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文字数 471文字

<夕刻前 街道にて>
…………。

緑に覆われた丘陵地を黙々と歩く少女に、

向かい風が吹きつける。

髪を鬱陶しそうに払いながら、

カノンはただひたすら歩みを進めていた。

……!
目指していた街の輪郭を確認し、
今夜は野宿を免れることができるとわかって心の内で安堵する。
足が早めようとすると、ズボンから僅かな振動を感じ取ったので、それを取り出した。
それは、紋様が掘られた奇妙な石だった。
はいはい、何か用?フィリカ。
御機嫌よう、カノン。
日が傾き始めましたが、
ロージアまであとどのくらいかかりそうですか?
大丈夫よ。
もう街も見えてきているから――――
なんだお前たちは?!
ん?

荒い声のした方角を見やると、

腰を曲げたローブの人物

(おそらく老人だろう)を

守るように毅然と立った男を、

複数の人影が取り囲んでいた。

(追いはぎ……か)
どうかしましたか、カノン
…ごめん、フィリカ。

またあとで連絡する。

人助け、ですか?
さぁね。
ふふ、そうですか。
それではまた。

くすくすと笑うように、

一人でに振動していた石が

もとの動かぬ石になると、

カノンはそれをポケットにしまいこみ、

現場へと駆け出した。

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登場人物紹介

<カノン>


合理主義だがお人好しという なんとも損な性格をした剣士。
世の中諦めなければ 大体のことはなんとかなると思っている。

<イーリアス>


自身にかかっている呪いを解除する方法を求めて 放浪する暗殺者。
同時に、冷静沈着な魔術師で、周りに冷たい印象を与える。

<ニルス>


気が小さいが確かな腕を持つ魔巧師。
片付けが苦手だが、物の所在は全て把握している。

<セシル>


手先が器用なお調子者のトレジャーハンター。
アーティファクトや魔巧具の真贋を見抜く観察眼を持つ。

<フィラマリカ=D=リーン>

精霊のスクオーラのボス。
たおやかだが、何かと暴走しがち。

<パシュア>


腹の読めない隻眼の青年。
フィリカの世話役。

<ディーン>


人当たりがよく誠実な好青年。でもなぜか地味で目立たない。
女性を見たら話しかけずにはいられない性質の自称紳士。

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