第52話
文字数 551文字
そんな或る日。
下校後、自宅前の道路の雪掻きを無我の心で行っていた夕刻。不意に背中を叩かれた。
機械的に振り返ると、かなえだった。
久しぶりの二人きりであるが、凍てついた僕の心は容易に溶け出しはしない。無表情のままどうかしたのかと問うと、古舘から最近僕の様子がおかしいと聞いたので、様子を見に来たと言う。
別におかしくなんてないさ、と言うと眉を顰め、最近どうして私と距離を置くのかと言われる。
距離を置いてなんかないさ、距離が開いているだけだと呟くとかなえは驚愕の表情で
「何それ、ねえ、翔ぐん、大丈夫?」
と心配し始める様子に苛立ち始める。
皆にチヤホヤされ俺なんか相手しなくなったのはお前だろう、と叫ぶ。
東京から来た、薄っぺらな俺なんて相手にする価値はないんだろう、どうなんだと叫ぶ。
今思うとあの頃の僕は本当に壊れかけていたのだろう。
呆然と僕を眺めていたかなえの大きな瞳から大粒の涙が零れ落ちる。
涙の雫がかなえの真っ白な頬を伝う。
その瞬間、目がハッと覚めた感覚となり、慌ててごめん、悪かったと謝る。
それでも涙は止まらず、鼻を啜る音が僕の心に爪痕を残していく。
かなえの肩を掴み、本当にごめん、俺最近どうかしてるんだ、と言い訳をする。すると不思議そうな涙顔のかなえが顔をちょっと横に倒す。
下校後、自宅前の道路の雪掻きを無我の心で行っていた夕刻。不意に背中を叩かれた。
機械的に振り返ると、かなえだった。
久しぶりの二人きりであるが、凍てついた僕の心は容易に溶け出しはしない。無表情のままどうかしたのかと問うと、古舘から最近僕の様子がおかしいと聞いたので、様子を見に来たと言う。
別におかしくなんてないさ、と言うと眉を顰め、最近どうして私と距離を置くのかと言われる。
距離を置いてなんかないさ、距離が開いているだけだと呟くとかなえは驚愕の表情で
「何それ、ねえ、翔ぐん、大丈夫?」
と心配し始める様子に苛立ち始める。
皆にチヤホヤされ俺なんか相手しなくなったのはお前だろう、と叫ぶ。
東京から来た、薄っぺらな俺なんて相手にする価値はないんだろう、どうなんだと叫ぶ。
今思うとあの頃の僕は本当に壊れかけていたのだろう。
呆然と僕を眺めていたかなえの大きな瞳から大粒の涙が零れ落ちる。
涙の雫がかなえの真っ白な頬を伝う。
その瞬間、目がハッと覚めた感覚となり、慌ててごめん、悪かったと謝る。
それでも涙は止まらず、鼻を啜る音が僕の心に爪痕を残していく。
かなえの肩を掴み、本当にごめん、俺最近どうかしてるんだ、と言い訳をする。すると不思議そうな涙顔のかなえが顔をちょっと横に倒す。