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文字数 471文字
<夕刻前 街道にて>
緑に覆われた丘陵地を黙々と歩く少女に、
向かい風が吹きつける。
髪を鬱陶しそうに払いながら、
カノンはただひたすら歩みを進めていた。
目指していた街の輪郭を確認し、
今夜は野宿を免れることができるとわかって心の内で安堵する。
足が早めようとすると、ズボンから僅かな振動を感じ取ったので、それを取り出した。
それは、紋様が掘られた奇妙な石だった。
なんだお前たちは?!
荒い声のした方角を見やると、
腰を曲げたローブの人物
(おそらく老人だろう)を
守るように毅然と立った男を、
複数の人影が取り囲んでいた。
くすくすと笑うように、
一人でに振動していた石が
もとの動かぬ石になると、
カノンはそれをポケットにしまいこみ、
現場へと駆け出した。