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文字数 879文字
フランツを庇おうと間に入ったカノンの、
さらに前へと走り込んできた少年は、
致命傷を負い、力なく地へ崩れ落ちる。
庇われた青年は血相を変えて、少年を抱えこんだ。
エンを追って駆けつけた
セシルとディーン二人の視線を受け、
イーリアスは苦々しげに
表情を歪めて外へ出ていった。
すぐさまイーリアスの後を追う
カノンへ声をかけるも、
目の当たりにした光景と状況を
飲み込むことが出来ないままだったセシルは、
その背を見送るしかなかった。
伝えるべきことを伝えた少年の殻は、
がっくりと弛緩し、身体の表面にヒビが入る。
間もなくそれは粉々に砕け、
破片は虚空へ溶けていった。
このような不幸は、
彼らにとって別段珍しいことではなく、
日常の傍らに存在するものだった。
たまたまそこに居合わせただけとはいえ、
二人は目を閉じ、その死を悼んだ。
少年を抱えたままの態勢で居た青年は、
外を見遣った後、立ち上がって
セシルとディーンへ向き直った。