第69話

文字数 343文字

 街の高台にあった小学校の体育館に収用されてからの彼女のその後を僕は知らない。

 両親を亡くしたショックとこの災害をもたらしてしまった自責の念から、僕は精神状態が思わしくなく、半年程心療内科のある病院で過ごしていた。

 何とか正気を取り戻し、祖父母のいる東京に戻り普通の生活が再開された。

 翌年、弟は国立中学に合格、僕は中堅の私大に合格した。

 四年後に卒業し大手物流会社に就職すると同時に祖父母の家を出た。

 時々かなえがどうしているか気にはなったが、敢えて詮索することもなく日々は過ぎていく。

 やがて会社の同期である東北出身の女性とつき合い、結婚した。翌年長男が誕生し、二年後に長女が生まれた。

 徐々にかなえの事が遠い過去となっていき、その姿や顔を思い出すことも稀であった。

 あったのだが。
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