第15話

文字数 588文字

 バスタオルで身体を拭き、服を着て砂浜を後にする。一羽の(かもめ)が僕を嘲笑うかの如く宙を舞う。

 かなえはそれ以降僕を見向きもせず、言葉も一言も交わさず。

 三陸鉄道北リアス線に揺られながら僕は変わりゆく景色を呆然と眺めている。かなえは僕と15センチの距離をとり目を閉じている。

 いく程立った事だろう、かなえがポツリと呟いた。

「エハッド・ナヴィは永遠の処女でなければならないの」

 僕はああそうなんだ、と溜息混じりに吐き出した。

「だから。ダメなの、そういうことは……」

 僕は絶望と欲望の狭間で頭を抱える。

「貴方なら分かってくれると信じていたのだけど」

 ハッとして彼女を見つめる。

「それでも、良ければ、これからも、貴方と……」

 僕と?

「貴方と、寄り添っていけると思うのだけれど……」

 それってエッチなしのお付き合い、という事なのかな?

「エッチって…… いやらしい。恥ずかしい」

 真っ赤になって俯くかなえ。

「でも、ええ。その通りなのかも知れないわ。肉の欲を解脱した純粋なお付き合い。貴方はそれが出来て?」

 僕は頭を抱えつつそれを考えてみる。

 正直。かなえを抱きたい。飽きるほど抱きたい。果て尽くすまで出したい。

 だが膠二病が完治するまではそれは無理らしい。それでもいいのか? 清い交際でも良いのか?
答えは意外に簡単だった。

 気がつくと僕はかなえの手を握りしめ、何度も何度も頷いていたのだった。
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