第11話

文字数 922文字

 桜が満開になった四月の下旬。

 僕、かなえ、古舘、広田の奇体な四人組は不可思議な縁で結び付けられている。

 あれからかなえは毎日登校している。そしてあっという間に授業に追い付き、僕のノートを凌駕し今では逆に僕がかなえのノートの崇拝者となっている。

 小テストの成績もダントツで、五月末の中間考査ではトップ間違いなしと周囲は噂している。

 昼食は必ず四人で食す。

 古舘が主に海産物を、広田が農産物を豊富に用意してくれるのが堪らない。どれも朝採れの新鮮な素材ばかりで、東京では決して味わえない弁当を毎日満喫出来るのがただただ嬉しい。

 かなえは実に少食で、おにぎり一個でお腹いっぱいになるという。そのせいか、全体に実に細い。僕はどちらかと言うと少しふくよかな体型好きなのだが、それはどうでも良い。

 常に身体に合わないサイズの服を着ているので、イマイチ胸の大きさが分からない。でも、どうでも良い。体型だの胸の大きさだの、どうでも良い。

 それ程僕はかなえの美貌に夢中になりつつある。

 四人でいる時には、いや学校にいる時には、かなえは大人しい雰囲気を張り巡らせ、大声で笑ったりする事もない。

 四人で放課後に漁港にある喫茶店に行く時も、ひたすら聞き役に徹し自分が発言し意見を述べることはまず無い。

 そんな物静かなかなえなのだが。

 古舘と広田と別れ、二人きりになるや否や。

「そう言えば翔くん、昨日の夜、銀河系第17支部から連絡が入ったの。今後この星ではね、四年周期で乳首のお化粧が流行るそうよ」

 ち? く? び? ですか?

「ええ。私も昨夜色々と試してみたのだけれど。ああ、これからウチに来ない? それで色々見て評論して欲しいの。どうかしら?」

 僕は今日ほど生きていて良かったと思った日は無い。浮かれに浮かれ彼女のアパートで乳首ファッションショーを堪能させて貰ったのだが。

 結論としては、今の人類にはちょっと早過ぎるかな、と言うのが僕の正直な感想であった。

 因みにこの日から三周期過ぎたが。未だに巷の女性雑誌で乳首ファッション特集号というのを見た試しがない。

 当のかなえも以来その話を持ち出すことは無く、あれはどうなったと後日聞くと、実に嫌な顔で僕を睨んだものだった。
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