を伝え終わる頃。
「あのね、らずもねぐおっかねえ夢見だの、それも何度も」
それはどんな内容か問うと、俯きながら
「それがよぐ覚えでねぁーの。でもほんにおっかねぁー夢なの」
僕に又馬鹿にされるからだろう、本当は覚えているくせに言おうとしない。百年に一度の台風や学校の襲撃だのとこれまで散々僕は痛い目に会ってきているのだから、それはそれで彼女は良い方向に向かっている、即ち病気からの回復して来ていると捉え、そっかそれは辛かったであろう、今日からは俺が一緒だから不安に思ったら俺と一緒にいれば良い、と言うと、
「もー。ほんに翔ぐんは優しいんだがら」
と言ってまた赤くなる。
その愛おしさに、僕の雄の本能が刺激され、遠からず彼女と結ばれたいと切に願い始めるのだった。