第21話

文字数 853文字

 それでも唯一最高の思い出は四人で行った岩洞湖でのキャンプだった。

 確か言い出したのは広田、大いに乗ってきたのは意外にもかなえ。

「岩洞湖は霊的にも素晴らしい場所よ、是非みんなで行ぎでわ」

 古舘もキャンプの経験が無く、即座に同意したのだった。

 岩洞湖とは盛岡の北部にある人造湖だ。元々は岩洞ダムの建設により出来た湖で、白樺林に囲まれていて日本一美しい人造湖と言われているそうだ。

 ここのどこが霊的に素晴らしいのか謎であるが、かなえはこの湖がいたく気に入った様子なのでそれはそれで良かった。

 この頃から彼女の『厨二病』気質が親しい仲間内でも気付かれ始める。

 広田とバーベキューの火起こしをしている時。

「なあ、おめの彼女、ちょっと変わってらよな」

 へえ、何処が、と聞くと、
「だって、まるっきりやらせでぐれねぁーんだべ? おがしいじゃ」

 だよな、だよな。俺もそう思うんだよ。

「無理矢理にでもやっちまえよ、付ぎ合ってんだがらさ」

 それがさあ、かくかくしかじかでさあ……

「マジか、そったら処女にこだわってんのが。ホント変わったおなごだなぁ」

 それは古舘も感じ始めたようで。

 僕と古舘が食器を洗っている時。

「ねえ水沢ぁ、紫波さんって相当変でねぁー?」

 ふぅーん、どの辺が?

「だって、かなえぢゃんって呼んでいい? っつったらそれは嫌だって」

 俺もかなえって呼んでないし。

「それ、おがしくね? 彼氏なのに下の名前呼ばせねぁーなんて。絶対変だよあの子。それにさ、」

 古舘はチラリと背後のかなえを一瞥してから、
「一人暮らしなのに部屋さ呼んでぐれねぁーし。実は男ど同棲してんでねぁー?」

 いやそれはないわ。俺は何度か遊びに行っているし。

「でも、アレ、まだなんだべ? それおがしくねぁー?」

 だよなだよな、絶対おかしいよな。健全な男女でないよな?

「そ、それは分がらねぁーげど」

 真っ赤になる古舘に、あれお前広田とそうなんじゃねえの、と伺う。

「違うし。そったなんでねぁーし。気持ぢ悪い」

 と真顔で突っ返され、逆に僕が俯いてしまったり。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み