第38話

文字数 551文字

 収穫の秋を迎え、僕の抑え込んだ理性が徐々に綻び始めてくる。

 町ぐるみで行われる収穫祭は僕にとって初めての経験である。級友たちは大いに浮かれ、広田も古舘も収穫祭を待ち望んでいる。

 そもそも収穫祭って何をするの?

「神社中心さ出店いっぱい出で、美味えものがだらふく食えるんだよ」

 それって授業なくなるってこと?

「学校がらも出店出したりお囃子や収穫の舞さ参加するんだよ。当然学校は休校さ」

 それは実に楽しみだ。四人で、いや二人で出店を食い倒したいものである、そうかなえに伝えると、
「そんな暇は私達にはないわ。神聖宇宙への収穫の儀があるのだから」

 ふうん、何それ?

「秋に収穫されたものを一品ずつ集めておいて頂戴。それを持って儀式の場に行くのよ」

 やった、またもや小旅行じゃん。

「あくまで儀式ですから。こないだみたいな旅行気分で来られると迷惑だわ。ちゃんと理解して欲しいのだけれど」

 あの、その儀式の具体的な内容は?

「いつもの様に、よ」

 それって、人気のない所で全裸で?

「いやらしい言い方。最近貴方の目が濁ってきている気がするのだけれど?」

 何を言っているんだい、仲秋の候に審査済みではないか!

「……そうね。失言だったわ、御免なさい」

 構わないさ、分かってくれれば良いんだ。で、今度は何処へ?

「田沢湖、になるの」
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