第26話

文字数 935文字

 中学三年生の時。同中のいっこ上の先輩だった高一の女子と付き合うことになったんだわ。付き合いだして一月後くらい? 家族が旅行に行くから泊まりに来ないかと言われてさ、彼女の家に行ったんだわ。コンビニで夕食と酒を買い込んで、二人でそれ食って飲んで。その後映画見たりしてそろそろ寝ようかって彼女の部屋に入って。これで俺も子供から大人じゃん、もう我慢できなくなって彼女にむしゃぶりついて。パジャマを剥ぎ取ってこっちも服脱いで。お願いだから電気消してって言うから仕方なく電気消して。そんで彼女をベッドに押し倒して。

「んでんで?」

「ほおおお。定石通りだな」

「……」

 三人がゴクリと唾を飲み込む音が男子テントに響く。心無しか湿った女子の匂いが充満している気がする。

 彼女の両手を押さえ付けて、彼女の胸にむしゃぶりついて。いやあ、あんなに興奮したの初めてでさ、危うくイキそうになったわ。何とか堪えて、今度は彼女に色々してもらって。その途中に我慢しきれなくなって… そ、大爆発。真っ暗闇でいきなり生温かい液体が彼女の顔にかかって、スゲー悲鳴上げられちゃって。そりゃそうだよな、もし古舘だったら相手ぶっ飛ばしてるだろ?

「噛みづいてぢぎり取るがも」

 僕と広田は爆笑する。かなえは顔を赤くして俯いている。

 そんでティッシュで慌てて拭き取って、死ぬほど謝ったら気にしなくて良い、それよりまだ平気だよね、って言うから全然イケる、それじゃあこれから……

「おおおお」

「ゴクリ」

「……」

 暗くてどうしたらいいか分からなく、彼女に導いて貰い正に結合しようとしたその時。玄関のドアが開く音と共に、「ただいまー、りおんちゃーんまだ起きてるー?」って…

「はああ?」

「マジか、おめ…」

「……」

 そ。旅行に行った筈の家族のご帰還さ。何でも飛行機がエンジンの故障かなんかで引き返しちゃって、次の便は満席で乗れなくなったから一旦家に戻ったんだと。電気つけて慌てて服着て、お邪魔してまーすってにっこり笑って何とか誤魔化せたから助かったのだが。それ以来なんか彼女とは気まずくなっちゃって、すぐに別れちゃったんだわ。

「それってづまり?」

「やれながったのがよ!」

「きゃははは」

 やけに嬉しそうに笑うかなえが愛おしく感じてしまう。
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