第60話

文字数 401文字

 一緒に登校、下校後に宮古の予備校、帰宅という他の誰よりも密接な二人の日々が穏やかに過ぎていく。

 相変わらず週に一回程、膠二病の名残の謎の夢のお告げを聞かされるが、馬耳東風だ。

 一緒にいる時間が長くなればなる程、雄の本能が本性を隠しきれなくなる。帰宅後の彼女のアパート前での接吻は日に日に長く濃密になっていく。予備校の無い日のアパートでの自習時の密度も濃厚になってくる。

 それでも彼女は決して一線を越えようとはしない、いやさせてくれない。

「もうちょっと、もうちょっとだがら、お願い待ってで」

 そう言われ拒まれると、スッと萎えてしまう。

 そんな事が続くと、ひょっとしていい大人になるまでこの娘とは出来ないのでは、と不安になってしまう。

 東京の悪友に相談するも、そんなの押し倒せだの無理矢理やっちまえばこっちのもん、などと無責任な答えしか得られず。

 悶々とした僕の精神状態は更に深みに嵌って行きそうである。
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