第2話

文字数 643文字

 そんな僕は、母や弟のように田舎に同化する訳でもなく、父の様に生気を失う訳でもなく、人生の急変を何となくに受け止め地元の公立高校に編入したものだった。

 東京では中堅に位置する都立高だったし、早慶上智なんて夢のまた夢、日東駒専にでも何とか引っ掛かれば、と思っていたのでまあ気楽なものだった。

 親からは東京の私立大学でも、と言われていたがそんな気も起こらず、卒業したら地元の地方公務員にでもなれたらラッキー、位の先行きの見通しなのであった。

 編入先の県立高校は普通科が三クラス、水産科が一クラスのひと学年で四クラス。当然僕は普通科に入り、新学期を迎えるのであった。

 二年A組は男女比はほぼ五分五分、トータルで30名の生徒がいた。生徒は殆どが市内の中学出身であり、近隣の市町村から電車で通う生徒は稀であった。

 東京から来た僕はクラスで特に目立つこともなく、又都会から来たとの軽い噂も蔓延する様子もなく、初日からやや物足りなさを感じていた。

 言葉は思ったよりは方言がキツくなく、これもテレビやインターネットの影響なのかとちょっとホッとした事をよく覚えている。

 それでも隣の席の女子から見た事ない顔だがどこの中学か尋ねられ、僕は東京から編入したのだと告白すると目を丸くし、東京かあ、いいなあ、と呟かれた。

 髪型はおかっぱで化粧っ気のないサッパリしたその古舘と言う女子に、東京なんてそんなにいいもんじゃないぜ、と言うと、東京がら来だ人はみんなそう言うんだよね、とかなりの訛りで言い返され、閉口した。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み