第66話

文字数 322文字

 いつもと何かが違うと感じたのは、停電となっていたことから始まる。テレビも炬燵もつかない。僕らは慌ただしく服を着て神社を出た。

 神社の石段を降りると、入り口の脇にあった石の灯籠が倒れている。

 県道に出てバス停まで歩くも、車が通る気配が全くない。チラチラ舞う雪を払いのけ、バス停の時刻表を見る。時間になってもバスは来ず、車どころかトラック一台通らない。

 待っていても凍えるだけだと、僕らは街に向けて歩き出す。

 やがて、土砂崩れによって道路が完全に塞がっている場所にでくわし、これは只事ではないと実感する。

 山を下るにつれ雪は収まり遠くを見渡せるようになる。街一面を見下ろせる山の中腹に至り、僕らは愕然としその場に立ち尽くした。

 街が、溺れている!
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