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文字数 820文字
さざめく木々が
空気を揺らしている中、
3人の目の前に、目的地の
屋敷の扉が立ちはだっていた。
そのスケールを誇示するように、
建物はセシルの感嘆の声を
跳ね返した。
(ガチャッ)
覗き込むように
小さく開けていた戸を開け放ち、
少女はカノンへ飛びついた。
視線を感じたのか、
カノンから身を離すと、
少女はあっけに取られた様子の
イーリアスとセシルを見やった。
広間へ案内するように
フィリカは先を歩き始めたが、
思い出したように"あっ"と
小さく声を漏らして一行へ振り向く。
陽光に髪を輝かせながら、
彼女は柔らかく笑みを浮かべた。