第50話

文字数 412文字

 師走に入り、かなえの妄想癖はほぼ見られなくなった。

 唯一、夢のお告げだけは継続されていた。

 この頃には彼女はクラスの、いや学年の、否、学園の人気者となっており、昼休みのランチタイムも放課後も色々なグループから誘われるようになり、従って四人で帰宅することは極端に減っていた。

 即ち、二人で帰宅する事もかなり減った。必然、彼女のアパートに行く機会も激減し、精神的にも物理的にも僕とかなえの距離は徐々に開いていった。

 週一程度で、
「翔ぐん、お告げがあっだよ」

 と囁かれ、その内容を聞く僅かな時間が二人一緒の時間、となっていた。

 僕とかなえが付き合っている説はすっかりと影を顰め、東京臭がすっかり薄くなった僕は誰からも注目も見向きもされなくなっている。

 僕自身もこの雪景色と寒さの片田舎生活にどっぷりと浸かってしまい、自分が東京の高校の陽キャグループに属していた過去の栄光を思い出す暇もなく日々の除雪をロボットの如くこなしていた。
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