第70話
文字数 423文字
もうすぐ七歳になる私立小学校に通う長男が、
「あのね父さん。僕の友達がね、変な事を言っているんだ」
近くの地下鉄の駅まで送る途中に不意に喋り出す。
「もうすぐね、光がこの世を包んで焼き尽くしちゃうんだって。だから私を大事にしてねって言うんだ。変でしょ?」
その友達って女の子なのかい、と応じると、顔を真っ赤にしながら
「うん。毎日一緒の電車で行く子。クラスも一緒なんだ」
そうか。妻が言っていた、こいつの彼女のことか。
僕は笑みを抑えきれずに思わず肩を揺らせてしまう。
ふと、かなえの事を数年ぶりに思い出す。
その子はいつもそんなことをお前に話すのかい? それともみんなにも話しているのかい?
「僕にだけ。だって誰も信じてくれないからって」
僕は立ち止まり、長男の頭を撫でながら、お前だけは信じてあげなさい。その子のいう事を、そしてその子自身の事を信じてあげなさい、と言うと
「うんわかった。じゃね、行ってきます」
と言って満面の笑みで駅に降りて行った。
「あのね父さん。僕の友達がね、変な事を言っているんだ」
近くの地下鉄の駅まで送る途中に不意に喋り出す。
「もうすぐね、光がこの世を包んで焼き尽くしちゃうんだって。だから私を大事にしてねって言うんだ。変でしょ?」
その友達って女の子なのかい、と応じると、顔を真っ赤にしながら
「うん。毎日一緒の電車で行く子。クラスも一緒なんだ」
そうか。妻が言っていた、こいつの彼女のことか。
僕は笑みを抑えきれずに思わず肩を揺らせてしまう。
ふと、かなえの事を数年ぶりに思い出す。
その子はいつもそんなことをお前に話すのかい? それともみんなにも話しているのかい?
「僕にだけ。だって誰も信じてくれないからって」
僕は立ち止まり、長男の頭を撫でながら、お前だけは信じてあげなさい。その子のいう事を、そしてその子自身の事を信じてあげなさい、と言うと
「うんわかった。じゃね、行ってきます」
と言って満面の笑みで駅に降りて行った。