第56話

文字数 545文字

 かなえは実家で年末年始を過ごすといい故郷の山奥に帰って行った。

 僕達家族も祖父母のいる東京でのんべんだらりと過ごしている最中。
 祖母が弟にあんただけ東京の中学に通った方が良いのではと問題提起し、暫し家族会議の議論は白熱し、結論として来月から弟は祖父母の家から近所の公立小学校に通うこととなる。

 弟はまたもや中学受験戦争に参戦することとなり嘆き慄いているのだが、やはり都会が恋しくなっていたのであろう、案外素直に新しい進路に納得した様子であった。

 そんなに早急に決断しなくてもとも思ったが、東京の受験戦争の雰囲気に少しでも早く慣れた方が良いと言う父の意見がなるほどとも思えると同時に、かつて家族の事に全く興味を示さなかった父がこんな事を言い出したことに驚きを覚えた。

 去年の人事異動が父にとって、我が家にとって良い風を吹かせたのだと改めて実感させられると共に、父と会話をする機会が俄然増えていった。

 当然僕の進路の話にも発展し、四月からは予備校に通うべきだと言い始めたのには少なからず驚愕すると共に、今の父の意見には素直に従える自分に心が温まる思いであった。

 三ヶ日を終えて岩手に戻る飛行機の中で、我が家にとってそして自分にとって新たな道が開ける年となろうと予感せざるを得ない気分であった。
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