第67話

文字数 263文字

 街が、溺れている!

 港から街にかけて、大きな建物以外が全て水面下だった。道路だった筋に数えきれないほどの車が浮いており、港にあったであろう小さな漁船が民家の屋根に乗り上げている。

 水面には一面流されてきたゴミが浮かんでおり、その合間に人が浮かんでいるのが見えて僕は激しく嘔吐する。

 その光景はまさに地獄絵そのものであり、ショッピングセンター、学校の屋上、団地の屋上に退避した人々が蠢いている様子を涙まじりに俯瞰し戦慄した。

 携帯電話は全く通じず、凍える指が虚しく仲間や家族の呼び出しを続けたが、誰一人応答する者はいなかった。
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