第42話

文字数 719文字

 父の実家は山を幾つも持っている地主なの、と言っても余りに山奥なので収入はマタギで稼いでいるの。隣の村まで歩いて数時間かかる様な場所柄、どうしても血が濃くなってしまう。だから母は九州の小さな神社から来てもらったそうよ。父は年がら年中山を渡り歩いていて殆ど家には帰らなかったわ。私と弟は祖父母と母に育てられたの。電気も通っていない程の集落だから、朝から昼は家の手伝い、夜はずっと星を見ながら育ったわ。だから流れ星なんて毎晩眺めたものだったかも。四歳の頃だったかな、ある晩星を眺めていたら声が聞こえてきたの。お前は宇宙に選ばれし存在。宇宙の神々に選ばれし巫女。その身を我らの為に尽くしたまえ、って。それ以来自分なりにそうあるべく過ごして来ているわ。それが人と違うって知ったのは学校に上がってから。私の通った学校は小中一貫校で全校生徒が12名。その誰もが私と違って宇宙の声を聞いたことが無かった、だから私は自分が特別の存在だと悟ったの。高校に上がるつもりは無かったのだけど、珍しく家に戻っていたマタギの父が高校だけは出なさいと言ったので、去年の春にあの町に一人で移ったわ。余りにそれまでと違う世界だった故、中々学校に通うことが出来なかった。友人は当然一人も出来ず、それが必要とも思わなかった。出席数が足りなかったけれど夏休みや冬休みの補習でカバー出来たの。徐々に町の生活に慣れてきて、この春に漸く一人で登校しようと思った矢先、貴方に出会った。出会った瞬間、悟ったの、ああ全知全能の宇宙神、アヤケオム・エロヒムが呟いた私の運命の男性が翔くんだったって。

「あれ、また宇宙神の名前が変わってるし?」

「ねえ、そろそろ部屋さ戻らねぁー? のぼせそうなの」
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